BMW3シリーズに新しくくわわったエントリーモデル「318i」に試乗した。印象はいかに?
現行3シリーズで唯一のアンダー500万円モデル
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バイエルンの門をくぐる第一歩となるモデル。それがBMW318iだ。
それは昔の話でしょ。だって、この下に1シリーズと2シリーズがあるのだから。という声もあるかもしれない。たしかに。とりわけ2の後輪駆動クーペ。あれはいい。BMW1500 “ノイエ・クラッセ”の血脈につながる正統的後継車という雰囲気すらある。
それではこう言い換えてみよう。2020年8月に、ここニッポンで発売となった318iは3シリーズの入門車である、と。あ、当たり前の出だしになってしまいました。
Sho Tamuraじつのところ、さる10月下旬に箱根で開かれた2020年のBMWフルラインナップ試乗会にて、318iに筆者は初めて触れた。そしてこの入門用モデルが、BMWという名店ののれんをくぐって最初に味わってみる1杯のかけそば、関西方面の方々にとっては1杯のかけうどんにふさわしい仕立てであることに、筆者はうなった。う~む。こいつはうまい!
現行G20型3シリーズは、BMWの看板モデルの7代目として、昨2019年1月にニッポンに上陸。当初は320iと330iの2本立てで、その後、ディーゼルの320dやらプラグイン・ハイブリッドの330eやら、3.0リッター直列6気筒ガソリンの340iやらを追加している。そして、シリーズを完成する最後のピースとして、318iが登場したわけだ。
ごく簡単に申しあげて、318iは320iのデチューン版である。装備類はほとんどおなじ。携帯電話のワイヤレス・チャージングが標準装備かオプション設定かという程度の違いしか見当たらない。
Sho TamuraB48B20Aという2.0リッター直列4気筒直噴ターボ・エンジンの型式も同一で、最高出力と最大トルクのみが若干異なる。318iの156ps/4500rpm、250Nm/1350~4000rpmという数値は、320i比、28psと50Nm低いだけで、発生回転数はそれぞれ同じ。ZFの8速ATのギア比もファイナルまで含めて同じなら、1540kgの車重も同じだ。おそらく、エンジン制御のロムの違いだけなのである。
そう考えると、318iは俄然お買い得に思えてくる。名店の一品だけに、価格が489万円と高価ではあるけれど、320iの538万円より49万円もお求めやすくなっているのだ。現行3シリーズにあって、ゆいいつ500万円を切る価格設定でもある。
Sho Tamuraたとえば、330iは258psで、647万円。330iにはスタンダードの設定がなくて、M Sportのみなので、これを320iのM Sport、599万円と較べると、価格差48万円で74psも異なる。つまり、1psあたり、およそ6500円。さらに318iのM Sportとも較べてみると、こちらは156psで559万円だから、330iとは102psも違っていて、価格差88万円。なので、1psあたり、およそ8600円。
ところが、320iと318iの馬力差は、たったの28psで、価格差49万円だから、1psあたり、およそ1万7500円ということになる。
これはなにを意味しているのか? 仮に、1psあたりの価格がもっとも安い320iと330iとのあいだの6500円を320iと318iとのあいだに適用したとすると、320iより49万円お求めやすい318iは、28ps控えめでは計算に合わず、75psも低い109psでなければならないことになる。
320iより最高出力を28ps抑える、ということを優先して、1psあたり6500円で計算すると、318iの価格は320iより18万2000円しか価格差が生じないことになる。
ようするに、3シリーズにおいては1psあたりの価格は比較の対象によって異なるわけですけれど、320iを価格の基準とすると、318iは価格の安さに対して出力低下が少ないという点でコスト・パフォーマンスが高く、高出力を望む330iの購買層にとっては、お値段以上にパワーがものすごく増えているので、たいへんお得であるということができる。
天然自然のよさがある
今回、筆者は318iをテストするにあたって、530i Luxuryから乗り換えた。そのため、318iの長所が砂地に水が染み込むようにスーッと身体に入ってきた。844万円の530iから乗り換えても、ちっとも嫌な感じがしない。価格は半額近いのに、これはこれで1台のスポーティ・セダンとして独自の魅力があるからだ。
Sho Tamura530iは最高出力252psで、車重1690kg。318iはそれぞれ156psと1540kgである。馬力荷重は前者が6.7kg/ps、後者が9.9kg/psという数字を持ち出すまでもなく、318iのほうが遅いことは歴然としている。
ところが、出力、トルクが低い分、山道では思い切りアクセルを踏める。ボディがコンパクトで、車重が軽いことも、心やすく踏めることにつながる。ドライバーとしては“やっている気”になる。満足度が高いのだ。
Sho TamuraSho Tamuraステアリングはややスローな印象を受ける。直前の530iはホイールベースが2975mm、3シリーズのそれは2851mmと124mm短いわけだけれど、530iには4輪操舵システムがついている。なので、530iのほうがクイックなのだ。
