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価値ある94万3800円──新型スズキ・アルトA試乗記

掲載 24
価値ある94万3800円──新型スズキ・アルトA試乗記

フルモデルチェンジしたスズキの新型「アルト」に設定されている、最廉価グレード「A」に今尾直樹が試乗した。とても100万円以下とは思えない完成度に驚く。

軽自動車本来の役割とは

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2021年の師走に発売されて話題になったスズキの9代目アルトのもっとも安価なモデルがこちらである。グレード名は単に「A」と名づけられている。価格は94万3800円。

1979年に発売された初代アルトの衝撃的な価格が47万円。内閣府のサイトによると、1979年の消費者物価指数は、2015年を100とすると69.1。1.45倍になっているとして、47万円×1.45で計算すると、68万1500円。アルトAの消費税抜きの価格は85万8000円。ということは、消費者物価指数的に申し上げると、あと17万6500円安くてもいいわけだ。

ところが、初代と9代目アルトの中身を見てみると、この差額分は十分どころか、9代目のほうがむしろがんばっていると思えてくる。なにしろ初代アルトはボディ形式が3ドアである。つまり、ドアは3枚しかなく、軽ボンネットバンだから後席のシートは乗ることを想定していない簡素で薄っぺらなもので、エンジンは550cc3気筒の2ストローク、ブレーキは4輪ドラムで、標準装備はヒーターのみ、ラジオもシガーライターも別料金だった。

対する現代のアルトAはドアが5枚あって、いわゆるバンではないから後席はアンコがしっかり入っていて、おとな2名がゆったり乗れる。エンジンは660ccで3気筒4サイクルのDOHCで、上級グレードとは異なり、マイルド・ハイブリッドのISG(モーター機能付き発電機)はないけれど、減速時のエネルギーを利用して発電し、その電力を電装品に使うことでエンジンの負担を軽くして燃費を稼ぐ「エネチャージ」を装備。

エアコンはもちろん標準で、ブレーキは前輪ディスク、とりわけ安全装備は、初代の時代はエアバッグとは無縁だったけれど、現代のアルトAにはエアバッグが6つも付いており、前席シートはプリテンショナー機構を装備する。おまけに、夜間の歩行者もカメラで検知する衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能など、スズキ・セイフティ・サポートという名の予防安全技術をもれなく備えている。

ちなみにライバルのダイハツ「ミラ・イース」は86万200円からと、アルトAより8万円ほど安価なBというモデルの設定があるけれど、こちらは衝突回避支援システムがカットされている。

45年ほど前と今とでは、安全、命の重さ、あるいは人権というようなものに対する常識、社会の意識が変わってきている。スズキってたいしたもんだ、と、筆者が思うのは、こうした社会の変化をとらえたうえで、より多くのひとびとが移動の自由を享受できるよう、可能な限り安価な自動車を提供しようとしていることだ。軽自動車本来の役割について、スズキはものすごく意識的である。といえるのではあるまいか。

120点のワケアルトAのインプレッションですけれど、ステアリングフィールがないに等しい、というのが唯一の難点である。

と、個人的には思ったものの、アルトAはそういう個人の嗜好云々を語るものではなくて、あくまで安価な実用車であり、移動の自由をより多くのひとびとに提供するための軽自動車である。と、考えると、これはもう100点満点。いや、120点! と、申し上げるべきだろう。

角丸(かどまる)なボディは合理性と日本的な“カワイイ”とのブレンドで、今回の個体のようにビジネスライクなシルバーではなくて、もうちょっとラブリーな色だったりすれば、鉄っちんのホイールの味も出てきそうな気がする。

乗り込んですぐ、ダッシュボードをはじめ、プラスティックが多いとは思うものの、妙な遊びがないからだろう。これはこういうものだ、と、すぐに慣れる。Aピラーが1950~1960年代のクルマみたいに立っていて、室内が広く感じるし、実際広い。ダッシュボードにはスマホとつながるスクリーンもある。居住空間、とりわけ後席の足元は、小型セダンを上まわる広さがある。

660cc、より正確には658ccの3気筒DOHCはCVTとの組み合わせで、ISGのモーターアシストがない分、エンジンの回転数と走行感覚に少々ズレがある、と、感じることがあるけれど、それはISG付きのマイルドハイブリッドを知ってしまっているからで、細かい話である。総じて、車重が680kgと軽いことと相まって、軽快に感じる。乗り心地もそこそこよい。155/65R14という細くて扁平ではないタイヤサイズが効いている。80km/h巡航時の室内は意外なほど静かだ。

試乗した数日後、たまさか近所の駅で、家族を送りに来たと思しきシルバーのおなじタイプのアルトを見かけた。後席にもひとが乗っていて、助手席のひとだけ降りたのではなかったようだ。日常、よくある光景だけれど、試乗したばかりだったので、“アルト便利なアルト”の面目躍如だとおもった。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

24件
  • 単純には比較できないが、初代と現行では安全装備はもちろんだが基本骨格の性能向上、パワステ、エアコン、前席パワーウインドウの標準装備、エンジン性能も向上している。

    物価上昇と上記快適装備などを総合的に見ればむしろ安くなっているのではないかと思う。
  • 軽自動車が高くなったと嘆く人が多いが、趣味性を求めない最低限の足車ならこれかミライースBで充分。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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