■オーストリア「マグナ・シュタイヤー社」で作られるスープラとZ4
2019年5月、生産中止から17年が経ち、トヨタを代表するスポーツモデル「スープラ」がリバイバルデビューした。
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スープラは1980年代後半、各社のスポーツカー開発が熾烈を極めた時期に、日産「スカイラインGT-R」やホンダ「NSX」、三菱「GTO」などと肩を並べ、自主規制枠いっぱいの280psのパワーを誇るFRモデルとして4代目が誕生。
3リッターストレート6をフロントに積み、リアタイヤを駆動するFRレイアウトは、ライバル達が繊細なコントロールや電子デバイスの助けを受けるなか、ピュアなハンドリング特性を持ち味としていて、いまだに根強いファンが多い。
また、素直な操縦性はドライビングバイブルとしても支持され、生産が中止されてからも長くトヨタの運転訓練車両として使われていることも、今ではよく知られている。
対するBMW「Z4」は、初代が2003年に登場。2シーターモデル「Z3」の後継モデルとして投入され、日本でも同年1月から販売を開始された。
スープラ同様に3リッターの直列6気筒ユニットを搭載するFRレイアウトを特徴とし、2009年に2代目が、2019年にはスープラのデビューを前に3代目がデビュー。搭載される340psの3リッターストレート6のターボユニットとFRレイアウトの組み合わせを継承し、走りをさらに磨き込んできた。
日本でのデビューは、BMW・Z4は2019年3月、トヨタ・スープラはその1カ月後の4月。つまり、デビューしてちょうど1年が経過したというわけだ。
このように、時を前後してデビューしたこのスープラとZ4は、オーストリア南東に位置するマグナ・シュタイヤー社のグラーツ工場で生産される。ブランドは違うが、いってみれば2台は兄弟車で、Z4がオープン2シーター、スープラがクローズド2シーターボディのクーペデザインを特徴としている。
搭載されるパワーユニットはZ4、スープラともにBMW製で、トランスミッションも8速ATと共通している。
■おもてなし感を忘れないスープラ、ダイレクト感のあるZ4
この2台のトップモデルであるZ4の「M40i」とスープラ「RZ」を乗り比べてみると、BMWとトヨタの思想の違いがよくわかる。
Z4はひとことで言えば走りに対しての妥協がなく、スープラは可能な限りトヨタ流のおもてなしを忘れることのない作り込みがおこなわれている。
たとえばスープラRZを街中で試乗してみると、スポーツカーらしく、大きな入力に関しては引き締まった硬めの乗り心地を示すものの、小さな凹凸に関してはサスペンションをしっかりと動かし、カドを感じさせない。
一方のZ4 M40iは、小さな入力に関しても腰のある乗り味を見せて、常にステアリングやシートを通じて路面の変化を伝えてくる。
大きな入力に関しては、オープンボディを感じさせないほどサスペンションはグッと力強さを増し、4輪の接地感を最大限発揮させてくる。このときの乗り味は重厚さと粘り強さを感じさせ、コーナーを小さなロールとともにクリア。手応えがジワジワ重くなってきたり、お尻の下から蹴り上げられるような反応を示す。
オープンボディでルーフがないせいか、ボディの揺れが多少感じられる半面、ドライバーの状態を動かすような力は働かず、重心が低く感じられる。ボディのムダな動きがないぶん操作に対する遅れがなく、ステアリングを切れば力強くフロントがインを指すし、アクセルペダルを踏めばガツンと、リアが反応して加速態勢に移る。
路面からのインフォメーションは、良くいえば正確、悪くいえば荒々しいが、走りを楽しむには悪くない。
スープラRZは、リアからの蹴り上げに対してしっかりとストローク感を出し、前後方向のサスペンションの粘り感がある。
Z4ではフロアと路面が近い関係にあったのに対して、スープラはロールや前後方向の動きが感じられ、その移動分だけ時間や入力にゆとりがある。
Z4が打てば響くダイレクト感なら、スープラはジワッと動く奥行き感を持つ。それが入力を緩和させて乗り心地の良さにも生かされているし、ムダな振動を抑えて質感の高さを演出してくれている。
ボディに一体感があることで、さらに攻め込んでいったときの動きはスープラの方が穏やかな挙動を示して扱いやすい。スポーツモードを選ぶと、この穏やかさがギュッと締め上げられ、ボディの動きはフラット感を増してくる。操作に対する反応は早く、ボディの動きが抑制されることでZ4と同様のダイレクトさへと変化する。
Z4は限界付近でも、ねじ伏せるようにすれば路面との一体感はさらに増して旋回速度を上げていき、かなり攻め甲斐を感じる。速度や操作量に関わることなく、常に路面をキャッチしてドライバーへインフォメーションを伝えると同時に、旋回Gを高めていく走りには妥協がない。
※ ※ ※
同じ場所で生産されるスープラとZ4は、乗り比べてみると、柔と剛といった好対照だ。ただし攻め込んでいくと、目指している頂点は同じで、FRならではのハンドリングの良さと限界領域の扱いやすさにたどりつく。やはり基本は共通なのだ。
どちらも本場仕込みの高い性能を持ちながら、それぞれ違うアプローチから頂点を目指し、裾野が広くてエントリーしやすいのがスープラで、基本性能の高さを常に味わせてくれるのがZ4だ。
車両価格は、2ドアクーペのスープラRZが731万3000円、2ドアオープンモデルのZ4 M40iが855万円となる。
個人的にはZ4を選びたいが、街中での使い勝手を考えるとスープラの魅力が増してくる。まさに満を持してデビューしただけのことはあるといっていいだろう。
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みんなのコメント
見えないところのコストダウンも受け継いでそう。
そもそも趣味車はカッコ良くないと話にならない。