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「最新ボルボ XC40リチャージとドイツ、アメリカのピュアEVの実力を見る」ボルボ XC40リチャージ/メルセデスEQ EQB/テスラ モデル3

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「最新ボルボ XC40リチャージとドイツ、アメリカのピュアEVの実力を見る」ボルボ XC40リチャージ/メルセデスEQ EQB/テスラ モデル3

性能向上やラインナップ拡充など着々と進化を図るボルボのBEV。そのBEVの最新モデルであるXC40リチャージのライバルとも言える国も個性も異なるBEVモデル3台を乗り比べ、そのキャラクターの違いを探る。(Motor Magazine2022年12月号より)

2モーター仕様の4WDの3モデルを集めてみた
本誌6月号に掲載されたC40リチャージ比較テストの冒頭で、私は日本のBEVV市場で輸入車が果たす重要性について触れた。なにしろ、2020年から21年にかけて増えたBEV販売台数のおよそ9割は輸入車によって占められていたのだ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

22年に入ってからも輸入BEVのモデル数は順調に増え続けているので、日本のユーザーに多彩な選択肢を提供するという重要性はいまもまったく変わっていないことになる。

これを裏付けるかのように、ボルボはC40に加えてXC40のBEVを日本市場に投入。さらにはメルセデス・ベンツも、人気モデルのGLBをBEVに仕立てたEQBを発売し、既存のEQAと合わせて日本のCセグメントBEV市場に挑む姿勢を鮮明にしている。

そこで、CセグメントBEVの世界的ベストセラーであるテスラ モデル3とともに試乗比較を行い、XC40リチャージのポジションを明らかにしてみたい。

まず、モデル3はロングレンジのAWDをピックアップした。モーターを前後に搭載して最高出力440psと最大トルク493Nmを発生。最高速度233km/h、0→100km/h加速4.4秒のハイパフォーマンスモデルだ。

バッテリー容量は未公表ながら航続距離(WLTCモード、以下同様)689kmを達成。急速充電はCHAdeMOに加えてテスラ独自のスーパーチャージャーが使えるのが特徴で、その場合は最大250kWまで対応可能となる。

価格は一時400万円台~まで下がったものの、22年に入ってからは値上げを繰り返し、今回の試乗車は709万1000円となる。

そして、今年7月に発売されたEQBは、同じく2モーター仕様で4WDの350 4マティックを選んだ。最高出力292ps、最大トルク520Nmで、ドイツ本国では0→100km/h加速が6.2秒、最高速度は160km
/h(リミッター作動)と発表されている。バッテリー容量は66.5kWhながら468kmの航続距離を実現。価格は906万円である。

XC40リチャージ アルティメットツインモーターも2モーターの4WD。408psの最高出力はモデル3に匹敵し、660Nmと、ハイパフォーマンスぶりを誇る。0→100km/h加速も4.9秒でモデル3に肉薄するが、最高速度は「ボルボルール」により180km/hに規制される。バッテリー容量は78kWhと大きく、航続距離は484kmを実現する。価格は679万円で、3台中もっとも手ごろな価格のモデルだ。

軽量ボディを生かした走りは、痛快無比
テスラモデル3は、スペックに表れているとおり走りもスポーティ。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に加速し始める軽快さは、車重が1850kgもあることが信じられないほど。もっとも、CセグメントのBEVとしてこの車重は例外的に軽く、他の2台を300kgほども下回っている。

ハンドリングも同様に軽快そのもの。しかも、前後のトルク配分制御が巧妙で、コーナリングでア
クセルペダルを緩めればノーズは自然とイン側を向いていく。リアのスタビリティも良好だから、ド
ライバーは安心してワインディングロードを堪能できるだろう。

その代償として乗り心地は硬め。タイヤが路面をはじき返すような印象は薄れたものの、市街地走行では減衰力が高そうな「ドシン、ドシン」というショックが伝わる。サスペンションストロークが限られているのか、コーナリング中に路面のギャップに出くわすと瞬間的にグリップが抜ける傾向があるのも弱点のひとつだ。

シンプルの極みというべきインテリアデザインは相変わらず。運転に常時必要な操作系はハンドルのコラム部から生えた2本のレバーで操作するため不自由はないが、慣れないと「ドアミラーはどうやって調整するんだっけ?」と束の間、悩んでしまうのも事実。

ただし、キャビンのデザイン性や質感は悪くないし、居住スペース、荷室容量ともに不満はなく、実用性は十分に高いといえる。
 

個性の違うBEV3台それぞれの走りと特徴
EQBは、そんなモデル3と正反対のキャラクターに思えた。まずは発進時の反応が穏やかで、モデル3のように「いかにもBEV」といった風情を示すことがない。むしろ、できるだけエンジン車に近い感触を狙ったとさえ思えるほど。それでも520Nmの大トルクは伊達ではなく、車速の上昇に伴って加速感も強まっていくように感じられる。

