10代目新型アコードに試乗した。2020年1月末に「新型アコードがまもなくデビュー」とお伝えしていたが、ようやくテストドライブすることができた。いうまでもなくコロナ禍の影響だったのだが、期待以上の乗り味で高級感がある満足度の高い試乗だった。
e:HEV
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国内にはEXグレードだけのモノグレード展開でEXはe:HEVモデルだ。これは以前i-MMDと呼んでいた2モーターハイブリッドの名称変更で、2.0Lの4気筒ガソリンエンジンを搭載している。ちなみにグローバルでは1.5Lターボ、2.0Lターボもラインアップしている。
e:HEVとはシリーズハイブリッド方式のことで、エンジンは主にバッテリーを充電するために使われ、高速走行時のみエンジンで走行するというスマートなハイブリッド。その仕組みは別な機会に譲るとして、イメージは電気自動車だ。走行するほとんどの場面でモーターで走るからだ。
だから車内は非常に静か。高級車感が溢れている。高級車の走りの表現に「まるでモーターの様に滑らかに走る」という表現があるように、静かで滑らかだ。走行中、バッテリー残量に応じて随時エンジンは稼働するのだが、その変化に気づくことはない。スピードメーター横にある表示でエネルギーマネージメント状況を表示させると、「エンジンで充電している」とか、「モーターだけで走っている」、「あ、エンジンとモーターの両方で走っている」などなど、走行状況は把握できる。が、インジケーターを見なければ、その変化を感じるとることがないほど静かに走る。
高級車感
新型アコードのメインマーケットは北米、中国だが、タイやオーストラリアを中心にアジアでも販売されている。ボディはミッドサイズセダンに分類され全長4900mm、全幅1860mm、全高145mm、ホイールベースは2830mmで先代よりボディサイズは少し小さくなったが、ホイールベースを+55mm延長したことで、全体のバランスがよくなり立派になった印象を受ける。
国内では少し大きめのサイズになるが、ライバルに位置付けているのはやはり北米がメインマーケットのトヨタ カムリだ。しかし走行フィールだけで語れば、その上の車格であるクラウンと比較してもいいかもしれない。それほど静粛性は優れていると思う。
また、グローバル仕様にはない、国内専用「コンフォートモード」の存在がある。グローバル仕様のドライブモードでは「スポーツ」と「ノーマル」、他に「ECO」はあるもののコンフォートモードはない。これはアダプティブダンピングシステムがより滑らかに減衰するようにサスペンションのセッティングが瞬時に変更され、乗り心地を重視したモードになる。
特に後席での乗り心地が良くなるという説明で、実際に体感するのは、NVHでのハーシュネスや細かなバイブレーションを吸収するのを感じ、滑らかさが増した印象になる。こうした乗り味はパワートレーンからの音がなく、走行音、風切音が抑えられ、乗り心地がしっとりと滑らかに走る様から、高い満足感が得られるというわけだ。
欧州プレミアムがライバル
開発時、「ヒップポイントが高くなっていたことに気づいた」という話があり先代より25mm下げている。バッテリーが床下に格納されていることや、しっかりとした剛性感を感じさせるボディなどと相まって、しっくりくるドライビングポジションが取れる。
ボディは言うまでもなくインナーフレーム構造で作られ、また構造用接着剤もふんだんに使用し高い剛性感を感じさせる。また静粛性向上のためスプレー式ウレタンフォーム材を10箇所に使っていること、さらに防音材の配置工夫、アクティブノイズコントロールといった技を使い、しっとり感、剛性感、静粛性などを安心感へとつなげている。特に直進性の高さを実感し、どっしりとした安定感が好ましかった。
以前のアコードは北米マーケットを意識するあまり、緩めのふわっとした乗り心地やステアフィールだったが、10代目アコードは「グローバルで戦えるモデル」という位置づけであり、操舵やサスペンション、シートなどのしっかり感をつくり、そしてプレミアムモデルとの比較まで成長したモデルと言えよう。
もっと斬新に
インテリアではシフトレバーがないボタン式のシフトセレクターは斬新。レジェンドやNSXで採用しているタイプで減速はパドルシフトで行なう。もっともアコードのトランスミッションは無段階の電気式変速機のため、いわゆるギヤによる減速ではない。が、操作する上ではそうしたことを意識する必要は全くなく、普通に操作できる。
その斬新な印象を受けるセンターコンソールだが、デザイン的には黒い樹脂パネルにボタンが設置されているだけなので、ちょっと素っ気ない。またセンタークラスターにあるクライメートコントールはダイヤル式でクラシカル。操作はクリック感があって高級感が作られているが、見た目に新鮮さがない。