記憶のなかの330i M Sportに較べてもスローにすぎる、と感じるのは、M Sportには速度に応じてギア比が変わるバリアブル・スポーツ・ステアリングが付いているからだ。318iにもM Sportの設定があるので、そちらを選ぶのも手ではあるけれど、でも、そうなるとタイヤが18インチの前後異サイズになって乗り心地が硬くなる。価格も559万円に跳ね上がる。なので、早まることなく、ここはじっくりスタンダードの318iのよさを味わいたい。
Sho Tamura318iには、天然自然のよさがある。5シリーズよりボディがコンパクトで車重が150kg軽いということは、パワーが低いときにこそ、メリットとしてわかりやすい。前後重量配分は完璧に50:50である。
たとえば、フロントの荷重は、530iが840kg、318iは770kgで、その差70kg。フロント・アクスルのほぼ内側に搭載されている直列4気筒エンジンは、排気系とターボチャージャーのつくりが異なるとはいえ、基本的におなじだから、70kgの違いはボディ・サイズに起因すると考えられる。いわば、甲冑の大きさと重さの違いなのだ。大きい甲冑と小さい甲冑、どちらが動きやすいかといえば、小さい甲冑でしょう。リアはリアで、318iは530iより80kg軽い。単純にひとと甲冑の関係に当てはめて考えるのも乱暴な話だとしても、小さい甲冑を着ているひとのほうが機敏に動けるにちがいない。
Sho TamuraSho Tamura乗り心地に関しては、硬すぎるという世論の声に応えて、デビュー後、早々に改善を図っているという。加えて筆者がM SportではないG20型3シリーズ初体験ということもあって、適切な比較対象というか、基準の対象が浮かばないのですけれど、ごく大雑把に申し上げれば、意外と柔らかめだ。いわゆる脚がよく動いている。ボディ剛性が高いから、サスペンションをよく動かすことができ、それをショックとして乗員に伝えることをしない。BMWの広報車はM Sportであることが多いので忘れがちだけれど、じつはバイエルン産のスタンダード・モデルの乗り心地は快適方向に振られている。
ただし、試乗した318iは18万7000円の「プラス・パッケージ」というオプションを装着しており、タイヤ&ホイールが1インチアップの17インチ、225/50を履いている。本来は205/60R16である。となると、318iのスタンダード・モデルはこの赤い試乗車以上に乗り心地が快適だと思われる。
Sho TamuraSho Tamura530iから乗り換えると、エンジン音が大きく感じられることも印象的だった。こういうところに3シリーズの入門用モデルと5シリーズの基幹モデルの違いがある。記憶のなかの330i M Sportと較べても、駆動系のスムーズさは330iに軍配が上がる。
燃費重視のターボチャージャーを備える318iの直列4気筒は、直列4気筒らしく、ちょっとばかりガサツなこともまた確かで、しかしそれは若い、未成熟、という魅力を持っているということでもある。お金を積みさえすれば、どんどんよくなる可能性がある。どんどんよくなる可能性しかない。
Sho TamuraSho Tamura入門用モデルとして、じつにバランスがとれている
318iというのは、1杯のかけそばなのである。ダシと麺は名店の味そのもの。「あたしはこのかけそばが大好きなんです」と言い張って、ま、500万円もする高級車ですから当たり前ですけれど、貧乏ったらしくない。それどころか、「わかってるね~」と玄人筋をうならせる、BMWの神髄がつまっている。
その一方で、ちょっとしたスキのようなものがあって、もうちょっと高いキツネとかタヌキ、あるいは月見、かき揚げ、天ぷら、いや、そばがきとか、そば懐石というのはどうなのだろう? というような好奇心をあおるところがある。入門用モデルとして、じつにバランスがとれている。その先、もっと上位のモデルだとどうなるのか、知りたくなるのだ。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamura「御隠居、むかしの318iと較べるとどうなんです?」とたずねる、町内のむかし話好きの若いもんに答えるとすると、たとえば“六本木のカローラ”と呼ばれたE30型318i、あれは黒船だった。トヨタ「マークII」、「クラウン」、ひょっとして当時の本物の「カローラ」と較べても、ゼロヨン加速では劣っていたかもしれないけれど、工作精度も高速スタビリティもレベルが違っていた。それが世界のスタンダードとなったおかげで、マークIIは消え去り、クラウンもいままた危機にある。結局のところ、メルセデス・ベンツ以外の後輪駆動セダンを世界中から駆逐してしまった。
この外装が赤で、内装がベージュの318iなんて、あなたのおふくろさんでも奥さんでも娘さんでも、乗っている姿を想像してごらんなさい。もちろん、あなた自身でもいい。よっ。大統領。にくいよ。似合っちゃうよ。女っぷりも男っぷりも上がっちゃうよ。
いやあ、御隠居。買っちゃおうかな、おれ。
そんなことを妄想させる力が、むかしもいまもBMW318iにはある、と私は思う。
文・今尾直樹 写真・田村翔
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みんなのコメント
まともな自動車評論家なら、言うべきは「318i なんて要らない。ふつうに、その318iの価格で330iを売るべき」だろ。
全く同じ直4エンジンをわざわざコンピュータ劣化チューンして320を作り、更に出力を抑えて318を作って、「これ、お得です!」って、クソすぎる商売。
事実、メイン市場の北米では3シリーズのエントリーグレードは330i、その価格は40,000ドル(約430万円)ぽっちである。