2021年は自動二輪乗車中の死傷者数が16年ぶりに増加してしまった。首都高速でもバイクの死傷事故が多発しており、死傷事故件数は前年度と比べ約1.4倍。死亡事故は6倍にまで増加している。
首都高速道路会社に詳細を訊くとともに、事故発生地点を実際にバイクで走ってみた。
首都高のバイク死亡事故が6倍になったのはナゼ? 現場も走って検証してみた
文、写真/沼尾宏明
死亡事故はいずれも側壁等の接触、ほぼ全てカーブ区間で発生した
当webで既報のとおり、2021年は「自動車乗車中」、「歩行中」など多くのカテゴリーで交通事故が大幅減少したが、「自動二輪乗車中」(51cc以上)の死傷者数は前年から236人増の2万3437人に。2005年以来、年々減少していたが、16年ぶりに増加に転じてしまった。
事故増加の実態を探るべく、前回は警察庁からデータを取り寄せ、分析を試みた(詳細は当web『オヤジライダー事故急増の真相は自爆事故!? ワーストは「単独転倒」にあり!』を参照)。
そして今回は首都高速にスポットを当ててみた。首都高でもバイク事故が増加しており、2021年(1~12月)の死傷事故件数は前年度の47件から68件と約1.4倍に。前年度(2021年4月~2022年3月)の死亡事故は前年の1件から6件にまで増加した。
事故が増えた要因をどのように分析しているのか、首都高速道路会社に聞いてみた。回答は「増加した要因は分析中ですが、いずれの事故も側壁等の高速道路施設に接触する形態で、そのうち5件はカーブ区間での事故となっております」とのこと。
二輪死傷事故における第一当事者(事故当事者のうち最も過失の重い者)の年齢層は、「年代別に見ると20代、40代の件数が多くなっております。また、件数は20代、40代ほどではありませんが、50代は総事故に対する死傷事故の割合が約6割と高く、事故が重大化しやすい傾向です」という。
「総事故」とは物損事故と死傷事故を合わせた全ての事故の意。50代はライダー人口が多い上に、それ以下の年代より事故を起こした際のダメージが大きいようだ。
首都高速道路会社は、ポスターやWebでライダーに「事故防止」を呼びかけている。「昨年の5倍」とあるが、これは2021年1~12月の統計で2021年度(2021年4月~2022年3月)比では6倍になる
都内の首都高では新大橋カーブ、西新宿JCTで発生
二輪死亡事が発生した箇所は「主にカーブ区間」(首都高速道路)だという。さらに次の回答が得られた。
「その他の死亡に至らない事故は全線に渡り点在しておりますが、過去データから、比較的に以下の条件で二輪車事故が発生しております。
・急カーブ区間(側壁への衝突)
・JCT分合流部(四輪車との接触)
・トンネル区間の直線部(横転事故)」
なお首都高速では、二輪事故を含めた過去3か年分の事故多発地点と重大事故発生地点(死亡+重症事故)の整理をしており、6月中を目途にHPで公表する予定という。
首都高における2021年度の二輪死亡事発生地点。特定の箇所に集中しているわけではなく、様々な地点で発生しているが、6件中5件がカーブ区間という ※首都高調べ
実際にバイクで走行、確かに回り込んだコーナーではある
都内の首都高で死亡事故が発生した二地点と、過去に事故が起きた箇所を実際にバイクで走ってみた。埼玉方面から中央環状線内回りを起点に、小菅→新大橋カーブ→箱崎→三宅坂JCT→西新宿JCTと、都内をグルリと回ってみる。
まずは事故時発生地点マップにあった小菅JCT周辺。小菅カーブの手前には「減速 カーブ」、バイクの絵が描かれた「危険!! ジグザグ走行」の標識がある。左カーブはさほどきつくなく、すぐ直線区間に移るが、フェンスで先が見えない。また、直後に小菅JCTの分岐があり、事故が発生する可能性はありそうだ。
さらに小菅JCTを越えて6号向島線に入ると、またもブラインドの右カーブ。むしろ、こちらの方が曲がっている区間が長く、ダラダラバンクする必要がある。
小菅カーブ。先が見えない程度の曲率に加え、その先に分岐まであるので要注意。写真下部の緑色は愛車のカウルだ
先が見えず、バンク時間が長い新大橋カーブ
次は、前年度に死亡事故が起きた新大橋カーブ。曲率は不明だが、先が見えにくくやや回り込んだコーナーが200m程度続く。時速60kmで10秒程度は車体をバンクさせていた。オーバースピードならアウト側にふくらんで側壁に接触したり、前方の渋滞などに気付いてブレーキをミスするなどの可能性があるだろう。
なお首都高は高速道路ではないため上限100km/hではなく、都内では上限50~60km/hの区間が多い。
箱崎~江戸橋JCT間も大きなコーナーがある。事故が発生したのは下り線のようだが、慎重に走りたい。
そして千鳥が淵を左手に見ながら千代田トンネルへ。三宅坂JCTを越えて100mもしないうちに左コーナー、直線を挟んでまた左、右と先が見えにくいコーナーがある。ただし曲率はその先の霞ヶ関トンネルの方がきつい。合流とコーナーが連続している箇所は、やはり事故が発生しやすいのだろう。
箱崎JCT手前にある新大橋カーブ。小菅よりは急で、曲がっている区間が200m程度とやや長いが、制限速度内なら特に問題は感じなかった。手前には「死亡事故発生箇所」の看板あり
山手トンネル内の西新宿JCTはゆるやかなカーブだったが……
C1から3号渋谷線に入り、大橋JCT~中央環状線(C2)外回りへ。らせん状の地下道で結ぶ大橋JCTは、これまでで最もキツいコーナーが約800mも続き、最も急な部分の曲線半径はR40。バイクにとって一番の難所と感じた。意外にも前年に二輪事故は発生していないようだが、難所だけにかえって用心して走るのだろうか?
