フラッグシップらしく洗練され快適
アウディのフラッグシップ・サルーン、A8。インゴルシュタットのモデルらしく、2017年に発売された4代目も、不足ない完成度を今も湛えている。
【画像】小変更 アウディA8 L 欧州での競合ラグジュアリー・サルーンと写真で比較 全159枚
A8が属する市場は本来大きいものではなく、近年は縮小傾向にある。その主役は、メルセデス・ベンツSクラスが長年担ってきた。それでも、自慢の技術をいち早くユーザーへ届ける、自動車メーカーにとって重要なセグメントでもある。
フラッグシップ・サルーンで試される技術には、モデルの威信や売れ行き以上の意味を持つ。ブランド全体の評判にも、影響を及ぼすといえる。
マイナーチェンジを受けたA8には、目新しい最新テクノロジーは搭載されなかった。ダッシュボードの巨大なモニターを売りにするSクラスが、市場に投入されたタイミングではあるが。
次期BMW 7シリーズの発売も近い。更に、純EVのメルセデス・ベンツEQSとBMW i7も、A8との戦いに加わる。
A8には、新しいフロントグリルとヘッドライトが与えられた。トリムグレードが見直され、3.0L V6ディーゼルターボもラインナップする。
華々しいテクノロジーの一覧はないかもしれない。それでも、A8はアウディのフラッグシップとして洗練され、非常に快適。今回試乗したA8 L 50 TDIクアトロは特に、フロントシートで運転するのも、リアシートでくつろぐのも良い。
上質なディーゼルターボとインテリア
その優れた印象を生み出している立役者が、ディーゼルターボ・エンジン。これまでにアウディが生み出したなかで、最も静かなユニットとして数えられる。ラグジュアリーなA8にもピッタリ。たくましく、おとなしい。
質感は、超がつくほど磨かれている。現実世界では不満を感じないほど、パワーもトルクもある。さらに、滑らかな8速ATとのマッチングも良い。安楽なまま、満ち足りた移動に浸れる。
燃費も苦労なく14.0km/Lは出せる。ディーゼルターボならではだ。
それ以外も素晴らしい。滑らかな高速道路を走らせれば、有能なエンジンと組み合わさり、トップクラスの快適性を味わわせてくれる。快適なドライバーズシートを体験すれば、ほかのモデルへ乗り換えたいとは思わないかもしれない。
ただし、管理の良くない英国の一般道では、衝撃吸収に陰りが出る。サスペンションが受け止めきれず、キャビンに振動やノイズが届くこともある。
これは、マイナーチェンジ前からA8の数少ない弱点だった。アダプティプ・エアサスペンションと、バリアブル・ダンパーが標準装備となった今でも、完全には改善していない。とても惜しい。
アウディA8は、ドライバーの脈拍を下げてくれるサルーンだ。操縦性は、落ち着きのある精度の高さへフォーカスされている。ステアリングホイールの感触も同様。心地よく穏やかに走り回れる。ゆったりと、設えの良いインテリアを楽しみながら。
新しいライバルが目指す水準の高さ
インフォテインメント・システムのグラフィックは、トップクラスに鮮明。ショートカットやメニュー・オプションもふんだん。車載機能は操作しやすい。快適なフロントやリアのシートに、身を委ねるのと同じくらい。
ただし、筆者はタッチモニターのクリック感が不自然に思えた。光沢のある黒いトリムパネルは、指紋が目立つのも気になった。
現在では、ライバルモデルの方が登場年は新しく、電子技術も多く搭載されている。快適性も、一層磨きをかけてきている。それでもアウディA8は、まだ不足ない訴求力を備えたラグジュアリー・サルーンだと思う。
このセグメントの戦いは激しい。2022年では、5年前のアウディのベストは物足りないかもしれない。だがそれば、お互いが目指す水準が極めて高いという表れでもある。
アウディA8 L 50 TDIクアトロ・スポーツ(英国仕様)のスペック
英国価格:7万8985ポンド(約1263万円)
全長:5320mm
全幅:1945mm
全高:1488mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.9秒
燃費:15.2-15.7km/L
CO2排出量:184g/km
車両重量:2120kg
パワートレイン:V型6気筒2967ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:286ps/3750-4000rpm
最大トルク:61.1kg-m/1250-3250rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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みんなのコメント
落ち着きのあるフラッグシップって減ったよね。