ポルシェのコンパクトSUV「マカン」の高性能ヴァージョン「ターボ」に小川フミオが試乗した。
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数多くのモデルが登場しているSUVのマーケットにあって、存在感がかがやくのがポルシェ「マカン」だ。ドライビングの楽しさではピカイチ。マカンのようなクルマはいろいろあるものの、マカンに乗ったらマカンしか考えられなくなるほどだ。
車型としてはトレンドのSUVに興味があっても、運転する楽しみは重視したい。クルマ好きにお勧めしたいのが、マカンシリーズのなかでも、スポーティさできわだつ「マカンターボ」である。
Hiromitsu Yasuiマカンはバリエーションが豊富なのも特徴だ。ベースモデルの「マカン」にはじまり、「マカンS」「マカンGTS」そして「マカンターボ」が選べる。これがポルシェの楽しさだ。
マカンターボは、324kW(440ps)の最高出力を誇り、最大トルクは550Nm。静止から時速100キロメートルまでにかかる時間はたったの4.5秒。ひとつ下のグレードになるGTSが同じ排気量のエンジンながら、280kW(380ps)で520Nm。0-100km/h加速は4.9秒。数値からしてもだいぶ差がある。
2019年に日本市場に導入されたモデルは、あたらしく開発された2.9リッターV型6気筒ユニットを搭載。従来は3.6リッター。排気量はかなり小さくなったものの、出力は30kW(40ps)もあがっている(トルクは不変)。
Hiromitsu Yasuiターボへのこだわり
とにかく楽しい。試乗した印象を語ろうとすると、この言葉しかみつからない。剛性感あふれるボディに、上記のとおりパワフルなエンジン。そしてそのパワーを支えるサスペンションとステアリングによる、応答性にすぐれたスポーツカーのような身のこなし……。
ベースのシャシーは前のアウディ「Q5」。しかし、最高のスポーツドライビングを提供しようという目的が当初から明確で、その迷いのなさゆえだろう、古さなどみじんも感じさせない。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui低回転域から力強く、かつ3000rpmから上での爆発するようなパワー。ドライバーとの一体感が強く、SUVなのに、スポーツドライビングが堪能できるのだ。
昨今はターボチャージャーを装着していないのは12気筒と電気自動車だけ、といってもいいぐらいターボ化が常識になったものの、ポルシェは相変わらず車名に「ターボ」と入れることにこだわる。BEV(バッテリー駆動のEV)の「タイカン」にもターボというグレードがあるほどだ。
Hiromitsu Yasuiターボへのこだわりは、つまるところ、ひととクルマが一体化したドライビングの楽しみを出来るかぎりのところまで追求するという、ポルシェのクルマづくりの姿勢にほかならない、と、私は思う。
マカンターボでは、エンジンのVバンクのあいだに設置して効率を高めるなど技術のアップデート化に余念がない。それは技術のための技術というより、上記の目的をとげるための手段なのだろう。そう思わせてくれるクルマだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui重めに設定されたグリップ径の太いステアリングホイールを握っただけで、ドライビングへの期待がふくらむのも美点だ。回転計が眼の前にくる計器のレイアウトといい、SUVのかたちをしていても、ポルシェはポルシェなのだ。
マカンは「ポルシェサーフェスコーテッドブレーキ」をそなえている。鋳鉄製のブレーキディスクにセラミック(タングステンカーバイド)のコーティングが施されている。よさそうであるものの、試乗車は、ぜいたくにも、オプションのPCCB(ポルシェセラミックカーボンブレーキ)に変更されていた。
セラミックブレーキの常であるので、冷えているときは、制動力の立ち上がりが妙に早くて、効き方に違和感がある。しかしいちど暖まればすばらしいフィールだ。短いトラベル(ストローク)で、微妙な足の力のいれぐあいにリニアに反応する。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui価格は1252万円
全長4684mmのボディの着座位置は高め。そこに身を落ち着け、太いグリップのステアリングホイールを握る。自分の横に眼をやると、前後長のあるセンターコンソールに、スイッチがずらりと並んでいる。
新型マカンでは、ダッシュボード中央部に「ポルシェコミュニケーションマネージメント」なる10.9インチの液晶画面がすえつけられている。ボイスコントロールによるオンラインナビゲーションなど、外部と通信できる機能も備え、コネクティビティの機能はしっかりアップデートされているのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiスイッチがずらりと並んだセンターコンソールのデザインは不変(モデルチェンジまで変えることはできないだろう)。機能が追加されており、オプションで「イオナイザー」のボタンをくわえることもできる。ポルシェのプレスリリースには「室内の空気質を改善する」としか記述がないものの、要するにマイナスイオンを発生させることで室内の空気の匂いや細菌を除去するシステムだろう。このほかにもマカンは、豊富な快適装備を装着出来る。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui2807mmと余裕あるホイールベースを活かして、リアシートも広い。外観からは、あえて短くおさえた前後長のルーフを持つせいで、クーペライクな雰囲気である。じっさいはパッケージングにすぐれ、室内は作りといいスペースといい居心地がよい。そこもマカンの魅力だ。
価格は1252万円。マカンの標準モデルは737万円、マカンSは901万円、マカンGTSは1062万円。たとえば260kW(354ps)のマカンSも軽快な印象で楽しい。それでも、”ポルシェといえばターボ”と信じているひとには、ドライビングマシンとしてマカンターボを勧めたい。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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