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「濃厚」イタリアン マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン(1) 異なる個性の似た2台

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「濃厚」イタリアン マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン(1) 異なる個性の似た2台

モデナに独自ブランドを立ち上げたデ・トマソ

アレッサンドロ・デ・トマソ氏は、実業家の大富豪。アルゼンチン出身のレーシングドライバーで、集中力に欠くところはあったようだが、クルマは大好きだった。アメリカ人の富豪と結婚し、祖先の故郷だったイタリア・モデナに独自メーカーを立ち上げた。

【画像】「濃厚」イタリアン マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン パンテーラにカムシン シャマルも 全109枚

デ・トマソ・アウトモビリ社の創業は1959年。1970年代にスーパーカーのパンテーラをフォードへ提案し、名声を獲得すると、経営難へ陥っていたマセラティを1975年に買収した。

それ以前、1968年にシトロエン傘下へ収まるまで、マセラティは直列6気筒やV型8気筒エンジンの洗練されたグランドツアラーを生産。モータースポーツでの歴史を武器に、イタリアン・ブランドとして独自の地位を築いていた。美しい容姿も強みの1つだった。

しかし新たな親会社のもと、ブレーキとステアリング系に油圧を用いたハイドロ・システムを導入。成功とはいえないモデルを成熟させる猶予もなく、ブランドは転売されたのだった。

アレッサンドロがマセラティへ立案した長期計画は、BMWに対するイタリア流の答えを1981年から展開するというもの。2ドアのクーペとコンバーチブル、4ドアのサルーンで構成される、ビトゥルボで。結果的に、ブランドの評価が上昇することはなかったが。

オイルショックが世界を襲い、燃費の悪いハンドビルドのグランドツアラーへ支持が集まる保証はなかった。意欲の低い労働者に、工場は悩まされていた。

ボディパネルで共有する部分は殆どない2台

それでも、アレッサンドロは成功する予感を抱いていた。C107型のメルセデス・ベンツSLCという傑作は、堅調に売れていた。ミドシップエンジンのマセラティ・ボーラやメラクとは異なる、エレガントな2+2モデルへ需要があると予想した。

フロントエンジンのクーペ、1969年に発売されたマセラティ・インディの新世代こそ、直近の成功の鍵だと判断。ベルトーネのスタイリングをまとうFRのカムシンは、戦略的な問題が不振を招いたと考えられた。

かくして、1976年のスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表されたのが、今回振り返るマセラティ・キャラミ。インディの事実的な後継として、90日間で設計はまとめられたらしい。

可愛らしいモデル名は、南アフリカに存在するキャラミ・サーキットが由来。このコースで開催されたF1では、1967年にマセラティ・エンジンのマシンが優勝している。

ベースとなったのは、技術者のジャンパオロ・ダラーラ氏が設計した、デ・トマソ・ドーヴィルやロンシャン用のシャシー。リアアクスルは4本のダンパーが支え、ブレーキはインボードディスクで、ラック&ピニオン式のステアリングが採用された。

デ・トマソ・ロンシャンとキャラミは、確かに似ていた。だが実際は、ボディパネルで共有する部分は殆どなかった。イタリアでの価格も、マセラティ製のツインカムエンジンと豪奢な内装が加味され、ロンシャンより高く設定された。

フォードの5.8L V8から334psを獲得

そのロンシャンは、1972年のイタリア・トリノ・モーターショーでデビュー。1973年に提供が始まり、デ・トマソ・ブランドの重要な一角をなした。生産は1989年まで続いたが、合計の生産数は409台に留まる。

燃料タンクと燃料ポンプはツイン構成で、フロントに積まれたエンジンは、パンテーラと同じくフォードの5.8L V8プッシュロッド・ユニット。アレッサンドロは、その仕上がりを自負していた。

ダッシュボードのデザインは、豪華さより機能性を重視。ステアリングコラムはフォード由来であることを隠さず、車内空間は広かった。ジャガーやメルセデス・ベンツとは異なる、エキゾチックさに惹かれた物好きな人は一定数存在した。

ただし、北米市場では認可を得ていない。パンテーラのように、製造品質にばらつきがあることへ、現地のディーラーが警戒したことが大きな理由だった。並行輸入で、20台程度が登録されている。

ロンシャンの351cu.in V8エンジンは、バルブの大径化とポート研磨で334psの最高出力を獲得。240km/hへ迫る最高速度へ到達も可能だった。英国価格は、当初1万7000ポンドほどだったが、10年で2倍以上に膨らんでいる。

トム・ジャーダとピエトロ・フルアのデザイン

当時のデ・トマソはカロッツエリアのギア社も傘下にあり、デザイナーのトム・ジャーダ氏がスタイリングを担当。1969年のコンセプトカー、ランチア・フラミニア・マリカを進化させつつ、トップの指示通りメルセデス・ベンツへ似たボディが生み出された。

フェンダーを埋めたのは、パンテーラ風のカンパニョーロ社製アルミホイール。ヘッドライトは四角く、中央に存在感の強いグリルが据えられた。ロンシャンという名称は、フランスの競馬場にちなんだものだ。

対して、キャラミのスタイリングはデザイナーのピエトロ・フルア氏。ヘッドライトは丸目の4灯で、イタリア・トリノのワークショップ、エンボ社がボディパネルを成形した。シャシーに改良を施したのは、マルケージ社だ。

ボンネットは、ロンシャンとプレスラインが違う。リアピラーも異なり、リアウインドウは幅が僅かに狭く、ルーフパネルの裏側にはロールバー風のプレスが施されている。

テールライトは、ロンシャンがアルファ・ロメオ1750からの流用。キャラミは、シトロエンSMから拝借された。

フロントには、フォードの5.7Lユニットより3割ほど軽い、ツインカムV8エンジンをマウント。空間に余裕はなく、吸排気系は専用に設計されている。トランスミッションはZF社製の5速マニュアルか、クライスラー譲りの3速オートマティックが組まれた。

この続きは、マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン(2)にて。

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みんなのコメント

1件
  • ffz
    アレハンドロ・デ・トマソがいたからこそ、マセラティが生き残っていますね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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