■知らないと運転手が道交法違反に? 助手席のマナーと法律
助手席でダッシュボードに足を乗せるといった行為をする人がいます。これは単にマナー違反なだけではなく、道路交通法違反として罰則対象となったり、重大事故につながる可能性をもつ危険行為です。そこで、助手席に座る人が知っておくべきルールとマナーを紹介します。
助手席に乗っていると何気なくやってしまう行為でも、「道路交通法違反」として運転手に違反点数が加算される可能性があります。とくに気を付けるべきなのが「足をダッシュボードに乗せる行為」です。
道路交通法第70条には「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と規定されています。
そして、助手席の人間が足をダッシュボードに乗せてしまうと「助手席側のドアミラーが見えにくくなる」可能性があり、見えないまま走行することは「確実な運転操作ができない」とみなされ、罰則の対象となる可能性があるのです。
違反とされた場合は、罰則対象は運転手になり、「安全運転義務違反」として違反点数2点と反則金9000円が科せられます。
実際に上記のようなケースを扱ったことの警察官は以下のように話します。
「助手席のマナー違反は何度か注意したことはあり、数件は安全運転義務違反とした事例があります。ダッシュボードに足を乗せたという例では、助手席に乗る人が運転手に対し、足で道を指示していたというケースがありました。
相手が仕事の上司であった場合など、注意することが難しい状況も考えられますが、違反となれば運転手の責任となってしまいます。助手席に座る人間が心がけるマナーではありますが、運転手もしっかり注意するようにしてほしいです」
なお、ダッシュボードへの足乗せは罰則・罰金の面だけでなく、安全面でも非常に危ない行為です。万が一事故にあった場合、ダッシュボードからはエアバックが勢いよく飛び出してきます。エアバックによって足が跳ね上げられて大けがにつながる恐れがあります。
※ ※ ※
さらに、ダッシュボードに足を乗せていると、必然的にシートへ浅く腰かけている体勢になります。その場合、シートベルトが意味をなさない「座席ベルト装着義務違反」にも問われる可能性があります。
道路交通法71条の三には、「自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、(中略)座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。」と規定されています。
シートベルトをしていなければ、運転手に対して違反切符が切られ、反則金はありませんが違反点数1点が加算されます。
そのほか、運転席・助手席側の窓に「サンシェード」を付けて走ることも道路交通法違反です。
道路交通法第55条2項に「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。」と規定されています。
助手席だけに装着していた場合でも、罰則対象となるのは運転手であり、違反点数1点と反則金6000円(普通車)が科せられます。
■違反にはならずとも、控えたい行動は
違反にはならないものの、安全面から控えるべき行動があります。まず、なかでも気をつけたいのが「背もたれを倒して座る」行為です。
道路交通法をみても「背もたれの角度」までは決められておらず、視界を妨げることもないため安全運転義務違反に問われるとは考えにくいです。
ただし、背もたれを大きく倒すことでシートベルトと体が密着せず、万が一の時に身体がシートをすりぬけて衝撃軽減の効果を果たさなくなります。その場合は「ベルト装着義務違反」に問われる可能性があるでしょう。
次に気をつけたいのは、「助手席の人がハンドルを操作する行為」も危険です。運転手の急病によってハンドルを握らざるを得ない場合もあり、明確に違反とはいえないグレーな行為とされています。
しかし、助手席の人がハンドルを握ったことで蛇行したりセンターラインをはみ出したりした場合は「安全運転義務違反」に問われます。運転手が初心者だからといって、むやみにハンドルに触るのはNG行為です。
また、「ヘッドレストを外す」行為を気をつけるべきです。ヘッドレストは事故時の頭の衝撃を守る重要な役割があるため、外して走行することは許されていません。従来は運転席のみの装着でOKとなっていましたが、2012年の法改正により助手席にも着用の義務が生じています。
ヘッドレストを取り外しての運転は「道路運送車両の保安基準第22条4号」違反となり、罰則こそないものの保安基準に適合していないクルマとみなされ、厳重注意されることがあります。また、事故時には保険が適用されない可能性もあるため、注意が必要です。
※ ※ ※
助手席に座る際の何気ない行動が、運転手の罰則につながる可能性があります。
助手席に座る人は文字通り、運転手をサポートする「助手」になるのが正しい乗り方です。自分の行為が運転の邪魔になっていないか、十分に配慮してからリラックスするようにしましょう。
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