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小さなボディに大きなエンジン アストン マーティンV12ヴァンテージ 全身の感覚が覚醒する 後編

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小さなボディに大きなエンジン アストン マーティンV12ヴァンテージ 全身の感覚が覚醒する 後編

リズミカルにコーナーを縫える

グレートブリテン島中南部、ウォリックシャー州の一般道でアストン マーティンV12ヴァンテージを駆る。3速へシフトアップすれば、フルスロットルを一層不安感なく与えられる。

【画像】小さなボディに大きなエンジン アストン マーティンV12ヴァンテージ 現行モデルも 全124枚

引き締められたサスペンションは、英国郊外のザラついたアスファルトへ追従。リズミカルにコーナーを縫える。

高性能なマシンを直接操っているという感覚に満たされる。しかし57.9kg-mの最大トルクを許容するように、6速MTのシフトレバーの動きは硬い。フライホイールは、時折やや軽すぎるような印象も受ける。

レブリミット付近でのエネルギッシュさには圧倒される。強力なブレーキが、それをほぼ確実に受け止めてくれる。少し気持ちが落ち着くと、V12ヴァンテージのシャシーが、不満ないフィードバックを与えることにも気付くことができた。

2013年にバトンタッチしたV12ヴァンテージ Sには7速セミ・オートマティックが採用され、6速マニュアルを操るような肉体的要求はない。左足で踏むクラッチ・アッセンブリーがなくなったことで、25kgの軽量化にもつながった。

より優れたパワーウエイトレシオは、ブランドにとって重要だと考えられていた。だが、アナログな体験を求める声も存在した。2016年には北米市場向けに100台のみ、1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの7速MTが投入されている。

いつでも臨戦態勢の5.9L V12エンジン

ブラックのボディにイエローのアクセントが映える今回のV12ヴァンテージ Sだが、それはインテリアにも展開されている。アルカンターラ仕上げの彫りの深いバケットシート中央に、イエローのストライプが1本伸びる。

エグゾーストノートは、エッジが効きシャープ。シルバーのV12ヴァンテージのサウンドが、文化的に感じられるほど生々しく勇ましい。

7速セミ・オートマティックは低速域ではややぎこちなく、ゆっくりギアを選ぶ。V12のSは、市街地をこれ見よがしに流すタイプのクルマではない。

大排気量のアストン マーティン製5.9L V型12気筒エンジンは、いつでも臨戦態勢。吸気と排気の両方に新設計の可変バルブタイミング機構が投入され、1000rpmから51.6kg-mという極太のトルクが生み出される。そのたくましさは、回転域を問わない。

V12ヴァンテージで体感できるクルマとの一体感は、V12 Sでは一層濃密。バケットシートを最も低い位置へ固定すると、硬めの乗り心地を通じて路面がより近くに感じる。クイックなレシオが与えられたステアリングホイールは、過敏すぎず適度に重く鋭い。

V型12気筒エンジンの動力性能は野蛮とさえいいたくなるほどだが、奏でられるサウンドは厚みがあり重層的。トップエンド目掛けてドラマチックさも増していく。視界に広がる道路状況が許せば、右足へ力を込めずにいられない。

より完璧な体験としている「S」

ご登場願ったV12ヴァンテージ Sには、当時のパフォーマンス・パッケージにオプション設定されていた、チタン製マニフォールドが組まれている。オリジナルも悪くないが、その金管が生み出す音響はレーシングカー然としていて惚れ惚れする。

実際、アストン マーティン・レーシングはV8ヴァンテージをベースとしたV8ヴァンテージ N24を開発。ニュルブルクリンク24時間レースへ参戦し、クラス優勝を遂げている。

ステアリングホイールの操舵感は一層磨かれ、シャシーは正確性と安定性を大幅に向上。輝きを増した大排気量エンジンとの組み合わせによって、SはV12ヴァンテージの体験をより完璧なものにしている。

セミ・オートマティックは、本域で意欲的に運転すると迅速に次のギアを選ぶ。6速MTの重たいシフトレバーを上下させるより、だいぶ扱いやすい。

ステアリングホイール裏のパドルを弾くだけだから、減速すべきか悩む必要もない。他のヴァンテージに設定されていた6速セミ・オートマティックのように、アクセルレスポンスへ若干の違和感が出ることもない。

防音材が省かれ、温められたピレリ・タイヤが跳ね上げた小石がホイールアーチへ当たる音も僅かに聞こえる。シリアスなモデルであることを、暗に示すように。

アストン マーティンなのに、車外との隔離性が不十分だという批判もなくはないだろう。2013年より現代の方が、それに対する理解は大きいといえるが。

アナログな自動車の最後のモデル

スーパーカーに対する見通しが明るく、自然吸気の大排気量エンジンと油圧アシストが主力だった時代でも、技術はよりベターなクルマを作ることに注がれていた。究極の目標に運転する楽しさが掲げられつつ、同時に上質であることも求められていた。

V12ヴァンテージ Sはレーシングカー未満ではあるが、サーキットへ近い位置にあった。アストン マーティンの熱心な支持者でなければ、理解しにくい存在だったことは事実だろう。

一方のV12ヴァンテージは、過激すぎない内容で訴求力の幅は広かった。スタイリングは伝統的で控えめなグランドツアラーでありながら、極めてエキサイティングな動力性能が与えられていた。

そこへ組み合わされた6速MTは、非常に重要な要素といえた。多くがクラッチを介するATへ移行する中で、オールドスクールな魅力を守り続けたといえる。

V12ヴァンテージを運転すると、ここ10年前後で大きくクルマが変化したことを実感する。進むべき道に迷っていることも。

この時代のアストン マーティンには、伝統的な信念を持つ人が少なくなかったことに、感謝せずにはいられない。アナログな最後のモデルとして、あえて彼らが選んだパッケージングだからこそ、他では得られない喜びを全身で味わうことができるのだ。

協力:アストン マーティン

アストン マーティン V12ヴァンテージとSのスペック

アストン マーティンV12ヴァンテージ(2009~2013年/英国仕様)のスペック

英国価格:13万5000ポンド(新車時)/14万ポンド(約2324万円)以下(現在)
販売台数:1308台
全長:3480mm
全幅:1865mm
全高:1241mm
最高速度:305km/h
0-97km/h加速:4.1秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1680kg
パワートレイン:V型12気筒5935cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:517ps/6500rpm
最大トルク:57.9kg-m/5750rpm
ギアボックス:6速マニュアル

アストン マーティンV12ヴァンテージ S(2013~2018年/英国仕様)のスペック

英国価格:13万8000ポンド(新車時)/14万ポンド(約2324万円)以下(現在)
販売台数:1604台
全長:3480mm
全幅:1865mm
全高:1241mm
最高速度:329km/h
0-97km/h加速:3.7秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1665kg
パワートレイン:V型12気筒5935cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:573ps/6750rpm
最大トルク:65.5kg-m/5750rpm
ギアボックス:7速セミ・オートマティック

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みんなのコメント

1件
  • 全長3480mm? 軽自動車にV12を乗せるとは凄い!
    (4380の間違えでしょうね)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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