オールアルミ製モノコックにエアサス
ジャガーXJはこれまで50年以上に渡って、スタイリッシュでラグジュアリーな英国製サルーンであり続けてきた。そんななかで今回は、2003年から2009年に製造されたX350系へ焦点を当ててみたい。
【画像】X350系ジャガーXJ 先代のX300系XJRと最新のX351系XJも 全76枚
イアン・カラム氏がデザインを施した、新生X351系XJから1つ前の世代に当たる。丸目4灯のスタイリングはややクラシカルだが、その後のジャガー・モデルへと展開する新しい技術が詰め込まれたXJだ。
特長の1つが、接着剤とリベットを用いてパネルを組み立てるリベットボンディングという技法で、オールアルミ製のシャシーとボディが製造されていたこと。航空機分野では用いられていた技術の1つだったが、自動車へ採用したのはXJが初めてだった。
その結果、先代のX300系XJと比べて、ボディは約40%も軽量。剛性も50%ほど高く仕上がっている。
さらに特徴といえたのが、電子制御のセルフレベリング・アダプティブ・エアサスペンションの搭載。現代のラグジュアリー・サルーンでもお手本と呼べるような、上質な乗り心地を実現している。
加えて緊急ブレーキアシストにトラクションコントロール、ダイナミック・スタビリティコントロールなどの機能も搭載。安全面での電子的なサポートも充実していた。
モダンとクラシックが融合した車内
インテリアの設えは、同時期のメルセデス・ベンツSクラスに匹敵。モダンとクラシックとが見事に融合したデザインが与えられている。ウッド・ステアリングホイールとふんだんに用いられたレザーで、伝統的な英国車の雰囲気を味わうことができた。
デュアルゾーン・エアコンにオートヘッドライト、オートワイパー、キーレスエントリーなど、現代的な装備も充実している。8スピーカーによるサウンドシステムが、長距離移動を豊かな時間にしてくれた。
明るいキセノン・ヘッドライトにクルーズコントロール、熱線入りステアリングホイールなど、オプショも多彩。フロントシートのヘッドレスト後面にマルチメディア・モニターを追加すれば、リアシートでDVD鑑賞も可能だった。
X350系XJのエンジンは、最高出力240psの3.0L V6自然吸気ガソリンがエントリーユニット。V型8気筒エンジンは3.5Lと4.2Lの2種類が用意され、どちらも自然吸気で、264psと296psを発揮した。
さらに高性能なXJRも登場している。4.2L V8エンジンにスーパーチャージャーをドッキングし、400psを達成。0-100km/h加速5.3秒という俊足を誇った。
2005年から、英国ではディーゼルエンジンも選べるようになっている。2.7L V6ツインターボで、高い人気を得た。
手に入れるなら絶好のタイミング
2008年にXJはフェイスリフトを受け、フロントバンパーにミラー、テールライトなどが変更されている。賛否両論を生んだが、フロントグリルも新しいデザインへ変更された。口を開いたジャガーのエンブレムは、ボンネットからグリルへ移っている。
フロントフェンダーには、エアベント風の処理が追加されているが、これはフェイクだ。内装では、フロントシートが新しくなった点が注目だろう。
現在の中古車市場では、フェイスリフト後のXJの方が取引価格は高い。だが、X350系は底値状態といえ、手に入れるなら絶好のタイミングではある。車両価格の減価償却はとっくに過ぎている。
英国市場を調べると、2000ポンド(約30万円)から1万9000ポンド(約288万円)まで、走行距離や状態、グレードに応じて価格帯は広い。新車時はNA V6で3万9000ポンドから、XJRなら6万8500ポンドしたことを考えれば、近づきやすいことは確かだ。
オーナーの意見を聞いてみる
ハリソン・パガニーニ・パーカー氏
「父との共同所有で、XJを購入しました。当初はSUVを考えていたのですが、ジャガーをひと目見て試乗したら、頭から離れなくなったんです。2003年式で、2500ポンドという安さでした」