ダッシュボードに設置されたナビも斬新さに欠ける。フローティング形状にする工夫があるものの高級感や斬新さはない。せっかくセレクターレバーを廃し、斬新な印象があるだけにアンバランスなインテリアの印象を受けた。メーター内に表示される情報は多くさまざまな状況が把握できるが・・・
メーターはフルデジタルであるものの、同様にワクワク感はなく、情報は「これでもか!」というほどの情報量を表示させることができる。もちろん、不要だと思えばシンプルな表示に変更することはできるのだが、そういうことではなく、見るからに高級であるとか、感性に響くデザインが欲しい。
高級感イコール木目デザインも時代感が違う様に感じる。さらに触れてみるとプラスチックにプリントしただけの木目。これがダッシュボードとドアトリムに配されているが、高級感をスポイルする。違った手法で高級感を作って欲しかった。
ユーティリティ
ホイールベースを先代より+55mm拡大したことで、後席の足元周りに余裕が生まれている。もともとのボディサイズに余裕があるため、後席に大人3名も可能で、5名乗車できるセダンだ。また、レザーの質感も良く、高級車のシートであることは直感的にわかる。さらに、北米メインのためか、シートサイズも大きくゆったりとしている。シートを小さくタイトにするモデルが増えている中で、歓迎できる。
ハイブリッドでもこれだけのトランクスペースを確保。さらにシートバックも倒せるユーティリティはポイントが高い
また新型プラットフォームでの開発となったため、バッテリーの搭載位置もトランクから床下へと変更でき、広いラゲッジスペースが確保され、573Lもある。ゴルフのキャディバック4本が搭載できる大きさがあるのだ。また、分割はしないものの後席背もたれを倒すことができ、大きなトランクスルーも可能になり、幅広で長尺なものも搭載できる便利さがある。
かっこいいキャラクターライン
ボディサイドに入るキャラクターラインやサイドステップにある膨らみのあるデザインなど、新型フィットやMCのフリードなどとはデザイン言語が異なり、ちょっと前のホンダデザインだ。というのも海外マーケットでは2年ほど前から販売されており、国内導入が遅かった影響もある。その間、他モデルが次世代デザインへと進行していたというのが本当のところだろう。
ただ、こうしたミッドサイズセダンになると、フレンドリーで丸みを帯びたデザインより、キャラクターラインがあるデザインのほうが分かりやすさはある。だから多くの人が純粋に「かっこいい」というデザインだと思う。
クーペライクなルーフデザインはセダンの3ボックスデザインという概念を覆し、美しくまとめている。トランクリッド上にあるスポイラーはスポーティさを感じさせ、ボディサイドのキャラクターライン、そして引き締まったフロントフェイスなどスポーティさと、大人の品格を感じさせるエクステリアだと思う。
国内ではシェアの小さいセダンマーケットで、またサイズ的にもユーザーが限られるかもしれないが、ホンダセンシングなどの装備はもちろん、ガラスサンルーフまで装備した価格が465万円(税込み)は比較するライバルが上級であればあるほどコスパに優れていると感じるのは間違いない。新型アコードは、大きく大人へと成長し、上品でセンスのいい大人に似合うセダンという印象だった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
アコードEX価格(税込)
465万円
主要装備
●ホンダセンシング+ブラインドスポットインフォメーション
●ホンダインターナビ+リンクアップフリー
●ヘッドアップディスプレー
●アダプティブ ダンパーシステム
●18インチアルミホイール
●ガラスサンルーフ
*フロアカーペットはディーラーオプションのため、価格に含まれません
アコードEX試乗車主要諸元
全長:4900mm
全幅:1860mm
全高:1450mm
ホイールベース:2830mm
エンジン:2.0L 4気筒ガソリン+2モーター
エンジン最高出力:145ps(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:175Nm/3500rpm
モーター最大出力:135kW(184ps)
モーター最大トルク:315Nm
JC08モード燃費:30.0km/L
WLTCモード
市街地モード:21.2km/L
郊外モード:24.4km/L
高速道路モード:22.5km/L
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