今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は「ホンダ CB400FOUR」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:アゲイン
―― 【取材協力:アゲイン】’90年から活動を開始したアゲインは、中古車販売やメンテナンス、レストア、カスタムだけではなく、多種多様なリプロ/オリジナルパーツの開発も手がける、CB400フォア専門店。レース参戦にも積極的で、筑波サーキットで開催されるT.O.T.では、同店がチューニングを手がけたCBフォアが何度も優勝を飾っている。 ■大阪府大阪狭山市東野中3-324-3 ●電話番号:072-368-3544 [写真タップで拡大]
中古車を購入する際はエンジン下部を要確認
旧車のトラブルと言ったら、エンジンからのオイル漏れ、キャブレターと点火系の不調、ハンドリングの違和感などが定番である。事実、松永さんによると、アゲインを新規で訪れるCB400フォアオーナーの多くも、そういった問題に悩まされているらしい。
「オイル漏れは各部の経年変化を考えれば当然ですが、エンジンをOHしたのに漏れる場合は、ヘッドガスケットの品質の問題かもしれません。キャブに関しては、当時のホンダ用のケーヒンは構造が非常に複雑なので、ある程度の知識がないと、本調子を出すのは難しいと思いますよ。点火系にそういった複雑さはないですが、ポイントの劣化や日本電装とミツバ製の混同で調子を崩しているケースはあります。ハンドリングについては、各部のベアリングとブッシュ、リヤショックなどの劣化が原因というケースが多いですが、ごくたまに、フレームのメインパイプが変形している個体がありますね」
旧車の定番以外では、クランクケース前部のカムチェーンテンショナーセッティングボルト周辺と下部のオイルラインの破損が、CB400フォア特有の問題が起こりやすい箇所のようだ。
「どちらも原因は前作業者のミスで、クランクケース下部のオイルラインの破損は、エンジンガード装着時の長いボルトをそのまま使った結果です。いずれもきちんと修理するにはエンジンの脱着が必要になるので、これからCB400フォアを購入する人は、その2点を確認したほうがいいでしょう」
ホンダ CB400FOUR メンテナンスポイント
◆キャブレター:気化器の状況でフィーリングは大きく変わる
―― 専用設計のケーヒンPW20キャブレターは、上部のリンク周辺の構造がかなり複雑。一般的なオーバーホールと同調作業だけでは、本来の性能を回復するのは難しいようだ。 [写真タップで拡大]
―― ボディのダメージが激しい場合やレスポンス向上を求めるユーザーには、ケーヒンFCR28を推奨。ボアアップで吸入負圧を高めたエンジンなら、昔ながらのCR28も選択可。 [写真タップで拡大]
―― アゲインでは、純正キャブレター用補修部品のすべてを準備している。オーバーホール用フルセットの価格は3万8000円で、ジェットニードル&ホルダーのセットは1万5400円。 [写真タップで拡大]
◆ヘッドガスケット:最新の技術を用いて圧縮漏れを回避
―― 近年のシリンダー上下の純正ガスケットは、耐久性がいまひとつになっているため、アゲインではヘッド用のスチール製:8800円とベース用のアルミ製:3300円を独自に準備。この2種を加えたパッキン&シールセットも販売している。 [写真タップで拡大]
◆オイルクーラー:冷却効率を高めることでエンジンの寿命は確実に伸びる
―― ’70年代とはまったく異なる現代の交通事情を考慮して、同店では油温を適正に保つオイルクーラーの装着を推奨している。取り出し用のアダプターやホースを含んでのキット価格は5万5000円。また、オイルパンが破損しているエンジンには、マグネットドレンボルト付きのレプリカ:3万8500円で対処。 [写真タップで拡大]
◆エキゾーストシステム:根強い人気を維持する手曲げタイプの集合マフラー
―― 純正マフラーの評価が高いCB400フォアだが、昔ながらの手曲げタイプも根強い人気を維持している。アゲイン製は現在販売を中止しているが、近日中にスチール製ブラック塗装/スチール製メッキ仕上げの生産を再開する予定。社外マフラー用として、“逃げ”を設けたセンタースタンドは2万2000円。 [写真タップで拡大]
◆プライマリーチェーン&ダンパー:CBフォア系に共通する駆動系の消耗パーツ
―― CBフォア系のエンジンをオーバーホールする際は、プライマリーチェーンとプライマリーシャフト内に収まるダンパーラバーも、必ず新品に交換したい。この2点が経年変化で劣化すると、アイドリング時にゴトゴトという騒音が発生。 [写真タップで拡大]
