ホンダにとって重要なグローバルモデル「シビック」が11代目へとフルモデルチェンジ。快適にして快速、ホンダ車の魅力が凝縮しているシビックで、あえて試してみたマニュアルミッションで感じた極上のテイストとは、どんな感覚だったのか?
敢えての“手間”を選ぶカッコ良さ
【金子浩久のくるまコンシェルジュ】ポルシェ「カイエン クーペ」
富士五湖周辺にあるグランピング施設で過ごしてきた。専用のウッドデッキに置かれた焚き火台では、スタッフが準備してくれた薪がパチパチと音を立てながら燃えている。その横にはリクライニングできるウッドチェアーとブランケット、そしてウッドテーブルには珈琲と共に、お約束の焼きマシュマロまで運ばれてくる。なんとも贅沢というか、果たしてこれをアウトドアと呼んでいいものか? と戸惑うほどの快適な時間や空間と共に、初冬のレイクサイドリゾートを味わてきた。
一方で、どこか居心地の悪さというか、収まりの悪さのようなものを感じていた。こうしていま、キリリと引き締まった冬の空気を感じている場所は、いってみればリゾートホテルのバルコニーの拡大延長したスペースのようなもの。辛くなればいつでも快適な部屋に逃げ込めるのである。そこには、ごくごく普通のキャンプで体験できる“ハードさ”を伴った非日常的な時間がほとんどないのである。
もちろん、グランピングを否定しているのではない。それはちょうど、ロールス・ロイスのドロップヘッドクーペ、ドーンをセレクトすることにも似ている。極上の空間で一瞬だけ、屋根を開け放つ気持ち良さを味わうために、高価で贅沢な選択をする。これとてオープンカーのひとつの楽しみ方である。
この選択の対極にあるのはロータスやケータハムと言ったネイキッドなオープンカー。埃とエンジン音と突き刺すような寒さと共に過ごすには“敢えての不便”を楽しむ覚悟がいる。実のところそのやせ我慢すら、カッコいいとも思うだけの、心のゆとりというか、のりしろ、のようなものが必要である。自己満足に過ぎないと言われればそれまでだが、趣味人であればこそ、少々の批判など意に介さない。それは、可能な限り自然の中でキャンプを楽しむ、ブッシュクラフトにも似ている。そして、個人的にはこちらの方が性に合っている。
そんなブッシュクラフトを楽しむには「よく切れるナイフ」が必須である。ちょうどネイキッドなオープンカーにとっての「マニュアルミッション」のようなものである。スコスコと心地よく決まる操作感とエンジンのトルク感を最高の状況で引き出すミッションは、欠かすことが出来ない必須アイテムなのである。
マニュアルの心地よさを増幅させるもの
良く出来たオートマチックミッションがあれば、もはやマニュアルミッションは不要。特別にクルマ好きとか、こだわりを持たなければ、そんな風に考える人が大勢を占めても仕方ないのが現状だ。とくにグローバルモデルとして台数をこなさなければいけないシビックのようなクルマにとって、マニュアルミッションは“趣味の世界”と言われるかもしれない。そんな事を考えながら、新型シビックのテストで最初に選択したのはCVTミッションではなく、6速のマニュアルミッションだった。
エンジンをスタートさせ、シフトレバーを1速に放り込んでクラッチを繋いだ。その瞬間から、まさにパーキングスピードから、心地よさがどんどん盛り上がっていくのである。1.5リッターターボエンジンは182馬力、最大トルクが240N・mと言うスペック。数値的にはそれほど強烈とは思わないだろうが、マニュアルミッションを介して得られるフィーリングは極上だ。
心地よく決まっていくシフトはどのポジションにあっても、このエンジンパフォーマンスを非常に上手く引き出してくれる。この後にCVTも試したのだが、エンジンのパフォーマンスをいかに心地よく引き出しているか、という点に関してはマニュアルミッションが一枚上手だと感じた。気が付くとあらゆる速度域で、思わずハミングしたくなるほどの気持ち良さを堪能していた。
さらにこのシフト操作の楽しさを増幅させているのが、しなやかなサスペンション。単に足を固めたという味つけではなく、路面を捉えて放さないような、ピタリとトレースするサスセッティングの妙味は、マニュアルミッションとの相性もよく、スポーティで心地いい世界を実現していた。
久し振りに「このまま家に乗って帰りたい」と思えた。それは都内の渋滞をも楽しめそうな出来映えだと言うこと。もし、マニュアルミッションをセレクトする気持ちがあるとすれば、あらゆる状況で十分に心地よさを感じとれるだろうし、もちろん後悔はないと思う。実は、シビックのマニュアルミッション率は3割程度と、比較的高率だった。そして新型も初期はそれ以上の比率だったというが、これはシビックならではの特殊事情かも知れない。
オートマ限定ライセンスがスタートした1991年頃、自動車評論の巨匠、故・徳大寺有恒さんがこんなことを言っていた。「これからはマニュアルがもっとも贅沢でスペシャルな装備になるな」。もはや90%以上のドライバーがオートマチックミッションを選ぶとも言われる現在、徳さんの言葉は現実となっている。さらに、敢えてマニュアルミッションを選択するに値するクルマが、ちゃんと今も用意されていることは、幸福なことだと思う。
4ドアクーペとも言えるボディはアルミ材や高張力鋼板を積極的に採用して、軽量化と高剛性を達成している。
シンプルなラインで構成され、スッキリとした印象のインパネ。
シフトストロークが適正でスパスパっと心地いい操作感をシフトが決まる。このフィールもシビックMTの魅力だ。
ホールド性と座り心地のいいシートがマニュアルミッションの軽快な走りを支えてくれる
スムーズのフケ上がる1.5ℓエンジンのフィーリングは、マニュアルミッションとの相性がいい。
マニュアル操作を楽しくしてくれるタコメーター、そして速度計というオースドックスな表示も出来る10.2インチのフルグラフィックメーター。多彩な表示レイアウトの変更が可能。
リアハッチを跳ね上げるとスクエアで広々とした荷室が出現。開口部も大きく実用性は高い。
(価格)
3,539,800円(EX/税込み)
SPECIFICATIONS
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,550×1,800×1,415mm
車重:1,340kg
駆動方式:FF
トランスミッション:6速MT
エンジン:直列4気筒DOHCターボ 1496cc
最高出力:134kw(182PS)/6,000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1,700~4,500rpm
問い合わせ先:ホンダ:0120-112-010
TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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