日本のライトバン市場を牽引しているトヨタ プロボックス。働くプロ御用達のクルマとして、高い人気を誇っている。実質的なライバルは日産 ADバンだが、販売台数はダブルスコアに近く、プロボックスが完勝だ。
トヨタで営業活動に従事していた筆者は、プロボックスに対するさまざまな評価を、多くのユーザーから見聞きしてきた。その話を紐解いていくと、働くプロたちがプロボックスを支持する理由が見えてくる。
24時間耐久レースを「完走」。トヨタが水素エンジンで見据える未来とは??【クルマの達人になる Vol.577】
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、編集部
【画像ギャラリー】圧倒的じゃないか……!! 働く人々に熱烈に支持されるトヨタ プロボックス
■プロボックスは法人のみならず個人ユーザーも満足させる
トヨタ プロボックス。働く人々に愛される商用車だが、近年は個人で所有する人も増えている
今や商用車といっても、そのユーザーは法人だけではない。アウトドアレジャーに対するニーズの高まりなどから、商用車を個人所有する動きが加速している。
この動きは、ハイエースはもちろん、プロボックスでも顕著だ。カスタマイズに力を入れるトヨタディーラーでは、プロボックスをキャンピング仕様にカスタマイズし、個人オーナーに向けてアピールしていた。
販売店では、プロボックスやハイエースを法人向けと決めつけず、個人へと販路を広げたい思いがあるのだろう。
2018年11月に行われたマイナーチェンジで、プロボックスにハイブリッドモデルが追加された。WLTCモード燃費は22.6km/Lとなり、衝突被害軽減ブレーキは歩行者検知までをしっかりとおこなう。
もはや商用バンだからといって、簡素で質素に割り切ったクルマではなくなった。プロボックスは、乗用車と遜色なく、個人ユーザーから法人の社用車として乗る人たちを、広く満足させられるクルマになっている。
■「トヨタのバンを入れてから従業員がクルマの取り合いするようになった」
トヨタ プロボックス リア
では、実際にプロボックスの魅力は何なのだろうか。積載性や室内の機能性に目が行きがちだが、実際のユーザーの声で、最も多く挙がるのが「運転のしやすさ」と「乗り心地の良さ」である。
朝8時から夕方5時まで、クルマで移動するという営業マンは多い。そのなかで、運転するだけでクタクタになるクルマは、営業に不向きである。
スポーツカーのような運動性能や、ミニバンのような居住性の高さが必要なわけではないが、疲労感が少なく運転操作ができるクルマは、効果的な営業活動をおこなううえで、良い相棒となるだろう。
筆者が販売店で営業活動に従事していた時、プロボックスを使用してもらっていた会社の社長から、こんな話をされたことがある。
「トヨタのバンを入れてから、従業員がクルマの取り合いするようになった。昔から他社のバンを使っていたけど、新車を入れたからといって、その新車を従業員が取り合うなんてことはなかったんだ」
「なんでだろうって思って、私も乗ってみたら、その理由がわかったよ。バンなのにフニャフニャしてなくて、乗りやすい。多くの社員が気に入っているから、他のバンがダメになったら、またトヨタのバンをお願いするよ」
実際のユーザーの声で、最も多く挙がるのが「運転のしやすさ」と「乗り心地の良さ」だ
どこか頼りないイメージがある商用バンだが、プロボックスのシートには充分な厚みとホールド感があり、クルマはガッシリと硬く、ステアリング操作に対するレスポンスが良い。筆者も仕事で、一日中プロボックスを運転したことが何度もあるが、下手な乗用車よりもロングドライブが快適なのだ。
機能性の高さに目が行きがちだが、プロボックスの真価は、ドライバビリティの高さにある。手を抜かないクルマ作りの姿勢には、働くプロたちも太鼓判を押す。
■イメージも走りも変えたハイブリッドの導入
元々格段に走りのいいプロボックスだが、2018年に導入されたハイブリットモデルは乗り心地がさらに良くなっている
走りの良さに加えて、2018年に導入されたハイブリットモデルは、プロボックスのイメージを変える。
法人の社用車にハイブリッドを導入する動きは、年々増えている。多くはアクアやプリウスなどの、乗用車のハイブリッドを使っていたが、プロボックスのハイブリッド化で、より費用対効果の高い、社用車の導入が可能になった。
ハイブリッドの導入は、イメージアップだけではなく、走りの実力も高めている。プロボックスハイブリットには、初代プリウスαから採用され、クラウンにも搭載されている、車体のピッチングを抑制する機能、「バネ上制振制御」を搭載する。
商用バンの足回りは、重い荷物を積載するために引き締めるのが通例だ。しかし、これは商用バンの動きをヒョコヒョコとしたものにしてしまう。プロボックスハイブリットでは、バネ上制振制御のおかげで、前後のピッチングが少なくなり、乗り心地が格段に良くなっているのがわかる。
プロボックスハイブリットに乗ると、明らかに運転後の疲労感が少ない。筆者が話を聞いた中では、「マイカーよりも運転が楽」と答えるドライバーもいた。
商用バンと侮るなかれ、プロボックスは、商用に限るのはもったいないと思えるほどにクルマの出来が良い。一度乗れば、その性能の高さを体感できるはずだ。この仕上がりで、最上級グレードが200万円というのは、破格の安さであろう。
主な販売先が法人なだけに、試乗などはほとんど行われずに買われていくクルマなのだが、実際に乗ってもらう機会を増やしたら、さらなる販路拡大につながりそうだ。トヨタ販売店さん、各店舗に1台、プロボックスの試乗車を用意してみてはどうだろう。
きっとプロボックスの新たな価値に気づく人が、増えるはずである。
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