■日本が世界に誇るSUV、「ランドクルーザー」とは?
日本が世界に誇る名作、歴代トヨタ「ランドクルーザー」のなかでもとくにアイコニックなモデルとして知られ、日本のファンからは「ヨンマル」、海外のファンからは「Forty(フォーティ)」のニックネームで呼ばれる、いわゆる「40系」が、近年世界の一流クラシックカー・オークションにて次々と高価落札されていることをご存知の方も多いだろう。
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トヨタ・ランドクルーザー40系は、1951年の誕生時にはトヨタ「ジープBJ」と命名され、主に警察車両や消防車として供用されていた初代「FJ/BJ系」、1955年から1960年まで生産され、初めて輸出もおこなわれた2代目「20系」に次ぐ、第3世代のランドクルーザーだ。
幌型ショートボディにトヨタ「F型」ガソリン3.9リッター直列6気筒OHVエンジンを搭載した「FJ40」、および幌型ミドルボディの「FJ43」として、1960年に初登場した。
ほどなくロングボディ+ハードトップの「FJ45」も追加されたのち、1966年にはFJ40とFJ43にハードトップを固定した「FJ40V/FJ43V」も設定。また1974年以降は「B」型ディーゼル3リッター直列4気筒エンジンを搭載した「BJ」シリーズに主力が移行したとされる。
いずれの「ヨンマル」も、今も昔も変わらずトヨタ車の身上である頑丈さや扱いやすさから、日本国内だけでなく海外市場でも大いに受け入れられ、北米においては1960年代前半まではトヨタの最量販車種となるなど、現代に至るランドクルーザーの世界的評価を決定的なものとした名車である。
そして1960年から1980年代中盤に至るまで、大小の改良が施されながら四半世紀以上も生産。3代目「ランドクルーザー・プラド」をベースとして開発され、2006年にデビューしたSUV、「FJクルーザー」のデザイン上のモチーフとなるなど、誕生から60年を迎えた現在においても、ファンから根強い支持を受けている。
そんな40系ランクルだから、国際的なクラシックカーマーケットにおける評価も高いのは、むしろ当然のことだろう。
例えば、2020年2月におこなわれたパリ「レトロモビル」のオフィシャルオークション「アールキュリアル」では、1981年型のランドクルーザーBJ43が出品され、高度なフルレストアが施された車両であることを意識してなのか、エスティメート(予想落札価格)は4万5000-6万5000ユーロ(邦貨換算約530万円-約770万円)という、比較的高めの設定とされていた。
それだけでも注目に値するのだが、ふたを開けてみると11万4432ユーロ(邦貨換算約1360万円)という驚きの価格で落札されてしまったのだ。
これはさすがに特別な事例だろうが、それでも現在の国際マーケットにおけるランドクルーザーFJ/BJ40系が国産クラシックカーのなかでも屈指の人気モデルとなっていることは間違いあるまい。
ところが、新型コロナ禍によるマーケットの混乱は、ランドクルーザー40系とも無縁ではなかったようで、この春以降にオンライン限定でおこなわれた海外オークションでは、軒並みシビアな結果に終わっているのが現状のようである。
今回は2020年9月3-5日、RMサザビーズ北米本社がアメリカ合衆国インディアナ州オーバーンで開催した、久方ぶりのリアル対面型オークション「AUBURN FALL」に出品された3台のランドクルーザー40系のオークションレビューを見ながら、このモデルの現況を考察してみよう。
●1967 トヨタ「FJ40ランドクルーザー」
今回の「AUBURN FALL」オークションに出品された40系ランドクルーザーで、VAGUEがまず注目したのは、1967年型のFJ40である。
固定式ハードトップつきのショートボディに、F型ガソリン3.9リッター直列6気筒エンジンを組み合わせた、ごく初期のFJ40Vである。
この個体でなにより注目すべきは、美しいコンディションであろう。オークションWEBカタログ曰く「入念なレストア」が施され、「Nebula Green」と呼ばれるグリーンに「Mandarin」と名づけられたレンガ色のビニールレザーの組み合わせは、ヘビーデューティ感とシックな雰囲気がコンビとなり、あくまで筆者の好みながらとても魅力的に映る。
また、クロスカントリーカーとしての性格上、各ウインドウは換装されてしまっているランクルが多いなか、この個体は当時のトヨタで純正採用されていた旭硝子社製の強化ガラス「テンパライト」が正しく残されているなど、オリジナル性を追求したレストアが施されているのだ。
この明らかにオークション向きなFJ40Vに対して、RMサザビーズ社では5万ドル-7万ドル、日本円換算で約530万円-約740万円のエスティメート(推定落札価格)を設定していたが、オークション初日にあたる9月3日におこなわれた競売では、リザーヴ(最低落札価格)に届くことなく流札。現在ではRMサザビーズ社営業部門で「継続販売」となっているようだ。
■アメリカ好みにカスタムされた「ランドクルーザー」の評価は?
