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【試乗】日本導入を見据えて密かに輸入されていたアルピナD3 ビターボ クーペ【10年ひと昔の新車】

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【試乗】日本導入を見据えて密かに輸入されていたアルピナD3 ビターボ クーペ【10年ひと昔の新車】

2008年、並はずれたパフォーマンスと燃費性能を誇るアルピナ D3がニコル・オートモビルズによって試験的に輸入された。日本でクリーンディーゼルが注目を集め始める中、いち早く、ニコル・オートモビルズは日本導入に動き出していた。ここでは緊急輸入されたアルピナD3ビターボ クーペに試乗した時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年2月号より)

シングルターボのD3の成功に続いて、ビターボに進化
欧州で注目を集めているアルピナD3ビターボクーペを、日本の道で試乗するチャンスに恵まれた。まだ正式に輸入されるかは決まっていないが、試験的にでも日本に入れられたということは、日本導入を考えているということだろう。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

D3というのはB3の誤植ではない。ガソリンエンジンの場合はベンゼンのBだが、ディーゼルエンジンならDになる。そうディーゼルエンジン搭載のアルピナなのだ。さらにDはダイナミックやドイツ語でトルクを意味するDrehmomentも示唆する。スポーツディーゼルとして認知されたシングルターボのD3の成功に続くモデルとしてビターボに進化して、2008年のジュネーブショーで登場したモデルである。

「波に乗るより、波を作るほうが好き」とはニコルグループの社長であるニコ・ローレケ氏の言葉である。高級車も含めてドイツで販売される乗用車の半数以上がディーゼルエンジンというのに、日本ではまだ受け入れられていない。高級スポーツカーにディーゼルエンジンという組み合わせはきっと日本でも受け入れられる。アルピナがそのきっかけになれば、と考えている。ディーゼルエンジンがブームになってから輸入するのではなく、そのブームを作りたいというわけだ。

D3ビターボのエンジンは2L直列4気筒シーケンシャルツインターボ。小さなターボチャージャーはアイドリング回転数から働いて、高回転になると大きなターボチャージャーが太いトルクを生み出す。BMW 123dに搭載されるエンジンをベースに、アルピナマジックが施されたものだ。

最高出力は157kW(214ps)/4100rpm、最大トルクは450Nm/2000-2500rpmを発揮する。なんとリッター当たり107psを発揮し、ガソリンV型8気筒エンジン並みの最大トルクを搾り出す。

0→100km/h加速は6.9秒、最高速度は244km /hで、どちらも6速MTと6速AT同データである。欧州総合燃費は18.5km/L(ATは17.9km/L)、CO2排出量143g/km(ATは148g/km)という優秀なデータである。

爆発的な加速ではないがスムーズでさりげなく速い
D3ビターボクーペに乗り込む。アルピナブルーのタコメーターは、4800rpmからゼブラ、5000rpmからレッドに塗られていた。5000rpmというのはディーゼルエンジンとしては異例の高回転型である。スピードメーターはなんと310km/hまで刻まれている。

クラッチペダルとブレーキペダルを同時に踏み込みスタートボタンを押すと、ブンッと低い排気音が聞こえてエンジンがかかる。そのままシフトレバーを1速に入れ、右足はブレーキペダルをリリースし、クラッチペダルをゆっくり戻してくるとD3ビターボは簡単に動き出す。まだアクセルペダルを踏んでいない。

これを4速までできた。つまり一度もアクセルペダルを踏まなくても40km/h以上のスピードが出せる。これはD3ビターボのエンジンが持つ桁違いに太いトルクのおかげだ。

アクセルペダルを踏み込んでいくと実にスムーズに加速していく。2000rpmに満たないエンジン回転数でシフトアップしても、十分に速い加速ができる。2500rpmまで踏むともっと速くなり、3000rpmでシフトアップすれば、バックレストに押さえつけられるほどの加速感になる。

クルマが軽く感じられるような走り味で、ディーゼルの素晴らしさが味わえる。通常のディーゼルエンジンは高回転型といっても4500rpmほどしか回らないが、これは5200rpmまできっちり回る。

さすがにB3のようなアクセルペダルを踏み始めた瞬間から蹴飛ばされるような加速はないが、スムーズドライビングをしながらもさりげなく速く走るには最高のクルマだ。D3ビターボを運転しているとインテリジェンスのようなものさえ感じる。

それは自動アイドルストップがうまく働くせいでもある。ニュートラルにしてクラッチペダルを戻して5km/h以下という条件が揃うと自動的にエンジンが止まる。そしてクラッチペダルを踏み込むと素早くエンジンがかかるから、ギアを1速に入れてクラッチペダルをスムーズに戻せば、いとも簡単に走り出す。アイドリングの時には、ほんの少しディーゼルノイズを感じるが、それも不快なものではなく、自動アイドリングストップにより逆に静かになる。

太いトルクと自動アイドリングストップにより、MTなのに渋滞中でもまったく苦にならなかった。また走行距離176kmのうち、1時間も渋滞に巻き込まれたのにオンボードコンピューターが示す平均燃費は13.8km/Lと優秀だった。燃料満タン時に航続可能距離が1000kmを超えていたのに気づいた。D3ビターボなら毎日乗っていても飽きそうにない。(文:こもだきよし/写真:森山俊一)

BMW アルピナD3 ビターボ クーペ主要諸元
●全長×全幅×全高:4580×1782×1395mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1480kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルツインターボ
●排気量:1995cc
●最高出力:157kW(214ps)/4100rpm
●最大トルク:450Nm/2000-2500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:18.5km/L
●燃料・タンク容量:軽油・61L
●0→100km/h加速:6.9秒
●最高速度:244km/h
※欧州仕様

[ アルバム : BMW アルピナD3 ビターボ クーペ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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