大ヒット車レガシィ・ツーリングワゴンのDNAを受け継ぐ
日本車のステーションワゴン市場は縮小してすでに久しい。トヨタ・カローラフィールダーやホンダ・シャトルなど、小型の実用タイプのワゴンは比較的堅調な販売を記録しているが、スポーツ性を高めたタイプのワゴンはほぼ絶滅状態。SUVの走りに不満がなくなり、荷室容積の大きさと走りの良さを重視するユーザーがワゴンを選ばなくなったこと。燃費など環境性能を重視するユーザーが増えたことが、スポーツワゴン衰退の要因として挙げられる。
そんななか、スバル・レヴォーグだけが国産唯一のスポーツタイプのワゴンとして力強く生き残り、一定の人気を博し続けている。デビューから5年目となり、最近では販売台数が4ケタを割るようになってしまったが、発売初年度は年間4万台以上を記録するヒット車に。3年目までは年間2.3万台程度の販売台数をキープするなど、国産ワゴンとしては孤高の存在感を発揮。次期型モデルが登場することも確実視されている。
瀕死状態の国産スポーツワゴン市場にあって、唯一生き残ったのは、前身モデルのレガシィツーリングワゴンから受け継いだ伝統によるところが大きい。
レガシィツーリングワゴンが開拓し、25年間培った「スポーツカーのような走りとユーティリティ性の高さを両立させたスタイリッシュなワゴン」という魅力は圧倒的な商品力を誇る。トヨタ・カルディナや三菱リベロ、日産アベニールやステージア、ホンダ・アコードワゴンといったライバルが次々と消えていくのを横目に、長年にわたり「ワゴンのひとり勝ち状態」を守り続けたレガシィツーリングワゴンのDNAをしっかり受け継いだのがレヴォーグだ。
レガシィ時代のウイークポイントだった経済性については、レギュラーガソリン仕様の1.6リッター直噴ターボを設定して解消をはかり、レガシィ時代にはなかった新しい魅力も備えている。その一方で、クルマ好き層からはMTが設定されなかったことを批判され、いまだ待望論が根強いが、総合的な評価はとても高い。
レヴォーグが成功したのは、レガシィツーリングワゴンの魅力を継承しつつ、「日本のスバルファン、およびクルマ好きの心をつかむこと」を強く意識して開発されたからだ。時代と逆行する国内市場向けのミドルクラス・ステーションワゴンをブランニューモデルとして投入したことは大英断といえた。
レースのノウハウを注ぎ込んだワゴン版WRX的存在
クルマ好きの心をつかむため、走行性能はレガシィ時代よりも高い次元のスポーツ性を追求。レヴォーグの操縦安定性を仕上げた市澤 眞さんは、4代目レガシィの時代まで、スバル車の操縦安定性の味を決めてきた辰己英治さんの後継者のひとりで、辰己さんの持論である“ただ剛性を上げるだけではなく、ある部分はしなやかに仕立てて路面からの入力をいなすボディ作り”の考え方に基づいて、レヴォーグの走りは煮詰められた。
そのノウハウの礎となっているのは「WRC」や「スーパーGT」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」などモータースポーツのトップカテゴリーへの参戦。レヴォーグはワゴンでありながら、SUBARUのモータースポーツ参戦マシンのDNAも継承された稀有な存在といえる。
そもそも、SUBARUのトップスポーツモデルである「WRX」と共通した部分が多いことも、レヴォーグの走りのポテンシャルの高さを裏づける。
たとえば、初期型のサスペンションのスプリングのばねレートは従来型比で倍以上の5~6kgという、実用車としては異例の硬さを採用。ステアリングギヤボックスのマウントブッシュは、5代目レガシィ比で230%もばね定数を高め、キレ味のある微小舵応答性を実現している。上級グレードでは、アルミ製ロアアームやピロボールブッシュも採用。これらは、強くてしなやかなボディがあってこそのセッティングで、レヴォーグはワゴンらしからぬ高次元の運動性能を確保できた。
初期型では乗り心地が硬すぎる、あるいはリヤサスのダンピングが足りない、などとサスペンションの味付けに対する不満点が指摘されることもあったが、年次改良で対応。トップグレードとして「STIスポーツ」を追加してからは、それ以外のグレードが全体的にマイルドな方向に修正されている。
パワートレインでは、トランスミッションがCVTであることを不満とする声も多いが、300馬力の高出力でも20万km以上メンテナンスフリーで済む(フルード交換は必要)など、耐久性では多段式ATやデュアルクラッチ式ATより圧倒的に有利であるなど、総合的にはもっと高く評価されるべき事実もある。発進加速タイムを計測すれば、同レベルの動力性能をもつMT車よりも速い結果が得られることも。
ほかにも、レオーネ時代から培われた荷室のユーティリティ性や、運転支援システムのアイサイトなども高い人気を博したポイントといえるだろう。
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