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レバー式や足踏み式は今後消滅!? 電動パーキングブレーキのメリットとデメリット

掲載 更新 26
レバー式や足踏み式は今後消滅!? 電動パーキングブレーキのメリットとデメリット

 昨年あたりから日産デイズ&三菱eKやホンダN-WGNに代表される軽乗用車もパーキングブレーキをスイッチで作動させる電動パーキングブレーキを採用するようになり、日本車でも電動パーキングブレーキの普及が大きく進み始めた。

 パーキングブレーキはレバーを引くタイプや足踏み式に慣れていて、レンタカーを借りた時などに解除の仕方がわからなくて困った、という話も耳にする

いまや主流のATとCVT 2ペダルで走りの楽しいクルマはどれだ?

 当記事ではまだ「まだ目新しいもの」という認識を持っている人も多いであろう電動パーキングブレーキの功罪を○と×を考察していく。

文:永田恵一/写真:TOYOTA、LEXUS、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU、MITSUBISHI、DAIHATSU、平野学、中里慎一郎、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】増えてきているがまだ少数派 電動パーキングブレーキを標準または設定する日本車

パーキングブレーキの移り変わり

電動パーキングブレーキを日本車で初めて搭載したのは4代目レクサスLS。このことからもわかるとおり、高級車向けの装備だった

 1970年代までパーキンブレーキは現在も根強く残っているレバー式と、現在使っているのはトヨタハイエースとホンダN-VANのMT車くらいとなっているステッキ式の二択だった。

 1980年代に入り特に高級車でATが普及し始めたこともあり、「AT車ならクラッチペダルのスペースが空く」、「レバー式より省スペース」、「手より力の強い足の方が確実にパーキングブレーキを作動できる」といったメリットがある足踏み式パーキングブレーキが登場(当時の足踏み式は解除の際に独立したレバーを使っていた)。

ハイエースのインパネ。赤丸で囲んだ部分がスティックタイプのパーキングブレーキで、作動、リリースともある程度の力が必要

 足踏み式パーキンブレーキは1990年代後半以降、「踏んで作動、踏み直すと解除」という操作になり、さらに省スペースとなった。

 またこの頃からミニバンやミニバン的なコンセプトを持つ乗用車が増え始めたのもあり、運転席からウォークスルーを実現するため、足踏み式パーキンブレーキを使うクルマが一気に増え始めた。

 電動パーキングブレーキは日本車では2006年登場の日本で初めて販売したレクサスLS(シリーズとしては4代目)で初登場。

 なかなか普及は進まなかったが、2009年登場のスバルレガシィの5代目モデルや2010年登場の日産リーフの初代モデルの初期型が採用。

 2014年あたりから採用例が増え始め、現代に至る。

世界初の足踏み式パーキングブレーキを採用したのは、1980年にデビューした4代目ローレル(C31)で、コラムシフトモデルの専用装備だった

電動パーキングブレーキの長所及びメリット

 普及しているだけにメリットは多い。以下列記していく。

■スペース効率に優れる
 車内に必要なのはスイッチだけなので、足踏み式パーキングブレーキ以上に車内がスッキリする。

ブレーキレバーがないためセンターコンソールは広々使え、足下もパーキング用のペダルがないためスッキリとしている(アルファードの室内)

■スイッチ操作だけなので操作が楽
 スティックタイプやレバー式はある程度力が必要だが、電動パーキングブレーキはスイッチ操作ひとつで作動できる。

ホンダフィットの電動パーキングブレーキを作動している写真。レバーでスイッチをオン/オフするタイプなので指先ひとつで操作できる

■アダプティブクルーズコントロールとの相性がいい
 先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)の普及により停止まで対応するACCも当たり前になってきている。

 それには停止後ブレーキをかけ続けるブレーキホールド機能が必須となったため、ブレーキホールド機能を作動させるのに電動パーキングブレーキは非常に都合がいい。

 なお、メーカーによっては「非電動パーキングブレーキ車のACCはATでも停止まで対応しない」というものもある。

これからのクルマに必須と考えられているACCにはホールド機能の付いた電動パーキングブレーキが必須となる

■ブレーキホールド機能が便利
 ブレーキホールド機能はオンにしておくと、停止中だけでなく駐車場での料金支払いやドライブスルーなどでもブレーキペダルを踏まなくてすみ、「ATでブレーキを踏んでおらず、クルマが動いてしまった」という事故を防ぐにも役立つ。

ホールド機能付きのものは、ブレーキペダルから足を離しても停止状態が続く。再発進したいときはアクセルペダルを踏むだけでOK(図はホンダフィット)