「購入時点での走行距離は12万7000kmくらい。購入してから、2万6000km近く走っています。3.0LのV6エンジンで燃費はかなり悪いですが、勢い良く走ります」
「ブレーキやホース類など、いくつかの消耗品は交換してあります。この価格帯と年式を考えれば、想定の範囲内といえるでしょうね」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
長期間放置されていたディーゼルターボの場合は、パティキュレート・フィルターのクリーニングが必要。日常的に乗っている限り、高速道路の走行などで自動的に掃除されるが、整備へ出すと1000ポンド(約15万円)の出費になることも。
2005年4月から2007年3月に製造されたXJは、エンジンECUのリコールが出ている。パティキュレート・フィルターがオーバーヒートして発火する可能性があるという。ラジエーター・クーラントのリザーバータンクは、異常に圧力が高まる場合があるようだ。
ブレーキとサスペンション
エアサスペンションのコンプレッサーは経年劣化しやすいが、交換部品は英国ならさほど高くなく入手できる。フロントロワー・ウイッシュボーンアームのブッシュが痛みやすい。リア側も一式点検した方が良いだろう。
ブレーキは、パイプからのフルード漏れに注意。2005年12月から2006年10月に製造されたXJへは、リコールが掛かっている。
ボディ
アルミ製ボディだが、スチール製のリベットを使用した部分で腐食を起こす可能性がある。センターピラーやトランクリッド、ホイールアーチ内などを重点的に観察したい。
ドア下部の塗装に出る、気泡のような膨らみに悩んでいるオーナーも多い。ウインドウ周辺も、腐食しやすい部分。
トランスミッション
2003年以前のX350系の場合、ギアセレクターの再プログラムでリコールが出ている。高いギアで走行中、リバースに入ることがあるという。すべてのリコールが対応済みか、購入前に確認したい。
英国ではいくら払うべき?
2000ポンド(約30万円)~3499ポンド(約52万円)
走行距離16万kmを大幅に超えた、使い込まれたXJが英国では出てくる。エンジンはエントリーユニットのV6だろう。
3500ポンド(約53万円)~4499ポンド(約67万円)
フェイスリフト前のソブリンを含む、比較的多くのXJが英国では候補に入ってくる。実際のクルマは写真ほどきれいでない場合も多いので、現車確認はお忘れなく。
4500ポンド(約68万円)~6999ポンド(約105万円)
12万km以下の走行距離の、比較的手入れの施されてきたXJが選べる。高グレードやV8エンジンも英国では選択肢に加わってくる。
7000ポンド(約106万円)~9999ポンド(約151万円)
V8エンジンを載せたXJが中心。走行距離も短めになる。
1万ポンド(約152万円)以上
短い走行距離に上質なインテリア、きれいなボディにV8エンジンを積んだXJを英国では購入できる。
知っておくべきこと
グレード名の変更が、モデルライフの途中で実施されている。発表当初はエントリーグレードが通常のXJで、スポーツとSEが続いた。トップグレードのパフォーマンス・モデルが、XJRだ。
2006年にラインナップが変更され、スポーツ・プレミアムが追加。SEはソブリンへ置き換わっている。
英国で掘り出し物を発見
ジャガーXJ 3.5 V8スポーツ 登録:2005年 走行距離:16万7300km 価格:5995ポンド(約91万円)
何台かあるなかで、2005年式の3.5L V8エンジン・モデルへ注目した。スポーツ仕様で装備は充実しており、整備記録も整い、販売店の保証も付いている。走行距離は長めながら最近整備を受けており、キーも2本付いてくるという。
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みんなのコメント
人生でジャガーのオーナーになってみるのも悪くない。
この顔じゃないとブランド力は無いってこと。
しかしこの顔を捨て、何処にでもあるような
顔になってしまったのは高級車ブランドで
いちばんやってはいけないこと。
そういった反面教師が今のジャガーだ