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復活した8シリーズは“おとな向け”のスポーツクーペだ!──M 850i xDrive試乗記

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復活した8シリーズは“おとな向け”のスポーツクーペだ!──M 850i xDrive試乗記

「感情を揺さぶる」と、BMWがうたう新型8シリーズクーペ。なるほど、低い車高に長い全長を持つ2プラス2シーターのスタイルは、スポーツクーペ好きの興味を強く惹きつける。

私がスポーツクーペ好きというのもあって、2018年6月のル・マン24時間レース会場で最初にお披露目されたときから、ずっと気になる存在だった。

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だから今年10月、ポルトガルでM850i xDriveに試乗したとき、期待どおりの出来だったので、たいそう嬉しくなった。

M850i xDriveは4.4リッターV8エンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせたモデル。最高出力320ps、最大トルク680Nmを発揮する。

新型8シリーズを担当したBMWのプロジェクトマネージャーに想定ライバルを聞くと「アストン・マーティン DB11」や「ジャガー FタイプSVR」などがあがった。

全長4855mmもあるボディは迫力満点だ。上下幅の薄いヘッドランプにキドニーグリルと、バンパー一体型のエアダムがすごみを効かせている。この点では少なくとも”想定ライバル”と真っ向勝負できる。

ただし、名前の上がったライバルたちの本当の競争相手になるのは、2019年の登場と噂される「M8」だろう。M850i xDriveは、ステアリングのレスポンスも、足まわりの設定も、スポーツカーではなくGT寄りだったからだ。それは、一般道で試乗してすぐに気づいた。

多気筒エンジンの醍醐味を堪能

テストドライブ最初のパートは、リスボン周辺の高速道路と、山岳路、そして景色のきれいな空いた海岸線の道だった。

山岳路では、道幅が極端に狭いので神経を使った。ひょっとしたら私より対向車のドライバーのほうが、迫力ある幅広ボディの8シリーズとすれ違うのに気をつかったかもしれないが。

2820mmのロングホイールベースを持つボディに、ウルトラクイックというほどではない設定のステアリングの組み合わせのため、小さな曲率のカーブが続くワインディングロードにはベストマッチとはいえない。

ただし、道幅が広くなり交通量が減ると、このクルマの天下だ。V8エンジンは低い回転域でもたっぷりした力を生み出す。

加速する際の独特なトルク感は、多気筒エンジンの醍醐味だ。くわえて、しなやかに動くサスペンションも魅力だ。大型スポーティクーペならでは、と、言うべき気持ちのよい乗り心地である。なお、サスペンションシステムは7シリーズと一部共通。フロントがダブルウィッシュボーン、リアが5リンクだ。

とりわけ美しい海岸線のドライブは、舗装のいい路面とあいまって、じつに気分がよかった。多少シャープさを犠牲にしても、ドライブの楽しさをとったのは、正しい選択と思う。スポーツカー好きには、M8があるのだから。

このクルマのオーナーは、ロサンジェルスならパシフィックコーストハイウェイからロデオドライブへ、香港なら西貢(Sai Kung)の景色を楽しんだあと梳士巴利道(Salisbury Road)に戻ってくるような人なのかなぁと思いながら、私は海岸線を走った。

今回のドライブでは、新世代のインフォテインメントシステムが道中をより快適にした。「BMWオペレーティングシステム7.0」は、10.25インチのディスプレイであらゆる機能を操作出来る。

指先の動きだけで操作可能な「ジェスチャー・コントロール」によって、運転中に目的地を確認したりラジオ局を選択したりするのも実に簡単だった。オーディオの音もよい。

インテリアは最新BMW の共通テイストに仕立てられている。ユニークなのは8段のオートマチックギアセレクターのノブだ。透明なクリスタルなのだ。複雑な面取り(カット)がしてあり、奥に8の字が見える工夫を凝らしている。

サーキットでは想像以上にスポーティな走りを披露

テストドライブの後半、新型8シリーズが持つもうひとつの”顔”を見た。サーキット走行で、たんに快適性のみを追求したGTではないのがわかったのだ。

サーキットでは予想以上に速かった。ドライブモードで「スポーツ」あるいは「スポーツ+(プラス)」を選ぶと、威勢のよい破裂するようなアフターファイアの音が室内に響き渡り、気分が大きく昂揚する。しかも、アクセルペダルの踏み込みに対する反応は速くなり、5500rpmで最高出力を発生する高回転型のエンジンの魅力を余すところなく堪能出来る。

ステアリングホイールもスポーツモードでは重めになり、サーキットを走るにはかなりいい手応えだ。純粋なスポーツカーほどの鋭さはないまでも、路面とのコンタクトはしっかり手のひらに伝わる。また、スポーツモードの4輪駆動システムは、後輪へ積極的にトルクを配分するため、BMWならではのスポーティな操縦感覚を堪能出来る。

姿勢変化はそれなりにあり、ウルトラフラットではない。コーナーでは適度に車体がロールする。私自身はこれでよいと思った。言うまでもなく、M850i xDriveはオンロードのドライブを主たる使用目的に開発されているのだから。

なお、電子制御ダンパーを持つアクティブサスペンションシステムに、電子制御アクティブスタビライザーを組み合わせ、乗り心地と操縦性を共に高めたそうだ。

電子デバイスの介入はナチュラルだ。高頻度で介入し、ドライバーのライン取りを助ける。ただし、電子デバイスが作動しているかどうかは注意深く観察しないと気づかないはずだ。

だから、サーキット走行ではいちどもホイールスピンしなかったし、コーナーからコーナーへと移るとき、多少ステアリングホイールをこじっても、後輪が暴れるような場面は皆無だった。誰でもスムーズなスポーツドライビングが楽しめるクルマに仕立てられている。

開発担当のひとり、トマス・アルント氏は「(7シリーズと違い)あえてフルエアサスペンションにしていません。ドライビングのためには、従来からある金属コイルの特徴をうまく活かしたほうがいいと判断したからです」と、話す。

さらに「7シリーズのクーペ版がこの8シリーズと言えますが、単なるラグジュリークーペではありません。スポーツカーの特徴も併せ持つ、いわゆる“The Best Of Both Worlds”なのです」と述べた。

これまであった「6シリーズ」のポジションを受け持つ新型8シリーズの完成度は相当高い。日本で価格は1714万円であるが、価値ある“おとな向け”クーペと言える。

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