アクセルペダルのコントロール性も高く、ペダルから足を離すと絶妙な間合いをおいてから減速度が立ち上がり、車速の低下とともに回生ブレーキの利きが穏やかに強まっていく。これもまた、エンジン車から乗り換えてもほとんど違和感を覚えない点だろう。

乗り心地は全般的にソフト傾向。長めのサスペンションストロークを利用して、路面からのショックをゆったりと受け止めてくれるソフトな足まわりだ。

だが、コーナリング性能ではこれが災いする。足まわりがソフトなので必然的にロールは深く、その姿勢変化の大きさから一定以上のペースで走ると自然とアクセルペダルを緩めたくなる。ステアリングレスポンスも、モデル3に比べれば明らかに「おっとり」している。ただし、タイヤのグリップ限界に近づくと、緻密な制御のスタビリティコントロールがドライバーに気づかれないように作動し、安定した姿勢を保ってくれるので心配は無用だ。

全高が1705mmと高く、ボクシーなスタイリングのEQBはスペースユーティリティも高く、3台中、唯一3シートを装備して7名乗車を可能にしている。この辺がEQBのキャラクターを象徴しているともいえるだろう。

歴史ある自動車メーカーのBEV 作りのバランス感覚
XC40リチャージ ツインは、見事にこの2台の中間に位置している。いや、2台の長所を兼ね備えた仕上がりといったほうが正しいかもしれない。

発進時は、EQBに似た穏やかさを残しつつ、その気になればモデル3並みのダッシュ力を発揮させることも可能。ペダル操作に対するモーターの出力変化が初期型C40 リチャージよりマイルドになったことも、XC40の美点だ。

一般道での乗り心地がデビュー当時のC40より大幅に洗練されたことも印象的だった。初期型C40に限らず、CMAプラットフォームを用いたボルボに共通の「足まわりが突っ張った」印象が薄れ、車重の軽さもあってか、力強い加速と軽快なハンドリングを実現する。

柔軟に路面に追従するようになったのだ。これが荒れた路面やワインディングロードでのロードホー
ルディング向上に役立つことはいうまでもない。

その一方で、ロールやピッチといった操縦性に大きくかかわるボディの動きはしっかり抑えてくれるので、ワインディングロードを走っていてもストレスを感じにくい。この辺の柔軟性としっかり感のバランスが、ライバルに対するXC40リチャー ジツインの最大の強みといっていいだろう。

さらにシングルモーターは軽快なキャラクターだが、ツインモーターと同様の装備を備え、100万円ほど低価格なのも魅力的である。

BEVであるからには、先進性を強調したいが、歴史ある自動車メーカーとしては、既存の顧客を戸惑わせるわけにもいかない。ボルボのBEV作りはこのバランス取りに苦心したのではないか。

そうしたなか、やや先進性に振れていた初期型C40に対し、XC40リチャージでは「ボルボBEVのあるべき姿」がようやく見つかったような気がする。XC40リチャージは、BEV作りに取り組む多くの自動車メーカーにとって示唆に富んだ製品といえそうだ。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

■テスラ モデル3 ロングレンジ主要諸元
●全長×全幅×全高:4694×1849×1443mm
●ホイールベース:2875mm
●車両重量:1850kg
●モーター:前・交流誘導電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:324kW(440ps)
●モーター最大トルク:493Nm
●バッテリー総電力量:-
●WLTCモード航続距離:689km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):709万1000円

■メルセデス EQ EQB 350 4マティック主要諸元
●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
●ホイールベース:2830mm
●車両重量:2160kg
●モーター:前・交流誘導電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:前143kW(194ps)/5800-7600rpm、後72kW(98ps)/4500-14100rpm
●モーター最大トルク:前370Nm/0-3600rpm、後150Nm/0-4500rpm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモード航続距離:468km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/55R18
●車両価格(税込):906万円

■ボルボ XC40リチャージ アルティメット ツインモーター主要諸元
●全長×全幅×全高:4440×1875×1650mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:2150kg
●モーター:前・交流同期電動機、後・交流同期電動機
●モーター最高出力:前150kW(204ps)/4350-760013900rpm、後150kW(204ps)/4350-13900rpm
●モーター最大トルク:前330Nm/0-4350rpm、後330Nm/0-4350rpm
●バッテリー総電力量:78kWh
●WLTCモード航続距離:484km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前235/45R20、後255/40R20
●車両価格(税込):679万円

[ アルバム : 最新ボルボ XC40リチャージとドイツ、アメリカのピュアEVの実力を見る はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Motor Magazine編集部
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