日本に上陸したロータスの新型「エレトレR」にサトータケシがテストドライブ。異次元の最新SUVは、ブランドの特徴を継承する魅力的なSUVだった!
あのロータスがここまでやるのか!
都心の高層ビルの地下駐車場で初対面したロータス・エレトレRは、このシチュエーションにふさわしい存在感を放っていた。空気を切り裂いて、そのまま成層圏から飛び出してしまいそうなシェイプのフロントマスクを目の当たりにして、「スペースシップ」という単語が、脳裏に浮かぶ。サイズもなかなかのもので、尖ったデザインだから引き締まって見えるけれど、全長は5.0mを軽く超える。
「キーをお渡ししたいのですが、“エアドロ”でいいですか?」と、ロータスの担当者に言われた。エアドロ──、つまりiPhoneのAirDropでキーを受け取る。エレトレのキーはiPhoneのウォレットに収まり、これでキーの施錠と解錠やトランクの開閉を行う。もっともオーナーの場合は、専用のアプリをダウンロードすることで、空調の操作や充電の管理などを遠隔で行えるという。
ま、専用アプリによる操作は最近のBEVでは珍しいことではないけれど、ダイレクトな操縦性が魅力のネイキッドなスポーツカーで支持されてきたロータスがここまでやるのが興味深い。
iPhoneを携えて運転席に座ると、何も操作しなくてもセンターコンソールの15.1インチの大型タッチスクリーンが起動して、そこには人影や周囲のクルマの存在が示され、注意を促す。
インテリアはシンプルな造形でありながら、クオリティが高い。ということは素材がいいということで、アルミをむき出しにしていたエリーゼの頃からは隔世の感がある。
走り出す前から、ロータスが大きく未来へと舵を切ったことがびんびん伝わってくる。
2017年に中国のジーリー傘下となったロータスは、電動車両の高級ブランドへ生まれ変わろうとしている。ブランドの象徴として発表した電動スーパーカーの「エヴァイヤ」を別にすると、この電動ハイパーSUVのエレトレが第一弾、そして第二弾の電動ハイパーGTの「エメヤ」も日本でお披露目された。
ロータスはどこへ向かうのか? 正直、期待が半分、俺たちのロータスがどっかへ行ってしまのではないかという不安が半分で、わくわくドキドキしながら試乗を開始する。
ブラックホールに吸い込まれているかのような加速感地下駐車場から地上へ上がるスロープはかなり狭いけれど、サイズを持て余すことはなかった。というのも上級仕様の“R”には、後輪操舵が標準装備されるからだ。
都心の一般道に出てびっくりしたのが、望外の乗り心地のよさ。しかも超高級SUVのふんわり系、ぼよよん系の乗り心地のよさではなく、路面からの情報をしっかり伝えながら、いらない振動やショックをシャットアウトする、すっきり辛口系の乗り心地のよさだ。おそらくエアサスペンションや電子制御式のダンピングシステムがきっちりとチューニングされ、効果的に機能しているのだろう。
エレトレRは、フロントに最高出力225kW、リアに450kWのモーターを積み、システム全体の最高出力は675kW(918ps)というモンスター。けれども、少なくとも市街地を走る限りは、洗練されたフィーリングの電動高級車で、車内にはイギリスの名門、KEFのサウンドシステムがいい音を鳴らしている。
高速道路の合流で、がばちょとアクセルペダルを踏んでみるけれど、当然ながら日本の法と道路環境では、2秒と全開加速を続けることはできない。なんせ0~100km/hの加速タイムは2.95秒なので、味わえるのは氷山の一角だ。ただしその滑らかで強大、ブラックホールに吸い込まれているかのような加速感からは、いかに水面下の氷山が巨大なのかが伝わってくる。
直線よりも、「うぇーい!」と楽しくなるのは、コーナーだ。
ステアリングホイールからの確かな手応え、そして操舵した瞬間にノーズがごく自然にインを向く回頭性の高さ、スパッという切れ味の鋭さは、「エミーラ」や「エリーゼ」といったロータスのミドシップスポーツカーを思わせる。
あるいは、エミーラやエリーゼに乗っている人は、電動SUVのエレトレには興味がないかもしれない。でも淡麗辛口の乗り心地といい、ノーズの向きの変え方といい、ロータス秘伝の味は確実に引き継がれている。
不思議なのは、ツインモーターのフルタイム4駆なのに、なぜロータスの味が出せるのか、という点だ。これも乗り心地と同様に、モーターと最新テクノロジーの組み合わせで実現したのだろう。具体的には、4輪へのトルク配分とブレーキ調整でコーナリング能力を高める、トルクベクタリングを最適にチューニングすることがキモになったはずだ。
完成度の“超”高いADAS意外なことことは、まだまだ続く。
ロータスのエンブレムをつけているクセに、といっては失礼だけど、ADAS(先進運転支援装置)系の出来が抜群だ。
高速道路でステアリングホイールを握る左手の親指のワンアクションで、操舵も支援するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が作動する。コーナーであまりにナチュラルに曲がるからステアリングホイールから手を少し放そうとすると、両手でしっかり握って操作してくださいとシステムに怒られた。ただし、カメラやセンサーなど、システムとしてはハンズオフ走行が可能なレベル3の要件を満たしているというから、いずれロータスのエンブレムがついたクルマでハンズオフ走行をする日が来るかもしれない。
中国資本で生産は中国・武漢、商品企画とデザインはイギリス、開発拠点はドイツと、適材適所のグローバルな体制で開発することで、ロータスの魂を継承することと、最先端の電動高級車両の要件を満たすことが両立できたのだろう。
なんというか、頑固一徹のスポーツカー職人と、マーケティングにも長けた巨大IT企業のコラボといった趣の、非常に興味深いモデルだった。こんなクルマはほかにないし、これからどんな展開になるのか、将来が楽しみでもある。
ロータスの創始者であるコーリン・チャップマンは、グランドエフェクトカーやアクティブサスペンションなどのアイデアで旋風を巻き起こした、天才エンジニアとして知られる。もし存命だったら、嬉々として自動運転や電動化に取り組んでいたはずだ。
同時に、チャップマンはF1マシンに初めて広告を取り入れた天才マーケッターでもある。草葉の陰から、このクルマや高級電動車両ブランドに移行する一連の動きを、おもしろがって見ているのではないだろうか。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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