◆カムチェーンテンショナー:粗雑な調整作業でネジ山が破損する
―― クランクケース前部に備わるカムチェーンテンショナーセッティングボルト周辺は、ネジ山が破損しているケースが非常に多い。同店が開発した削り出しのテンショナーアームは2万2000円で、強化カムチェーンは8690円。 [写真タップで拡大]
◆クラッチ:独自のキットの目的は容量拡大と操作力軽減
―― クラッチは一般的なオーバーホールが可能だが、アゲインでは強化キットやスリッパータイプ、ラック&ピニオン式などを準備。写真の8ディスクキットは、当たり面積を18%拡大することで、操作力を13%軽減。価格は4万5100円。 [写真タップで拡大]
◆トランスミッション:補修部品としても使えるクロスレシオのキット
―― 弱点と言うほどではないものの、ミッション関連部品では、カウンターシャフトと2速ギアに焼きつきが発生することがある。写真は1~3速のギア比を改めた、アゲインオリジナルのクロスミッションセット:9万3500円。 [写真タップで拡大]
◆スプロケット:マニア心をくすぐる純正タイプの520
―― CB400フォアの純正チェーン+スプロケットサイズは530だが、同店では520化を推奨。リヤスプロケットは、アフターマーケット然とした雰囲気のゴールドとシルバーに加えて、純正タイプの38T:1万3200円が存在する。 [写真タップで拡大]
◆シフトシャフトガイド:追加装備することで2つの美点を獲得
―― カスタムパラノイアが開発したシフトシャフトオイルシールストッパーは、オイルシールの抜け防止に加えて、シフトフィーリングの向上にも貢献する。削り出しボディの内部に、支持剛性を高めるニードルベアリングを装備している。 [写真タップで拡大]
◆フロントブレーキ:制動力強化の手法には数多くの選択肢が存在
―― 制動力を高めるパーツとして、アゲインでは純正タイプのWディスクキット/大径ローター/写真のブレンボキャリパーキット:9万3500円~などを準備。リプレイス品として、純正を再現したキャリパーやディスク、ホースも存在。 [写真タップで拡大]
◆リヤショック:純正然としたIKONと現代的な構成のYSS
―― アゲインの定番リヤショックは、ノーマルに通じるルックスのIKON:5万3900/6万4900円(左)と、現代的な構成のYSS:7万1500円(右)。ただし、調整機構がプリロードのみの純正レプリカ:2万2000円も準備。 [写真タップで拡大]
◆フレーム:転倒や衝突の痕跡を目視と触感で確認
―― 細身のシートレールは、軽度の転倒でも曲がりやすい。燃料タンクの脱着時に妙な抵抗を感じる場合は、メインパイプが変形している可能性があるそうだ。なおシートに関して、同店では純正レプリカを筆頭とする6種類を販売。 [写真タップで拡大]
◆スイングアーム:ブッシュの状況次第で高速安定性が激変
―― スイングアームの支持はブッシュ式で、同店ではアフターマーケット製の強化タイプ:6600円を使用することが多い。センタースタンドをかけ、リヤタイヤを手で持って左右方向に力を入れ、明らかなガタを感じるようなら要交換。 [写真タップで拡大]
◆エンジンマウント:ロングタイプのボルトがオイルラインにメリ込む?
―― CB400フォアにエンジンガードを装着する際は、下側マウントボルトをロングタイプに変更する。その事実を忘れてエンジンガードを外し、左側のロングタイプのボルトを締め込むと、オイルラインにメリ込むことがあるそうだ。 [写真タップで拡大]
◆スパークユニット:現代の点火ユニットで強力な火花を実現
―― 点火方式に関しては、ノーマルのポイント式にこだわる人もいるけれど、同店ではASウオタニのフルパワーキット:9万750円を用いたフルトラ化を推奨。予算的に厳しい場合は、ダイナS:3万5200円という選択肢もある。 [写真タップで拡大]
◆ヒューズ:ブレーカータイプのスイッチ式が人気
―― ガラス管タイプの純正ヒューズボックスは、現在でも入手することが可能。ただしアゲインでは、ブレーカータイプのスイッチ式:1万2100円を選択するユーザーが多い。ノーマルと同じ場所に、カプラーオンで装着できる。 [写真タップで拡大]
◆ジェネレーター:ノーマルとは異なる方式で安定した電力を確保する
―― 純正ステーター/フィードコイルのリビルドで、充電系は本来の資質が回復できる。ただし、電熱ウェアやスマホなどの使用を考慮して、同店は現代的なジェネレーターを用いたダイナモカバーセット:8万9100円を開発。 [写真タップで拡大]
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