■綺羅びやかな「宮型霊柩車」が減少傾向!? その理由とは
霊柩車のイメージといえば、豪華な和装装飾が施された金ピカなクルマですが、近年は和装装飾をやめた黒一色のモデルが主流になりつつあるといいます。なぜ、豪華な霊柩車が減少しているのでしょうか。
霊柩車はその用途に合わせ、大きく2種類に分けられます。ひとつ目は、棺を葬儀場などから火葬場に運ぶ「セレモニー用」です。ふたつ目は、病院から自宅や葬儀場に棺を搬送する「搬送用(寝台車)」になり、宮型霊柩車や洋型霊柩車は、「セレモニー用」となります。
セレモニー用霊柩車のうち、宮型霊柩車は、豪華な和装装飾を施した霊柩車で、棺を乗せる車体の後部に、神社や寺院といった建物に見立てた装飾が施された霊柩車です。
洋型霊柩車は宮型霊柩車と異なり、派手な装飾が取り払われたシンプルな寝台車型の霊柩車です。
セレモニー用に分類される宮型と洋型のベース車両は、トヨタ「クラウン」やキャデラック、リンカーンなどが用いられ金や銅板、白木、金箔、漆、といった手作業が加えられるため、その価格は、1台約1500万円から2000万円にもおよびます。
なお、搬送用はバン型の霊柩車が用いられ、病院から自宅や葬儀場への移動に使われます。外観は街中でよく見かかける一般的なステーションワゴンそのもので、遺族の自宅や患者のいる病院など、デリケートな場所へ出向く機会が多いことから、極力目立たない造りを意識しているようです。
豪華な和装装飾を施した宮型霊柩車は、かつてセレモニー用救急車全体の70%以上を占めており、全国でも1000台以上が活躍していました。しかし、現在ではその台数が減少[磯田2]しており、霊柩車専門業者のデータによると、現在の宮型霊柩車は806台、それに対して和装装飾を施していない洋型霊柩車は1514台となっているようです。
そんななか、なぜ宮型の霊柩車は減少傾向にあるのでしょうか。霊柩車製造業者の担当者は、次のように話します。
ーー宮型霊柩車の数は、どうして減っているのでしょうか。
宮型霊柩車の製造については、現在ほとんど取り扱っていない状況です。洋型9割、宮型1割といえるほど、需要も減っています。そのため、5年に1度程度しか注文も入りません。
その背景には、宮型霊柩車のイメージが大きく関係しているでしょう。以前、葬祭場のホールを立てるときに、近隣住民が宮型霊柩車の出入りを嫌がることもありました。また、亡くなられた人を運ぶイメージも強いため、なには縁起が悪いという意見も多く見受けられます。
ーーいつの時代まで、宮型霊柩車は稼働していたのでしょうか。
15年から20年ほど前は、霊柩車といえば宮型霊柩車という時代でした。昭和から平成初期にかけては、注文数も非常に多かったです。
ただ、納車できるのは1年に3台から4台が限界でした。宮型の製造は、宮大工を使うほか、クルマの切り貼りや彫刻など、さまざまな工程は必要となるため、完成までに6か月から8か月を必要とします。手間暇がかかる分、量産はできません。
ーーこのままでは、宮型霊柩車がこの世から消えてなくなってしまうことも考らえられますか。
いまの状況では、完全に衰退してしまう可能性も0ではありません。需要のあった当時から、宮型霊柩車を製造している業者は少なかったものの、現在はさらにその数も減っています。
全国でも10社あるか、ないかのレベルです。実際に、20年ほど前には、宮型霊柩車のシェア60%から80%を誇る大手製造業者が倒産しました。これも、近年の需要低迷による影響でしょう。
※ ※ ※
現在、宮型霊柩車の稼働率はどのくらいなのでしょうか。都内にある葬儀社の担当者は、次のように話します。
「現在、宮型霊柩車の稼働率は、1年に数件程度です。7年から8年前は、もう少し頻繁に利用されることもありましたが、年々減っている状況です。
葬儀の内容についてこだわりを持っておらず、値段を重視される人であれば、洋型を選ぶケースが圧倒的に多いです。
ただ、宮型霊柩車をあえて選ぶ人もいます。宮型霊柩車は、年配者にとって名誉なことでした。そのため、ちゃんと送り出したいという気持ちから、親御さんの風習を受け継いで、若年層のお客さまから指定されることもあります」
■時代とともに霊柩車のトレンドも変化する? 現代におけるその姿とは?
宮型霊柩車が減少する一方、現在は、どんな霊柩車が好まれているのでしょうか。前出の霊柩車製造業者の担当者は、次のように話します。
「これまで、洋型霊柩車のベース車は、並行輸入車が基本でしたが、メンテナンスの問題があるため、その需要もめっきり減りました。
現在は、国産車が7割から8割を占めています。実際に、クラウンや日産『フーガ』といったモデルを改造することが多いです。
こうした車種の真ん中を切り、リムジン型にして提供しています。また、なるべく価格を抑えるために、日産『ティアナ』などを選ぶお客さまもいます」
また、搬送用に使われるバン型霊柩車も、近年じわじわと需要を集めています。バン型霊柩車は、宮型霊柩車や洋型霊柩車に比べて、その費用も5分の1程度で済ませられることから多くのユーザーに選ばれているようです。
さらに、リムジン型のように切断しない「ノンストレッチ型」も増えています。これは、あえて車体に手を加えないことにより、その安全性を高くしています。
近年のクルマは、その技術の進化により、霊柩車としての調整やバランスもシビアになっているため、従来のような「切り貼り」をおこなうとリスクが高くなります。そのため、時代に合わせたクルマの変化に対応するべく、霊柩車の在り方も徐々に変化しているのです。
霊柩車が変化する背景には、日本の超高齢化社会も大きく関係しています。総務省のデータによると、65歳以上の高齢者が2019年時点で過去最高28.4%の割合を占めているほか、厚生労働省では130万6000人に及ぶ死亡者数を発表しました。
その結果、これまでとは違う自分らしい葬儀を求める人が増えたことにより、現在に見合った新しいサービスの展開に合わせて、霊柩車にも変化が見て取れます。
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みんなのコメント
死が縁起が悪い?
誰でも必ず死ぬのに。
そういう人は、「姥捨て」に従って、ある年齢になると、山奥デンデラ野にでも引っ越して身を引くきがあるのかな。