 ただし、スイッチ操作だけでなく、ブレーキホールド機能はメルセデスベンツのようにスイッチではなく、停止後ブレーキペダルを深く踏み足すとブレーキホールド機能がオンになるというものもある。

 メーカーによって作動方法が違うので注意が必要だ。

FRスポーツカーのトヨタスープラのトランスミッションはすべてATで、電動パーキングブレーキを全モデル装備しているが、ホールド機能はない

■緊急停止機能として使える可能性がある
 ボタンの位置にもよるが、突発的な疾病による暴走が起きた際に同乗者がいれば、電動パーキングブレーキを作動させるとアクセルが戻り緊急ブレーキがかかるなど緊急停止機能として使える可能性がある

 といったメリットが挙げられる。

電動パーキングブレーキの欠点及びデメリット

 まず、生産時、修理の際のコストが高いということが浮かぶが、これは大量生産が進んでいることもあり、克服されつつあるのだろう。

 そのほかのデメリットとしてはマニアックな見方、使い方を考えるといくつかある。

■クルマによって操作方法が違う
 ボタンを押すとオン、引くと解除なのかその逆なのかに始まり、ATでDに入れアクセルを踏むと解除されるのかされないのか(ここにはシートベルトの着用も関係する)。 

 また、ATでPに入れると自動で作動するのかしないのかなど、クルマによってマチマチなので、ユーザーにわかりやすいように極力統一してほしいところだ。

■MTとの相性がよくない
 電動パーキングブレーキとACCを含めたATとの相性は抜群だが、MTとの相性は今ひとつだ。

 具体的にはMT+電動パーキングブレーキの坂道発進はレバー式のパーキングブレーキの代わりに、ヒルスタートアシストなどと呼ばれるものでブレーキをごく短時間掛け、クルマが後退するのを抑えてくれる。

 これが4WDを含めた後輪が駆動するクルマでブレーキの解除の仕方やタイミングがよくないと、坂道発進でエンストする原因となることがある。

AT、CVTだけでなく、MTモデルにも電動パーキングブレーキが設定されるようになってきているが、慣れないと不安もある

 またAT車なら、万一パーキングブレーキがかかっていなくてもPレンジに入っていればクルマが動かないという安心感がある。

 しかしMT+電動パーキングブレーキだと、パーキングブレーキの作動を入念に確認したつもりでもどうも不安で、筆者はMT+電動パーキングブレーキのクルマを駐車する際はギアもローかバックに入れている。

■サイドブレーキターンができない
 ラリーやジムカーナでよく見るサイドブレーキターンは、小さな180度ターンなどでレバー式のパーキングブレーキを引き、後輪を一気にロックさせることでクルリとターンを決める華のあるワザである。

 サイドブレーキターンは競技だけで使う特殊なテクニックにも見えるが、一般道でもコーナーの曲率を見誤るなど「曲がり切れない」と判断した際には、パーキングブレーキを引くことでクルマが内側に入り、事故回避や事故になるのは同じでも被害軽減につながることがある。

 これは常時デメリットになるわけではないが、いざという時のことを考えると、軽視できない電動パーキングブレーキのデメリットではないだろうか。

競技やオフロード走行などでは頻繁にパーキングブレーキを使う。豪快な走りができるだけでなく、いざという時の回避テクニックとしても使える

まとめ

 今後クルマはACCに代表される運転支援システムの装着率がさらに向上し、それに伴いAT車の率も増加するのを考えると、電動パーキングブレーキはますます普及するだろう。

 だがMT車やスポーツ系のクルマでのレバー式のパーキングブレーキのメリットは捨てがたい。この種のクルマにはレバー式のパーキングブレーキのほうが向いているように思う。

GRヤリスで唯一、1.5L+CVTのRSに電動パーキングブレーキが標準装備される。競技で使えるクルマだけに少々疑問符

 それだけに全日本ラリーで1.5L以下のAT車が走れるJN6クラスへの参戦も想定されるGRヤリスRSはCVTのみとなる以上に、電動パーキングブレーキとしたのは不可解だ。

 またトヨタランドクルーザーのような本格クロカンSUVはスタックからの脱出などの際に、パーキングブレーキを利用した小技を使うことがあるので、この種のクルマもレバー式のパーキングブレーキを使うモデルが根強く残りそうだ。

レバータイプのパーキングブレーキは減ってきているが、今後もスポーツカーや本格的なオフロードSUVには採用され生き残ると思われる

【画像ギャラリー】増えてきているがまだ少数派 電動パーキングブレーキを標準または設定する日本車

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