RMサザビーズ「AUBURN FALL」オークションには、1967年型ランドクルーザーFJ40がもう1台出品されていた。
前ページでご紹介した個体が、オリジナル性にこだわってレストアされているのに対して、こちらはWEBカタログに「A tastefully modified Land Cruiser」と記されることからもわかるように、いかにもアメリカ的なオフローダーに仕立てられた1台だ。
●1967 トヨタ「FJ40ランドクルーザー」
現在ではハードトップを固定したFJ40Vスタイルとなっているが、カタログにはかつてソフトトップと外したフルオープン状態でメキシコを冒険した写真も添付されている。
そして現状ではレストアされるとともに、サスペンションのリフトアップや大径・極太タイヤの装着など、オフロード走行のためのモディファイが施されている。
加えて、1970年代の段階でオリジナルのF型直列6気筒ガソリンエンジンを降ろし、現在のターボディーゼルに換装。トランスミッションもこの時代のオリジナルである3速MTから5速MTに換装され、油圧アシストつきのクラッチと組み合わされたとのこと。
つまり、現在でもオフロード走行を愉しむための「レストモッド」に仕立てられているのだ。
しかし、たとえヘビーデューティ志向のクロスカントリーカーであるランドクルーザーであっても、オリジナリティが重要視される現在のクラシックカー市場ではマイナス要因になると判断されたのか、エスティメート(推定落札価格)は、同じオークションに出品されたオリジナリティの高いFJ40と比べると明らかに低めとなる4万2000-4万8000ドル、つまり約445万円-約510万円に設定されていた。
ところが9月3日におこなわれた競売では、こちらもリザーヴ(最低落札価格)に届くことなく終わってしまい、現在ではRMサザビーズ社営業部門で「継続販売」となっている。
●1986 トヨタ「FJ45ランドクルーザー・ピックアップ」
今回「AUBURN FALL」オークションに出品された3台のランドクルーザー40系のなかで、唯一「Sold(成約)」に至ったのは、1986年型のFJ45ピックアップである。ロングホイールベースにリア・ベッド(荷台)を組み合わせた、いかにもアメリカ好みな小型トラックである。
ショートボディおよびミドルボディのランドクルーザー40系は1984年までに生産を終え、ロングボディのみは翌1985年まで輸出向けに生産されたというのが定説となっているそうだが、この個体が「1986年型」を標榜するのは、おそらくは初年度登録年に準拠しているものと思われる。
FJ45ピックアップは、主に海外輸出に向けて製造されたとのことで、この個体には1975年から設定されつつも、ディーゼル主体となっていた日本向けには設定のなかった「2F」型4.2リッター直列6気筒ガソリンエンジンが搭載される。
またRMサザビーズ社のオークションWEBカタログによると、フルレストアが施されるとともに、オーストラリアARB社製「オールドマン・エミュー」サスペンションおよびワイドな大径タイヤによるリフトアップがおこなわれるなど、ランドクルーザーでは定番のモディファイがおこなわれた1台とのことであった。
そして2020年9月3日の対面型の競売では、オークションハウス側に支払われる10%の手数料込みで3万8500ドル、邦貨に換算すると約410万円で落札されることになったのだが、これは近年のランドクルーザー40系の価格相場を思えば、かなりリーズナブルともいえる落札価格であった。
* * *
翻って日本国内マーケットの相場を中古車専門WEBサイトで見ると、2020年10月現在でも20台近いランドクルーザー40系が流通している。
特に安価なものでは100万円台の売り物も存在するが、レストア済み車両では500万円前後の価格提示がされているものもある。つまりは、新型コロナ禍以降の海外における市場価格と比べても、大きな差はなくなっているようだ。
販売時期やタイプの違いこそあれ、同じランドクルーザー40系が、世界各地で倍ほども隔たった価格で取り引きされることもあるというオークションの醍醐味までも含めて、今後も国際クラシックカー市場における「ヨンマル」の動向に注目していきたいところである。
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みんなのコメント
ランドクルーザーという名前は70系だけにして、他はシティクルーザーとかデブクルーザーという名前にした方がいいと思う。