現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 惜別N-BOXスラッシュ絶版 見どころ満点も短命に終わった日本の異端児グルマ

ここから本文です

惜別N-BOXスラッシュ絶版 見どころ満点も短命に終わった日本の異端児グルマ

掲載 更新 15
惜別N-BOXスラッシュ絶版 見どころ満点も短命に終わった日本の異端児グルマ

 日本車にはベース車から派生したモデルが多数あるが、成功し定着したものは少なく、詳しくは後述する最近生産を終了したホンダN-BOXスラッシュのように単発で終わったものがほとんどである。

 メーカーも売れないと思ってブランニューカーを発売することはない。しかし単発または短命で終わったモデルは、メーカーの思惑とユーザーのニーズが乖離しているケースが多いのも事実だ。

日産で一番売れるクルマ 新型ルークスは王者N-BOXに勝てるか!? 進化度を辛口試乗

 当記事ではN-BOXスラッシュの絶版を機に、「見所があったのに短命に終わった派生車たち」を振り返っていく。

文:永田恵一/写真:HONDA、TOYOTA、MAZDA、SUZUKI、NISSAN、RENAULT

【画像ギャラリー】無念の生産中止!! ホンダN-BOXスラッシュは高級感と遊び心を備えた個性派軽自動車

ホンダN-BOXスラッシュ

販売期間:2014~2020年

N-BOXスラッシュは初代N-BOXのチョップドルーフ版とも言えるモデルで、N-BOXよりも110mm全高を下げている。なだらかなルーフラインが美しい

 2014年12月に登場したN-BOXスラッシュは、この時点ですでに国民車的存在に成長していた軽スーパーハイトワゴンのN-BOXをスタイリッシュかつ高級にしたモデルだった。

 具体的には前者はN-BOXに対しルーフを110mm低くし(FF比較)、全高を軽ハイトワゴン級に抑えたのに加えシルエットをクーペルック化。

 後者は米国カリフォルニアのロードサイドにあるダイナーレストランをイメージしたものなど5色を設定したインテリアカラー、静粛性の向上、電動パーキングブレーキの採用やメーカーオプションの「サウンドマッピングシステム」と呼ばれるオーディオの設定などが挙げられる。

N-BOXスラッシュはデビュー時に8種類のインテリアを設定。最もポップで個性的だったのがダイナースタイルで、純正でここまで突き抜けているのも珍しい

 乗ってみると絶品のオーディオをはじめ全体的に期待以上にコンセプトが具現化された軽自動車に仕上がっており、「これならダウンサイザーも満足できる」と筆者は感動し、個人的に欲しい軽自動車の1台だった時期もあったくらいだ。

 だがホンダの軽自動車において王者N-BOXと標準的なハイトワゴンのN-WGNに挟まれ埋もれてしまった感は否めず、次期モデルも期待されながら今年2月に惜しまれながら生産終了となった。

ウェストラインよりも上を切り詰めているので、ウェストラインが異常なまでに高く塊感のあるデザインに仕上げている

 N-BOXスラッシュの生産終了にはホンダの軽自動車の中で個性派向けのN-ONEとN-BOXスラッシュの両方は継続できず、どちらを絶版とせざるを得ないという事情もあったのかもしれない。

 もしそうであれば創業期のホンダを支えたN360をオマージュしたN-ONEが優先されたというのも納得できる。

 といったことを考えると東京オートサロン2020にスポーツモデルのMTのカフェレーサーコンセプトが出展され、秋に市販車が登場する次期N-ONEにはN-BOXスラッシュの意思も受け継いだ高級路線となる仕様も設定してほしいところだ。

東京オートサロン2020に出展された新型N-ONEをベースにしたカフェレーサーコンセプト。N-BOX絶版後は存分に個性を発揮してもらいたい

トヨタbBオープンデッキ

販売期間:2001~2003年

 トヨタというメーカーは9代目コロナのホイールベースを延長した限定車となるスーパールーミーや登場から3年目となった現在も堅調に売れているピックアップトラックのハイラックスといった楽しげなクルマを時折出すが、初代bBのオープンデッキもそのひとつである。

コンパクトカーのbBにデッキを設けているにもかかわらずリアシートがあるためユーティティティ面での不安はない。観音開きドアにより乗降性にも優れている

 bBオープンデッキは初代ヴィッツファミリーにおいてカスタマイズカーのベースも想定したハイトワゴンの初代bBに、リアシートのある5ナンバー登録のままピックアップトラックと同様の荷台を設け、ドアはマツダRX-8のような観音ドアとしたカタログモデルだ。

 イエローのボディカラー&シートもあったほか、荷台と車内をつないで大きな荷物を運べる機能を持つなど雰囲気は実に明るく、価格も169万円と決して高くなかった。

 しかしピックアップトラックでも感じることがある「荷台に通常の荷物を置くのに抵抗がある」というのも否めず、4、5人乗車での移動の際の使いにくいのもあり販売は低迷。

 登場から2年足らずで絶版となってしまった。

生産中止の発表の際に発売を開始したペールブルーマイカメタリックのボディカラーの特別仕様車『オーシャンズバージョン』はかなりレア

マツダロードスタークーペ

販売期間:2003~2004年

 マツダロードスターはライトウエイトオープン2シーターとして世界中で堅調な需要のあるスポーツカーだが、2代目モデルには限定車という形ながら2シーターのままクーペとしたロードスタークーペがあった。

