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【日本GP必勝祈願】母国勝利なるかホンダF1!! かつての栄光を支えたエンジニアたちは語る

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【日本GP必勝祈願】母国勝利なるかホンダF1!! かつての栄光を支えたエンジニアたちは語る

 すでに2019年に2勝を飾っているホンダのF1パワーユニット。ここまでくると週末に迫った鈴鹿サーキットで開催される日本グランプリにも期待してしまうところ。

 しかーし!! ホンダのF1は実は1991年のゲルハルト・ベルガー以来勝っていないのです。マックス・フェルスタッペンの実力、そしてホンダの鈴鹿スペシャルの実力に期待しちゃいます。

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 今回はホンダがF1でセナらと栄光を極めた第二期にエンジニアとして活躍した市田勝巳さん、そして無限でエンジン設計に携わった松本正美氏にインタビューしました。

ベストカー2019年10月26日号
TEXT:編集部/PHOTO:編集部、モビリティランド

■「鈴鹿スペシャルは200項目のチェックリストを3回見直すこと」

 最初は第二期ホンダF1をエンジニアとして支えた市田勝巳氏に話を聞きました。「鈴鹿スペシャル」についても聞いてきましたよ!!

【エンジン設計へ込めた思いはありますか?】

 第二期(1986年~1992年)のホンダF1に携わったのですが、鈴鹿への思いはやはり特別なものがありますよ。

 日本のメーカーとして鈴鹿で勝たないと仕方ないですから。とにかく勝ちたい、世界一のエンジンをというのが大きなモチベーションでした。【


 エンジン設計として重要視していたのはセッティングになりますよね。鈴鹿はテクニカルなサーキット。だからウィングを寝かしてとにかくストレートスピードをというドライバーは少ないんです。

セナをはじめ多くのドライバーにも支えられた第二期のホンダF1。その陰には類まれなるドライバーの要求に応えるエンジニアたちの活躍も大きくあった

 鈴鹿でセナはトップスピードよりも低速トルクを充実させて路面にはりつくようなエンジンを要求してきました。

 その点では鈴鹿は毎回「どうしようかな……」と悩むサーキットではありましたね。難しさもその分のやりがいも強くありました。

 レース以外ではマクラーレンはイギリスのチームだから文化の違いもいろいろありました。

 ヨーロッパのグランプリでは彼らはレースが終わったらすぐ帰るし、食事も冷えたスープにパンだけみたいだったんですよ。

 でも彼らは鈴鹿に来るのを楽しみにしていて。鈴鹿サーキットホテルにあったログキャビンとかでお酒を飲んだり、夕食に松坂牛のステーキをせがまれたりね(笑)。そういうところも鈴鹿の魅力だったりしますよね。

【ファンは第二期ホンダF1といえば「鈴鹿スペシャル」を思い浮かべますが】

 鈴鹿スペシャルは皆さん興味を持ってくださる部分ですね。なにか特別に仕立て上げる、というよりは徹底したチェックにあると思います。

 やはりミスによる失敗は絶対に避けたいです。なので一点一点のパーツの品質をファイリングして管理していたんです。特に鈴鹿は厳密でしたね。

 項目については200項目以上、そしてそれを3回も見直していくのです。絶対に見落としがないように徹底的にやりました。

鈴鹿の表彰台上位を独占したホンダF1。実は1991年の勝利以来、ホンダは勝利から遠ざかっている

 それでも1992年の鈴鹿ではセナがエンジントラブルでリタイアしてしまいました。ベルガーは2位でしたけどね(次戦オーストラリアではベルガーが優勝)。レースは何が起こるかわからないのですが、これでもか!! というほどチェックはしていました。

 やはりシーズンの行方が決まることも多い鈴鹿で負けるわけにはいかないですからね。

 第二期の2勝からホンダは勝てていないのですが、フェルスタッペンは才能もあるドライバーだからね。鈴鹿での勝利も非常に重要に思っているのはファンもだし、ホンダもそう。もうそろそろやってくれると思っています。

今回取材に応じてくれた市田氏。2019年のホンダパワーユニットを開発する後輩たちの活躍も温かく応援していた

■「たった1psでも絞り出したくなる、それが鈴鹿という特別な舞台」

 現在ホンダカーズ野崎にて店長を務める松本正美さん。「F1おじさん」とも呼ばれるほど多くのお客さんに愛される店長だが、実はかつて無限でF1エンジンを設計していた人( 濃い解説が人気のYouTubeも人気です。)。当時を振り返ってもらいました。

 私はF1のエンジン設計をしたくて無限に入社しました。それ以外に目的はなくて、意志は非常に固かったと我ながら思いますよ。

 とは言っても、当時はまだ無限が正式にF1参戦を発表していない時代。入社面接で「無限がF1に参戦しないのであればホンダに行きたいんです」と役員の前で本音をズバッと言ってしまったのです(笑)。

いまではホンダカーズ野崎(栃木県大田原市)にて店長を務める松本氏。シビックタイプRの販売実績は日本トップという偉業も達成している凄腕店長でもある

 その熱意を汲んでくれたこともあり、無限に入社してF1関係の部署に配属されました。

 ただ最初に配属されたのは熱望していたエンジン設計ではなく車体部門。3年頑張ったらエンジン設計に、というのが会社との約束でした。無限がF1マシンを世界に送り出そうという過程でしたから、この時期は本当に忙しくて。


 毎月毎月、鈴鹿へ行っては課題を見つけて工場で修正し、また翌月も鈴鹿にいって……、という日々を過ごしていました。エンジン設計に異動した後も鈴鹿に通い日本グランプリも行きましたよ。


 当時はV8、V10、V12と種類の異なるエンジンが混走していましたね。体躯までズーンと響くエンジンのサウンドに、1コーナーのスタンドに行く間でも胸が高鳴るのを隠せませんでした。

 私も含めて無限はたった5人でエンジン設計をしていたのですが、いつかここ、鈴鹿で頂点をというのが共通の思いでした。

 鈴鹿はやはり聖地であり、何より無限にとっても私にとっても母国グランプリですからね。

 無限は1995年に初表彰台を成し遂げて着実に力をつけてきていたのですが、どうも日本グランプリ前になるとメカニックはソワソワと慌ただしく動き始めるんですよ。

 本来バランス取りが不要のパーツも研磨して重量を合わせたり、他のグランプリではやっていない作業もたくさんしていました。エンジンの設計担当としてはそこまでの加工はほとんど無意味なことと分かっていたんです。

 でも、その熱意を目の当たりにしたら意味がないとは言えなくて(笑)。私もバッフルプレートを鈴鹿用に新規で作りましたよ。1000分の1秒でもマシンを速く走らせたいという思いはみんなが当然持っていましたから。

今でもエンジンを見ると目が変わるという。YouTubeでの濃すぎる解説も人気だ

 まあ、そんな重箱の隅を突っついた改善をしても、得られる馬力はたった1馬力程度なんですけどね。それでもやり残したことがないというくらい日本グランプリへの対策をエンジニアはしていました。

 今になって思えばそれが日本グランプリへの思い、そしてエンジニアとしての誇りだったのかもしれません。

 現代のF1エンジンは私が開発していた当時とは規則も規模も一変しました。すでにエンジンではなく「PU」とか「ICE」とか呼ばれていますしね。

 しかし鈴鹿で母国グランプリを迎えるホンダのエンジニアの皆さんはあの頃の我々と同じ想いでエンジンを組んでいると思います。


 陰で支えるスタッフたちに思いを馳せて観戦すると、日本グランプリの新たな魅力を発見ができるかもしれません。

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