C2外回りの山手トンネルに入り、前年度に都内の首都高で死亡事故が発生した2件目=西新宿JCTに向かう。首都高速によると「西新宿JCT手前本線カーブ部で施設接触の横転事故」だったという。
現場は、初台南出口の先にごくゆるやかな右カーブがあるのみ。事故は起きにくいと感じたが、何らかのアクシデントが発生したのかもしれない。ひとたび壁などに接触すればバイクはひとたまりもなく、トンネル内だけに逃げ場も少ない。
C2外回りの西新宿JCT手前。ゆるやかな右カーブで、その先に分岐がある。ちなみにバイクだと夏場の山手トンネルは異様に暑い!
コーナーでの速度超過と急動作を避けたい
――以上の路線を筆者もたまに走るが、高所恐怖症のせいか、壁が低い高架道路の箇所をバイクで延々と走るのは少々緊張する。そして、事故が起きた地点を意識して走ると、なおさら身が引き締まった。
ただ実際に走ってみて、免許を取得した人が制限速度内で走行すれば、そうそう事故は起きないのでは、とも感じた。もちろんバイクが原因ではなく、周囲の車両に巻き込まれた事故もあると思われる。
とはいえ、オーバースピードで曲がりきれないほどのコーナーはある。また、合流と分岐が複雑なので、首都高に慣れていないライダーが慌てて急動作(急ブレーキ、急な車線変更など)を行い、事故を起こす可能性もあるはずだ。
なお、僭越ながら初心者へのアドバイスをしてみると、バイクは視線を向けた方向に行きやすい。側壁が迫ってきたとしても行きたい方へ顔を向けるのが大事。そして旋回中はリヤブレーキで速度調整するとバランスが崩れにくい。
らせん状のループが続く大橋JCT。下り坂に加え、曲率はR40。写真でもかなり車体がバンクしているのがわかる。制限速度も大橋JCTでは40km/hに制限される
まだ大ゴトになってはいないが、125cc以下の進入もある!
最後に、二輪の死傷事故が増加している件に関して、首都高速道路会社にコメントを聞いた。
「車体に身体が守られていない二輪車の事故は四輪車の事故に比べ死傷事故となりやすい傾向にあります。速度規制に従い安全に走っていただきたいということが一番お伝えしたいことですが、周囲の事故に巻き込まれる可能性もあるので、けがをしない備えも重要と考えています。
そのため、弊社HPや、PA、イベント、二輪用品店、運転免許試験場、教習所等で配布しておりますチラシにて、二輪車を運転する方への注意喚起として、プロテクターの装着をお勧めしております。
また、現在のところ大きな事故は起きていませんが、自動車専用道路である首都高を走行できない125cc以下の原付の立入も散見され、速度差のある車両との接触による事故は死傷事故につながりかねない状況にあります。運転の際はナビの設定、規制標識などを確認いただきたいと思います」
バイク死亡事故の損傷部位は頭部が最も多く、次いで胸部。警察庁でも胸部プロテクターの重要性を指摘していたが、やはり胸を保護するのは重要だ。
そして驚くべきなのは「125cc以下の原付が立入」しているという事態。入口で見落とされたのか、どうやって進入したのか不明だが、絶対にやめていただきたい。
首都高速では同社HP「二輪車の安全走行のために」で、首都高で発生する二輪車事故の特徴や運転する際の注意すべきポイントを掲載。同HP「知れば万全!首都高ドライブ動画(https://search.shutoko.jp/movie/)で、首都高の運転に慣れていない人に対し、安全に走行するヒントを走行映像を使って説明している。
6月に公開が予定される首都高速による事故のまとめとともに、運転が不安な人は参考にしてみてはいかがだろうか。どうか安全に!
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みんなのコメント
実際は、単独事故が多いんだけれどね。
事故を起こしたらモロにダメージを受けてしまうから、そこまでリスクを冒してでもバイクは乗るべきではないね。
40代以上のおじさん世代にとっては、高校のバイク禁止の校則で裁判沙汰になったということを知っている人もいると思うが、そもそも今の若い人たちはバイク離れをしているから、バイク禁止の校則がなかったとしても、底辺高校以外の高校生はわざわざ乗らないだろうね。
すり抜けようとするやつ
技術が無いやつ
増えただけ