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【チューニングで長所を伸ばす】ACシュニッツァー・トヨタGRスープラへ試乗 KWサスと400ps

掲載 更新 17
【チューニングで長所を伸ばす】ACシュニッツァー・トヨタGRスープラへ試乗 KWサスと400ps

ACシュニッツァーといえばBMW

text:Richard Lane(リチャード・レーン)

【画像】ACシュニッツァー仕様GRスープラ 競合スポーツモデルと比較 全113枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


優れた長所が少なくない、新しいトヨタGRスープラ。しかし5万ポンド(675万円)前後のスポーツカーの中で、際立つハンドリングや最速のパワーを備えているわけではない。

同じことを、ドイツを拠点にするBMWのチューニング・ブランドも考えていたようだ。ハードウェアの多くをBMW Z4と共有する、GRスープラ。ACシュニッツァーは、手を出さずにはいられなかったのだろう。

トヨタ自身が今後、改良を加えていく可能性はある。われわれも、それを強く望んでいる。

ACシュニッツァーが用意したパッケージを、すべてGRスープラへ投入するのに必要な金額は、英国で2万ポンド(270)万円。ボディキットだけでなく、シャシーやパワートレインも、しっかり改良が施される。手を加えられる部分は、沢山あったようだ。

特に重要なチューニングメニューとなるのが、「ピギーバック」と呼ばれるECU。BMW社製のB58と呼ばれる3.0L直列6気筒エンジンは、最高出力が339psから400psまで増強される。最大トルクは、50.7kg-mから61.1kg-mへと太くなる。

GRスープラの最高出力はライバルと比べると少し控えめだったが、これで肩を並べるようになった。

さらにKW社製のコイルオーバーをベースにした、ACシュニッツァー独自の専用サスペンションも開発。減衰力は伸縮と伸長とを個別に調整可能で、車高は30mm下げられる。

特性はそのままにハンドリングを向上

オリジナルと見間違えないだけの容姿も得ている。今回試乗したスープラには、ACシュニッツァー社製の21インチ・アルミホイールも装備していた。標準の19インチから2インチも大きくなっているのに、重量は1本当たり3kgも軽いというから驚きだ。

スタイリングもカッコいいと思う。ネガティブ・キャンバーが強められ、低い車高と相まって、好戦的なスタンスにまとまっている。

エンジンとサスペンション、ホイール周りのチューニングに留めれば、必要な費用は1万ポンド(135万円)。スポーツ・エグゾーストシステムと、大きなウイングを含める、カーボンファイバー製のボディキットを我慢できるなら。

その仕上がりは、専用サスがすべてを解決しているわけではないものの、切り始めの反応が鋭いステアリングと、緩めの姿勢制御という標準モデルの組み合わせが改善。ボディロールの発生が、ハンドリングと調和している。

全体的に姿勢制御が向上しているから、限界領域でのグリップ力だけなく、クルマの応答性が底上げされている。ドライバーの自信も、より確かなものになる。

ACシュニッツァーの目指したところは、GRスープラをエッジの立った刺々しい性格に仕上げることではない。コーナリング時は、オリジナルと同様に穏やかなアンダーステアのバランスと、荷重移動が残されている。

扱いやすいトルク 改善された乗り心地

ACシュニッツァーのECUで大幅に強められたトルクによって、扱いやすい動的性能も獲得。BMW M2コンペティション並みの速さはないかもしれないが、非常に速く、安定性も向上した。

電動パワーステアリングはそのままだというが、ステアリングの重さが自然に変化することも、手のひらでわかる。ブレーキペダルを踏んだ時の反応は若干丸くなり、サーボアシストの量が減らされたように感じられた。

どちらも、軽量な21インチ・ホイールへの変更で生まれた違いだろう。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4Sで、速度域を高めつつ、ドライバーの自由度も犠牲にはなっていない。

増強されたトルクを引き出せば、オリジナルのスープラ同様に、コーナー出口でテールを外側に流すことも容易。ドライバーが望まなければ、安定したまま脱出してくれる。

乗り心地も改善されたように思えた。ACシュニッツァーは、巨大なホイールを履かせても、しなやかに衝撃を吸収するサスペンションをいつも提供してくれる。アルピナ社のように。

今回の試乗は、ドイツとオーストリアを結ぶきれいな舗装路面だったから、快適だったのは当然ではある。しかし英国の乱れた路面でも、きっと穏やかな乗り心地であることは想像に難くない。

GRスープラに与えられたチューニングによって、落ち着きを向上させつつ、楽しく惹き込まれるようなドライビング特性に磨きがかかっている。優秀なACシュニッツァーへ、期待するとおりの内容だ。

チューニングによる確実な進化

コンピューター・チューニングを受けたといっても、オリジナルのECUは残されており、エンジンはトヨタのディーラーでメンテナンスが可能。それ以外のチューニング・メニューは、ACシュニッツァー社で保証してくれる。

今回試乗した限りでは、何よりKW社製のサスペンションの仕上がりが一番印象深かった。スープラの特徴を、見事に伸ばしている。

安価にパワーアップしたいなら、リッチフィールド社という選択肢が英国にはある。4000ポンド(54万円)で、3.0L直6からACシュニッツァーを超える馬力を手に入れられる。

この価格帯の中ではBMW M2コンペティションが、依然としてドライバーを強く誘惑することに変わりはない。しかしACシュニッツァー社が手を加えたGRスープラも、大きく魅力度を高めている。部分的には、ライバルを上回る訴求力を獲得してさえいる。

価格は高いものの、GRスープラは確実な進化を遂げていた。本来のトヨタGRスープラも、こうあるのが理想的だと思う。決り文句かもしれないけれど。

ACシュニッツァー・トヨタGRスープラ(欧州仕様)のスペック

価格:2万ポンド(270万円/チューニング・パッケージのみ)
全長:4379mm(標準GRスープラ)
全幅:1854mm(標準GRスープラ)
全高:1292mm(標準GRスープラ)
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.0秒(予想)
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1500kg
パワートレイン:直列6気筒2998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/5100-6450rpm
最大トルク:61.3kg-m/3000-3500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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