 ロードスタークーペはマツダで特装車などを手掛けるマツダE&Tが開発、生産を行ったモデルだ。

ロードスタークーペは2代目ロードスターをクーペにしただけではなく、4タイプのフロントマスクが用意されていた。写真は1.8LのATに設定されたタイプE

マツダE&Tは特装やショーモデルを手掛けていることもあり仕上げがすばらしい。オーソドックスなファストバッククーペスタイルで登場

 フィックスドルーフとしたしたことで車重は約10kg重くなった代わりにボディ剛性は2代目ロードスターに対し2倍以上に強化され、硬派なユーザーには歓迎できるクルマだった。

 ロードスタークーペは2代目モデルだけで歴史を閉じ、3代目モデル以降ルーフがハードトップとなるロードスターは3代目モデルのRHTと現行4代目モデルのRFに引き継がれた。

ロードスターは3代目でRHTを登場させ、現行の4代目ではルーフの開閉にこだわりを持ったRFに進化。完全なるクーペはラインナップされていない

 これはまっとうな流れではあるが、ロードスターユーザーの中にはオープンカーである点はそれほど重視せず、ハードトップを着けたままクーペとして使う硬派な層も意外にいるのを考えると、可能なことならロードスタークーペは今でもあってもいいモデルだ。

トヨタサイノスコンバーチブル

販売期間:1996~1999年

4シーターだったため使い勝手は悪くなかった。200万円以下の価格も魅力的だったが、日本では雨が多いなど気候面でもオープンカーが根付かない

 1991年から1999年まで販売されたサイノスは当時のターセル、コルサ、カローラIIをベースに、主に北米市場向けのセクレタリーカー(秘書の女性などが乗るクルマ)となるお手軽な2ドアクーペである。

 初代モデルからキープコンセプトで1995年にフルモデルチェンジされた2代目サイノスには1996年に4シーターオープンのコンバーチブルが追加された。

兄貴分のセリカコンバーチブルは1987年に4代目セリカに設定され、写真の6代目セリカまで3世代のモデルが市販された。ただ販売台数はそれほど多くない

 サイノスコンバーチブルは兄貴分のセリカのコンバーチブルと同様に日本で生産した車体を米国ASC社に送り、コンバーチブルに架装して日本に戻すという生産方法だった。

 そのおかげでオープン機能のクオリティは上々でまずまず使えるリアシートを持ち、価格も160万円から210万円と内容を考えれば高くなかった。

 サイノスコンバーチブルは残念ながら一代限りとなったが、1990年代はいずれも続かなかったものの2代目マーチ、2代目カルタス、ダイハツリーザなどに手軽なオープンカーがあり、自動車業界を華やかなものにするのにひと役買っていたのが懐かしい。

ダイハツの軽自動車リーザにはオープンのスパイダーがラインナップされていた(1991~1993年)。ショーモデルは4シーターだったが市販時は2シーターとなった

スズキアルトハッスル&日産AD MAX

販売期間:1991~1993年(アルトハッスル)、1992~1996年(AD MAX)

日本車にも影響を与えたルノーエクスプレス。より多くの荷物や背の高いものを積みたいという願望がこのような特異な形を生み出した

 平成初期までフランス車の商用車にはルノーエクスプレス(5ベース)に代表される、ルーフ中央から後半に掛けての高さを増し、積載性と居住性を向上されたフルゴネットというジャンルがあり、それに倣ったのが3代目アルトのハッスルと2代目ADバンのAD MAXである。

 それぞれコンセプトはわかりやすかったもののそれほど売れず、販売期間はともかくとして一代限りで姿を消した。

アルトハッスルはワゴン、バンの両方をラインナップ。カタログモデルだったが、特装車扱いだった。乗車定員は2名

 しかしアルトハッスルやAD MAXの存在がワゴンRやキューブのようなハイトワゴンの登場につながったところも少なからずあるようで、その意味では存在意義は決して小さくない。

 それだけに今になると惜しかったのは、現在のルノーカングーやプジョーリフター&シトロエンベルランゴのような、「休みにはアウトドアにでも遊びに行きたくなるような」明るく楽しげな雰囲気が欲しかったことだろうか。

カーゴ部分のサイドウィンドウのデザインがとても凝っているAD MAX。ノーマルのADに対してホイールベースは70mm延長されていた。バックドアは観音開き

【画像ギャラリー】無念の生産中止!! ホンダN-BOXスラッシュは高級感と遊び心を備えた個性派軽自動車

こんな記事も読まれています

フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
AUTOSPORT web
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
AUTOSPORT web
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
Auto Messe Web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
AUTOCAR JAPAN
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
レスポンス
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

15件
  • スラッシュはいい車ですよ。
    でも高い。
  • 去年ダイナーSTYLE買いました。こんなにイカレタ車は中々でないと思います。シートのデザインは左右非対称 スピーカー9個 ウーハー付き! 後部座席のドアノブ デザインもさることながら~装備も無茶!!でもそこが気に入りました。個人的にはとても良い車だと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.0172.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

32.0169.8万円

中古車を検索
N-BOXスラッシュの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.0172.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

32.0169.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村