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クルマ好きにとって「大きな瞬間」 ジャガーFタイプ クーペボディとのお別れ 長期テスト(最終)

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クルマ好きにとって「大きな瞬間」 ジャガーFタイプ クーペボディとのお別れ 長期テスト(最終)

積算1万1168km エンジンの生産が永久に止まるジャガー

AUTOCARでは、多くのモデルの長期テストを実施してきた。一定の期間が過ぎれば、次のモデルへ交代する。お別れはつきものだ。しかし、今回ばかりは特別だ。

【画像】伝統の内燃スポーツへ「終止符」 ジャガーFタイプ EタイプとバッテリーEVのIペイスも 全134枚

筆者の自宅前から姿を消した大きなクーペは、新車では二度と購入できなくなった、ジャガーの1つの時代を象徴したモデルだった。内燃エンジンの生産を永久に止めてしまうブランドの、最後の1台なのだから。

これほど大きな節目を刻むモデルになると、ロードノイズの大きさやグローブボックスの建て付けの悪さなどは、気にならなくなる。もはや新鮮な状態では味わえない、特別なV8エンジンとパワートレイン・レイアウト、スタイリングへ気持ちは向かう。

ジャガーの5.0L V8エンジンは、大きなクーペを3.5秒で100km/hまで加速させる、スムーズでパワフルな動力源だった。最高速度は、299km/hに達した。

バッテリーEVなら、英国では2万5000ポンド(約480万円)で売られているテスラの中古車でも、それに匹敵する加速力が得られる。とはいえ、そこで享受できる体験はまったく異なる。

エグゾーストノートは、デフォルトでは控えめ。しかしボタン1つで、勇ましいサウンドへ切り替わる。右足へ力を込め、回転数を上昇させれば、極上の音響体験が始まる。Fタイプのすべてを解き放つには、サーキットが必要ではあるけれど。

ロングノーズのクーペボディとのお別れ

FRのシャシーも、ジャガー最高傑作の1つ。最近引退した技術者、マイク・クロス氏の遺作として相応しい。大きなタイヤを受け止め、英国の一般道で不足ない仕事を披露する。

8速オートマティックも素晴らしい。71.2kg-mもの最大トルクを路面へ緻密に展開しつつ、しっかり滑らかだ。

バッテリーEVなら、かさばるトランスミッションもエグゾーストシステムも不要になる。だからこそFタイプは、少々クラシカルな雰囲気を漂わせつつ、何度でも繰り返し堪能したい趣を持っている。

さらに、ロングノーズ・ショートデッキ、ロー・プロポーションという、クーペボディとのお別れは一層寂しい。ドライビングポジションは、お尻が路面へ付くのではないかと思うほど低い。ステアリングホイールの上からは、マッシブなボンネットが見える。

走り出すとノーズヘビーだが、直進安定性はレーザーのよう。低く滑らかなサイドビューのシルエットも、極めてジャガーらしい。

動力源が電気モーターになると、長いボンネットは必要なくなる。駆動用バッテリーはフロア下に並べられるため、スポーツカーという設定でも、ドライビングポジションはFタイプより90mm前後高くなるだろう。ブランドの特徴は、失われてしまう。

クルマ好きにとっても大きな瞬間

まあ、Fタイプは完璧な内燃エンジンモデルというわけではなかった。筆者好みのシートポジションへ設定すると、フロントガラス両脇の太いピラーが視界を遮った。交差点では、身を乗り出さないわけにはいかなかった。

パッケージングも理想的ではなく、2シーターのクーペとしては、車重が1780kgと重かった。とはいえ、同等のバッテリーEVなら、500kg前後は更に重くなるはずだが。

2025年以降に向けて、ジャガーは展開を明らかにしている。広告などには、期待をもたせるような表現も見られるが、ほぼ確実にスポーツカーはラインナップへ加わらないだろう。短期的に、ではなく。

ジャガーにとって、大きな瞬間が来ようとしている。クルマ好きにとっても。

それでも、別れを嘆いているだけではAUTOCARらしくない。英国の中古車市場を検索すれば、V8エンジンを載せた走行距離の浅いFタイプが、40台前後売られている。価格は、安いものなら8万ポンド(約1536万円)から。今なら値引きも効くようだ。

Fタイプのようなクルマは、頻繁に乗られる種類ではない。まだ数年間は、良好な状態の例を探せるはず。象徴的なモデルが再び登場することを期待しつつ、大切に乗りながら、その日を待つしかないだろう。

セカンドオピニオン

こんなクルマが、ショールームから消えてしまうことが信じがたい。動的特性へ細心の注意が払われ開発された、Fタイプ Rは素晴らしかった。道や速度を問わず、楽しむことができた。

時代を代表する1台といっていい。中古車の人気も、これから上昇していくに違いない。 マーク・ティショー(Mark Tisshaw)

テストデータ

気に入っているトコロ

刺激的なレイアウト:ロングノーズの2シータークーペこそ、スポーツ・グランドツアラーを体現したもの。将来のジャガーには、存在しないであろう種類だ。
目の覚めるパワートレイン:大排気量で滑らかなV8エンジンが、圧巻の速さと一体感を提供する。8速ATも素晴らしい。
類まれなスタイリング:ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを持ち、非常に美しい。
長距離での快適性:ロードノイズを除いて、欧州横断に求められるすべてを備えている。

気に入らないトコロ

ロードノイズ:大径のタイヤとボックスセクション・ボディの影響で、走行音はうるさかった。他メーカーの設計なら、こうはならないだろう。

走行距離

テスト開始時積算距離:704km
テスト終了時積算距離:1万1168km

価格

モデル名:ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)
開始時の価格:10万3075ポンド(約1979万円)
現行の価格:10万7155ポンド(約2057万円/(R75 プラス)
テスト車の価格:11万1000ポンド(約2131万円)

オプション装備

20インチ 5スプリットスポーク・アルミホイール :2000ポンド(約38万4000円)
カルパチアン・グレー塗装:1335ポンド(約25万6000円)
パノラミック・ガラスルーフ:1335ポンド(約25万6000円)
エクステンデッド・レザーシート:1055ポンド(約20万3000円)
クライメート・パッケージ:685ポンド(約13万2000円)
盗難防止トラッカー:545ポンド(約10万5000円)
ブラインドスポット:アシスト:500ポンド(約9万6000円)
ドライバーアシスト・パッケージ:470ポンド(約9万円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:9.6km/L
タンク容量:70.0L
平均燃費:9.4km/L
最高燃費:11.4km/L
最低燃費:5.8km/L
航続可能距離:659km

主要諸元

全長:4470mm
全幅:1923mm
全高:1311mm
最高速度:299km/h
0-100km/h加速:3.5秒
乾燥重量:1743kg
パワートレイン:V型8気筒5000cc スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:575ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
トランク容量:509L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:255/35 ZR20(フロント)/295/30 ZR20(リア)
車両重量:1780kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:1390ポンド(約26万9000円/月)
CO2 排出量:239g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン)
燃料含めたランニングコスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン)
1マイル当りコスト:0.26ポンド(約50円)
不具合:なし

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