中流向けサルーンを提供したボルクヴァルト
ドイツ北西部、ブレーメンに拠点を置いた自動車メーカー、ボルクヴァルトは1961年に廃業した。その足跡を理解するほど、筆者はBMWが目指す姿を先取りしていたように思えてならない。晩年には、高品質な中流階級向けサルーンを提供していたからだ。
【画像】対象的な姿のサルーン ボルクヴァルトP100 BMW 502 同時期のイセッタとイザベラ、503も 全89枚
創業者のカール・ボルクヴァルト氏が、優れた直感力を宿していたことは、中型サルーンのイザベラに現れている。実用性と洗練性に長け、当時の1.5Lクラスとして有能な走りを実現していた。充分に運転を楽しめ、大成功といえる結果を残した。
一方で発想豊かなカールは、少し業種を拡大し過ぎたといえる。オートマティック・トランスミッションや燃料インジェクションだけでなく、ヘリコプターの製造にも進出。ゴリアテにハンザ、ロイドという小型車ブランドも擁していた。
バブルカーと呼ばれた戦後のマイクロカーから、V型8気筒エンジンの高級車まで手広く提供した「ボルクヴァルト・グループ」だが、経営は好調とはいえなかった。その足を引っ張ったのが、BMWに手を差し伸べていた、投資家のヘルベルト・クヴァント氏だ。
クヴァントは、ボルクヴァルトがBMWの脅威になり得ると推測。カールが銀行融資を得るためにブレーメン州政府へ支援を求めると、妨害に尽力したという。ボルクヴァルトの財務に関する否定的な新聞記事も、彼にとっては強い追い風になった。
BMWやメルセデス・ベンツへ対峙したP100
結果的に、ボルクヴァルトの販売は急落。1961年に、同社は地方銀行の管理下に置かれてしまう。ワンマン経営者として、同社を拡大させたカールは意気消沈。1963年にこの世を去っている。
ブレーメンの工場設備はメキシコへ輸出され、ボルクヴァルト・ブランドは1970年まで続いた。クヴァントが登場する以前には、ドイツで5番目の規模を誇る自動車メーカーにあり、早すぎる終焉といって良かった。
ボルクヴァルトの賢明な技術者たちは、BMWに活躍の場を求めた。1961年9月に発表された新世代の中型車、BMW「ノイエクラッセ」1500は、イザベラの後継モデルの延長にあったと想像するのは、飛躍的なものではないだろう。
そんなボルクヴァルトの末期に、BMWやメルセデス・ベンツへ対峙していたのが、直列6気筒エンジンを搭載したP100。1959年にドイツ・フランクフルトで発表され、フィンテールを備えたW110型やW112型以上の注目を集めた可能性はある。
特筆すべき技術が、メルセデス・ベンツより先に量産化されたエアサスペンション。当初はオプション設定だったが、1960年式からは標準になっている。
アメリカではキャデラックなどが既に採用していたが、信頼性の低い技術として否定的に見られていた。しかし、ファイアストーン社と共同で開発された同社のエアスプリングは、メルセデス・ベンツが採用したボッシュ社製と同等の耐久性を備えていた。
ドイツ製の量産サルーン最速を誇った502
P100では、2速調整ワイパーやシガーライター、フォグランプとバックランプも標準だった。フロント・サスペンションには、イザベラ譲りのボールジョイントを採用。オールアルミ製2240ccエンジンは101psを発揮し、最高速度は160km/hがうたわれた。
同じ頃、BMWが提供していたのは、1951年に発表された直列6気筒エンジンの501。5シーターのボディはドアが観音開きで、ふくよかな局面のスタイリングが特徴だった。復数の仕様が設定され、1952年から1963年にかけて合計2万1807台が作られている。
当初のエンジンは2.0Lか2.2Lの直6だったが、1958年に2.6LのV型8気筒が登場。501 V8という名が与えられ、このシリーズでは最も長期間生産されている。ボディは、サルーンだけでなくクーペやカブリオレも選べた。
1954年には、V8エンジンを標準にした502がデビュー。最高出力は101psで、当初は502 2.6を名乗ったが、モデル末期には111psへ強化され2600Lへ改称されている。
502 スーパーは、1955年に登場。排気量を拡大した3.2Lエンジンは121psを発揮し、1958年からはBMW 3.2を名乗るように。同時期に、ツイン・ソレックスキャブレターを組んで142psへ増強された、BMW 3.2 スーパーも発売されている。
これは後にBMW 3200Sへ進化。最高出力は162psへ引き上げられ、最高速度は189km/hに届き、ドイツ製の量産サルーンとしては最速を誇った。
情報を殆ど有していなかったヒストリック部門
BMWはアメリカを意識し、1949年からオーバーヘッドバルブを採用したV8エンジンの開発を進めていた。アルミ製ブロックとヘッドを備え、プッシュロッドでバルブを開閉するユニットで、ドイツ製としては戦後初のV8だった。
501のスタイリングは、当初イタリアのピニンファリーナ社へ提案を依頼するものの、最終的には戦前のBMW 326へ似た自社案を採用。チューブラー・クロスメンバーを備えたボックスセクション・シャシーに、スチール製ボディが溶接されている。
サスペンションは、フロントがウィッシュボーンとトーションバー。ステアリングラックは、垂直方向のシャフトが繋がる、特殊な設計といえたセクター&ピニオン式が採用された。リアはトーションバーが支えるリジッドアクスルだ。
クラッチとトランスミッションの間にプロペラシャフトが備わる点も、特徴といえる。これによりレイアウトの自由度が増し、フラットなフロアを実現していた。電動ラジオアンテナなど装備は充実していたが、相応にお値段は高かった。
今回ご登場願った502 V8、改め2600Lは、ドイツ仕様の1960年式。1974年にグレートブリテン島へ上陸しているが、ロンドンの倉庫に眠っていたのを、現オーナーのダレン・サリバン氏が発見している。
この年代のBMWに関する知識は殆どなかったと打ち明ける彼は、多額の予算と時間を割き、素晴らしい状態まで復活させた。BMWのヒストリック部門は、部品などの情報を殆ど有していなかったらしい。ボディ塗装のコード番号すら不明だったとか。
この続きは、ボルクヴァルトP100 BMW 502(2)にて。
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みんなのコメント
こんなに古い時代から時速200キロに迫る性能を誇る自動車を生産していたのは本当に驚きです。
実車を見られる事はないと思いますが、脳裏に焼き付けておきます。