■「オラオラ顔」が設定される訳とは
現在、国内新車市場のなかで約4割を軽自動車が占めています。軽自動車は、日本の道路事情などに合わせた専用の規格のため、日本人のニーズに合っていることから、売れるのは当然です。
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しかし、最近の売れている軽自動車は、いかついフロントデザインの「オラオラ顔」を設定している点が共通していますが、なぜオラオラ顔のクルマは人気になりやすいのでしょうか。
2019年度上半期(4月から9月)における新車販売での上位3モデルは、ホンダ「N-BOX」(13万6047台)、ダイハツ「タント」(8万8233台)、日産「デイズ」(8万1932台)です。
以前から売れている軽自動車の条件として、俗に「スーパーハイトワゴン」と称される、全長1700mm以上と背が高く、軽ミニバンとも呼べるような四角いボディのタイプや、日常での利便性において人気の「スライドドア」を搭載しているものが挙げられていました。
実際に、2019年上半期(1月から6月)では、前出の3モデルのうちデイズに代わって、スズキ「スペーシア」(全長1700mm以上、スライドドア搭載)が加わっていました(デイズは全長1700mm以下、スライドドア非搭載)。
そんな売れる条件で、上記4モデルに共通するのがフロントデザインの「オラオラ顔」を設定していることです。
近年は、軽自動車だけにとどまらず、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」、「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」、日産「セレナ」といったミニバンに威圧的なフェイスデザインのモデルが流行っています。
それぞれ、N-BOX、タント、スペーシアには「カスタム」と称される迫力のあるデザインやメッキなどの加飾が施されているのが特徴です。また、デイズにも「ハイウェイスター」という標準車よりオラオラ感が強まったモデルを設定しています。
軽自動車におけるノーマルとカスタムの違いは、ノーマルが親しみやすさや安心感を持たせるデザインであるのに比べ、カスタムではメッキやエアロパーツを使用して、高級感や迫力ある存在感を際立たせたオラオラ系にデザインされることが多いようです。
フロントグリルはメッキを多用し、押し出し感の強いデザインを表現。また、フロントフォグランプが追加されます。ホイールはアルミになり、グレードによってはワンサイズアップも選択可能。サイドやリアには専用スポイラーが装着されます。
ボディカラーは複数色用意されますが、モノトーンが基本的となり、室内も黒基調にまとめられ、革皮素材を使うなどして高級感を演出する傾向です。
価格帯は、ノーマルと比べて20万円から30万円ほど高くなりますが、それでもノーマルよりカスタムの方が人気の傾向があります。
2019年7月に登場した新型タントについて、ダイハツの担当者は次のように話します。
「タントでは、標準とカスタムの販売比率でカスタムが約60%を占めます。カスタムが人気の理由には、標準仕様と比べて装備を満載にできる点が挙げられます。
また、標準とカスタムを分けて設定している理由としては、軽自動車はさまざまな年齢層のお客さまが、日常使いなどでお使いになられます。
そのため、落ち着いた雰囲気を好まれる人や、迫力のあるデザインを好まれる人などそれぞれいらっしゃいますので、ふたつの種類を設定しているほか、多用な純正パーツも展開することで、好みのカスタムも可能にしています」
■オラオラ顔が好調な理由は、「若年層の性格」が要因?
さまざまなニーズに対応するため、軽自動車には標準やカスタムをはじめ最近ではアウトドアを意識したモデルも出ています。
そのなかで、なぜどのユーザー層にも受け入れる標準車のデザインではなくオラオラ顔が支持されているのでしょうか。
最近の軽自動車には、標準、カスタム(オラオラ顔)以外に流行りのアウトドア要素を盛り込んだモデルも出ています。
代表例としては、2018年12月に登場した「スペーシアギア」です。標準のスペーシア、スペーシアカスタムに続く第3弾の派生モデルとなり、アクティブなユーザーに合わせた外装デザインの加飾や内装装備の防水性向上などが特徴です。
また、2019年3月には三菱「eKワゴン」の派生モデルとしてオラオラ顔とアウトドア要素を合わせた「eKクロス」が登場しています。このモデルも外装部分の加飾をはじめ内装もアウトドア感を演出したデザインが特徴となっています。
これらの流行りのアウトドアニーズを意識したモデルが登場しているなかでも、オラオラ顔のカスタムモデルが支持されている理由について、大手自動車メーカーの担当者は次のように話します。
「軽自動車のカスタム仕様が売れる理由には、色々な要因があります。一節によれば、日本の都市部以外ではクルマが欠かせない地域は多く、『若者のクルマ離れ』といわれていても日常の移動手段はいまでもクルマがメインです。
そのなかで、軽自動車は安価(経済性含む)で運転がしやすいことから全体的に売れていますが、若年層の場合『売れている安心感や信頼性、共感』を求める以外に、『個性を強調したい』という思考もあるようです。
そうすると、標準車のデザインではなくカスタムモデルの方が好まれる傾向にあるといえます」
※ ※ ※
また、各社の軽自動車は身体の不自由な人に配慮した、楽に乗り降りできるオプション設定を用意しています。
日本人のために開発された軽自動車市場で、生き残るには時代に合ったトレンドを取り入れつつ、そこに魅力的な機能や装備を加えたモデルという条件を満たしたうえで、いかに若年層から高齢層までを取り込むかが重要な要素なのかもしれません。
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