■セルフ式ガソリンスタンドの増加が油種入れ間違いの要因か?
最近は電気自動車が増えていますが、それでもエンジンを搭載するクルマが圧倒的に多く、走行するためには燃料を補給する必要があります。
【画像】給油口の中身ってこうなってるの!? 意外な構造を見る!(14枚)
運転免許を取得したばかりの初心者ドライバーや運転に不慣れな人にとって、「給油」はハードルが高い作業のひとつといえるでしょう。
なかでも「セルフ式のガソリンスタンド」では自分で給油しなければならず、初めて乗るクルマやレンタカーなどは、どの油種を給油したら良いかわからないことがあります。
「軽自動車だから軽油かな?」と、ウソみたいな間違いが起きてしまうケースも報告されていますが、教習所では給油方法など教えてくれず、初心者ドライバーや長年運転をしていないペーパードライバーは戸惑うことも多いものです。
また意外に多いのが、就職によって運転することになった社用車の油種を知らずに入れ間違ってしまうパターンです。
ほかの人と共有して使う社用車は「燃料が減ってきたタイミングに乗った人が入れる」ということが多く、初めて給油するときに入れ間違えてしまいがちです。
さらに、燃料の入れ間違いの要因として考えられるのが、全国的な給油所(ガソリンスタンド)の減少とセルフ式ガソリンスタンドの増加が考えられます。
経済産業省・資源エネルギー庁が公表している「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)を見ると、1994年度の6万421件をピークに、ガソリンスタンドは年々減少傾向。2020年度では半数以下の2万9005件までその数を減らしています。
さらに1998年4月の消防法改定により「顧客に自ら給油させる給油所(セルフ式)」の運用が可能になったことを受けて、それまでのガソリンスタンド店員によるフルサービス式の給油からセルフ式に切り替える店舗が増加。2020年度ではフルサービス式が63.9%、セルフ式が36.1%の割合となっています。
つまり、これまではガソリンスタンドのスタッフに誘導され「満タンで!」で済んだ給油が、自分で給油機を操作しなければいけない状況が3軒に1軒はあるといるということです。
給油作業を自分でしなければいけない状況が増えたことで、結果として油種の入れ間違えも増えているようです。
■油種入れ間違いでエンジンが壊れる!
ガソリンスタンドの給油機には3つの油種があり、そのなかで自分のクルマに合うものを給油するわけですが、万が一入れ間違えてしまうとどうなるのでしょうか。
都内の整備工場に勤務するF整備士に詳しく聞いてみました。
「ガソリンと軽油は性質が大きく異なり、ガソリンは揮発性が高く、軽油は潤滑性が高いという大きな違いがあります。
仮にガソリン車に軽油を入れてしまうと、タンク内でガソリンと混合した軽油が燃焼室に送られますが、揮発性が高くないので不完全燃焼が起きます。ここで煤(スス)などが発生し、黒い排ガスが放出されます。
そして点火プラグが汚れ、最終的には燃料が上手に燃焼されずにエンジンが止まってしまいます」
油種は違っても同じクルマの燃料だけに誤魔化しながら走行できればと思うかもしれませんが、ガソリンと軽油の入れ間違いは完全にNGです。
軽自動車に軽油を給油してしまうというケースですが、ディーゼルエンジンは重量が重く、専用の排気ガスの浄化システムや専用のエンジンオイルが必要になるなど、クルマの装備が割高になります。
そのため経済性を特徴とする軽自動車にディーゼルエンジンが搭載されることはなく、現在の軽自動車はすべてガソリンエンジン搭載車です。
ガソリンの高騰が深刻な昨今、軽油のほうが安いからという理由で軽自動車に給油してしまうケースもあるようですが、「軽に軽油」は絶対に給油してはいけないということを覚えておきたいところです。
「ガソリン車に軽油を誤って給油してしまう以上に深刻なのが、ディーゼルエンジン車にガソリンを入れ間違ってしまうことです。
潤滑性が低いガソリンが潤滑油の役目を果たせないため、燃料ポンプやインジェクターが摩耗や焼き付きを起こします。
こちらもエンジンが動かなくなりますが、より大掛かりなオーバーホールが必要になってしまいます」(F整備士)
そして、給油中に油種の入れ間違いに気がつかなくても、走り出せばすぐに独特の症状が出るとF整備士はいいます。
走り出して間もなく白い排気ガス、または黒い排気ガスが大量に発生し、エンジン音が高まると同時にアイドリングも不安定になり、アクセルを踏んでもみるみるパワーダウンするそうです。
入れ間違いに気づいた時点でできる限り速やかに安全な場所に停車してエンジンをストップさせることが、被害を最小限にとどめる最良の策です。
それでは、給油中に間違いに気づいた場合はどうすればいいでしょうか。
「すぐに給油を取りやめ、ガソリンスタンドの店員に相談してください。
その後はできるだけエンジンを動かさずJAFなどのロードサービスを呼んで、ディーラーやショップ、整備工場で然るべき処置をしてもらうのが良いでしょう」(F整備士)
入れ間違っただけではまだ故障まで至っていないので、エンジン始動前に正しい燃料に入れ替えれば大きな問題にはならずに済みます、とF整備士はいいます。
しかし逆にいえば、エンジンを動かしてしまうと壊れる可能性が非常に高くなるということでもあります。
「油種を入れ間違えてしまった場合、まずは間違った燃料を取り出し、エンジン内に残った分をフラッシングオイルなどで洗浄する必要があります。
すでにエンジン内に混入している恐れもありますので、エンジンオイルなど油脂類はすべて交換したほうが安全です」(F整備士)
給油で入れ間違ってしまったために、燃料だけでなくオイル類まで交換しなくてはいけないのは大きな出費です。
さらにエンジンブローしてしまうとさらに大がかりな修理が必要になり、費用だけでも数十万円がかかります。
油脂類の交換費用は全部でも数万円程度ですので、入れ間違いに早く気づけるかどうかが大きな分かれ目になりそうです。
※ ※ ※
この油種間違いで唯一問題ないのが、レギュラーガソリンとハイオクガソリンの入れ間違えです。
これは同じガソリンでもオクタン値が違ったり含まれる洗浄成分の違いだけで、大まかにいえば同じ燃料です。
もちろん性能がフルに発揮できない可能性はありますが、搭載されるノッキングセンサーなどでエンジンを保護してくれるので、走行自体に問題はないでしょう。
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