ホットハッチ「GTI」の上に位置するハイパフォーマンスハッチ「R」
近年ハイパフォーマンスなハッチバックが増えています。日本で言えばトヨタ「GRヤリス」やホンダ「シビックタイプR」、ヨーロッパで言えばルノー「メガーヌR.S.」などがその例と言えるでしょう。しかし、元祖ハイパフォーマンスハッチバックと言えば「R32」を先祖に持つフォルクスワーゲン「ゴルフR」ではないでしょうか。今回は1997年生まれの若手自動車ライターが、ゴルフRに試乗してみました。
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「R」でも「実用車ゴルフ」の印象はそのまま
現行ゴルフRを見たときの第一印象は「とても普通のクルマ」ということ。最高出力320psのパワーユニットを搭載するハイパフォーマンスモデルであることは、普通の人からはもちろんクルマ好きでもあまり想像がつかないのではないでしょうか。19インチのタイヤ&ホイールやビッグキャリパーなどひと目で分かる走りの専用装備もありますが、あくまでも普通のクルマ……というか「実用車ゴルフ」の域を出ないように演出されている雰囲気を感じます。
ボディサイズは全長4295mm×全幅1790mm×全高1460mm、ホイールベース2620mmとなっていて、ノーマルのゴルフとのサイズの違いは、なんと全高が15mm低くなっているだけ。この手のスポーツモデルとなるとベースモデルよりもワイドになることはよくありますが、ゴルフRはノーマルと同じ幅なのです。この辺もぱっと見の印象がノーマルのゴルフとあまり変わらない理由でしょう。
ドアを開けて室内に入るとその印象はさらに強まります。ヘッドレストが一体型となったスポーツシートが装備されていますが、全体的なインテリアデザインはノーマルのゴルフと共通。シートのチェック柄がGTIを思い出させ「ホットハッチという言葉はGTIからだし、ゴルフRもGTIの成功があるからこそだよなぁ」と改めて思いました。
抜群の乗り心地で街乗りも高速も快適
いざ走り出してみるとその乗り心地の良さにビックリ。筆者は、現行ゴルフは日本へ導入したての初期モデルしか乗ったことありませんでしたが、「ノーマルのゴルフよりいいんじゃない?」と思うほど。正直サルーン並みの乗り心地を感じてしまうほどでした。235/35R19の低扁平タイヤを装着している事実なんて忘れてしまいます。
試乗車には可変ダンパーが備わるオプションのDCCパッケージが備わっていましたが、これをコンフォートモードにすると乗り心地は抜群に良いです。街乗りから高速道路まで運転した印象では「これは絶対に着けるべきオプション」と感じました。ただ、人によっては高速道路などの速度域の高いところではスポーツモードの方が、フラット感があって良いと感じる人もいるかもしれません。言い換えればスポーツモードであっても乗り心地は良く仕上がっています。
恐ろしいほどのスタビリティの高さに驚き
ワインディングへ行きドライブモードを変更。スポーツモードにするとサスペンションが固められますが、バンピーな日本のワインディングでもギャップやアスファルトの凹凸を上手くいなします。エンジンは低回転から十分なトルクを発生していますが、ターボ車らしく中回転域からグッとトルクが立ち上がるフィーリングです。しかしながらトルクの立ち上がり方は心地よい程度で、決してターボラグがあって扱いづらいといった雰囲気ではありません。
そしてワインディングで驚かされたのはスタビリティの高さです。高い旋回速度を実現できそうな雰囲気がありますが、それと同時に不安感が一切ありません。それも手汗をかかずに。サラッとハイペースを実現できそうな雰囲気がゴルフRにはあります。
なお、装着されたDCCダンパーは任意でも調整可能でその範囲は15段階。減衰力を最強にすると公道ではハードすぎる印象ですが、任意で調整できて変化が分かるのも楽しいポイント。カスタムモードで自身が好きなセッティングを設定することもできます。
スポーティな刺激は少ないがサラッと速い
さまざまなシチュエーションでひと通りゴルフRを乗った印象をひと言で述べるのであれば、「凄く速いゴルフ」です。何を当たり前のことを言っているんだと突っ込まれそうですが、予想していた以上に高い実用性と優れたコンフォート性能を有しているあたりは確実に実用車ゴルフの面影を感じます。
それでいて、ハイパフォーマンスな走りをサラッと実現するあたりもなんだかドイツ車的という印象。スポーツカーと表現するよりは「高性能実用車」と表現するのが正しい気がしました。
しかし、刺激的なスポーツハッチバックが欲しいという人にはあまりオススメしません。レースモードにすればワイルドなサウンドが楽しめますが、運転フィーリングは良い意味でも悪い意味でも、あまりスポーツモデルらしい刺激は感じません。そんなところも含めて「ゴルフRはあくまでも実用車の域を出ないゴルフなんだ」ということを強く感じました。
それを良いと取るか悪いと取るかは人によりますが、「快適で実用的で脚が良くて速いやつ」、そんなワガママな要素を満たすクルマが欲しい人にはオススメと言えます。
【AMWの添削】
日本のワインディングは、よっぽど林道みたいなところでない限り、世界的にみたら舗装は素晴らしい部類に入ります。英国やイタリアのワインディングなんて日本の比ではありません。そんな欧州の道路事情を考慮して煮詰められているアシと言っていいでしょう。
それからゴルフRといっても実用車のゴルフなので、そもそもスポーツカーではありません。VWもそのあたりは入念にやりすぎないラインを狙って仕立ててきています。実用車の域を超えるようなゴルフが欲しければ、チューニングの世界へどうぞ、ということですね。チューニングのベースとしては魅力的な1台ですが、いかんせんデリバリーが……。
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