軽快な走りで快適性も十二分、気軽に付き合えるZ4はこれだ!
昨年のパリ・モーターショーでワールドプレミアを果たし、今年3月には日本市場での販売もスタートした3代目Z4。3L直6ターボを積むトップモデルのZ4 M40iについては、ネット上にも試乗記が溢れているが、4気筒モデルはなかなか試乗の機会に恵まれない。そこでBMWのお膝元であるミュンヘンでクルマを借り出し、ニュルブルクリンクとの往復を含む、1000kmを超えるロングドライブに連れ出した。
ドイツ・ミュンヘン郊外のBMWプレスサービスで受け取ったのはZ4 sDrive20i。開発コード「G29」の新型モデルには、共同開発したトヨタGRスープラと同様、3L直6ターボのほかに2種類の2L直4過給ユニットが用意されているが、今回借り出したZ4 sDrive20iは、197psと320Nmを発揮する“スペックが低い方”を搭載した日本仕様と同じグレードである。
せっかくならGRスープラに未設定の6速MT仕様に乗ってみたかったが、テスト車は8速スポーツATの「SPORT Line」で、アダプティブLEDヘッドライトやヘッドアップディスプレイ、BMWライブコクピット・コネクテッドドライブ、さらにはドライビング・アシスタンスなど、あらゆるオプション装備が奢られ、ベースの車両価格3万9950ユーロ(約480万円)のところが、オプション込みで5万9710ユーロ(720万円)にまで膨らんでいた。
シャシー関係では、アダプティブMサスペンションをオプション装着していたが、Mスポーツディファレンシャルは未装備、タイヤは前225/40ZR18、後255/40ZR18サイズのミシュラン・パイロット・スーパースポーツだ。どんな走りを見せてくれるのか、大いに期待して24時間レース会場のニュルブルクリンクへと向かった。
走り出してまず感じた、とてもしなやかな乗り味はアダプティブMサスペンションを装着していることもあるが、オープンボディでありながら剛性感の低さや不快な振動をまったく感じさせない、堅牢なボディのおかげだろう。ベーシックモデルだからといって手抜きは感じられない。
アウトバーンでのドライブはとても快適だ。130km/h前後で流していても、200km/hオーバーの超高速走行でも、ハンドリングは一貫して正確で、超高速域からフルブレーキングを試みても、電制ディファレンシャルが未装着であるにもかかわらず、挙動はとても安定していた。
この直列4気筒直噴ターボは、特にパワフルというわけではないが、十二分に走りが楽しめる加速力を備え、そして扱い易い。アップダウンが激しくハイスピードコーナーが連続するニュルブルクリンク周辺のワインディングロードでも、非力に感じることはなく、むしろノーズの軽さに由来する俊敏なコーナリングの気持ちよさに思わず頬が緩んだ。絶対的な速さ以上に価値がある「愉しさ」が感じられたのである。
3L直列6気筒ターボで340psと500Nmを発揮するトップモデルは間違いなくパワフルだし、ストレート6の滑らかな吹け上がりやスパルタンで濃密なドライビングフィールがとても魅力的だ。一方で、パワーはそこそこだけど、走りが軽快で快適性も高く、プレミアムカーとしての上質感を備え、「いいクルマ」感に溢れたこのエントリーグレード。非日常感はやや薄れるものの、気軽に付き合える相棒として正直かなり心惹かれた。そういう意味でも、Z4 sDrive20iは決して廉価版ではない。積極的に選ぶ価値がある1台だといえる。
【Specification】BMW Z4 sDrive20i Sport
■全長×全幅×全高=4335×1865×1305mm
■ホイールベース=2470mm
■トレッド(前/後)=1615/1610mm
■車両重量=1490kg
■最小回転半径=5.2m
■乗車定員=2名
■エンジン型式/種類=B48B20B/直4DOHC 16V+ターボ
■内径/行径=82.0×94.6mm
■総排気量=1998cc
■圧縮比=10.2
■最高出力=197ps(145kw)/4500rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1450-4200rpm
■燃料タンク容量=52L(プレミアム)
■燃費(JC08/WLTC)=14.9/12.6
■トランスミッション形式=8速AT
■変速比=(1)5.250(2)3.360(3)2.172(4)1.720 (5)1.316(6)1.000(7)0.822(8)0.640 (R)3.712 (F)3.154
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後 5リンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前225/40ZR18(8J)、後255/40ZR18(9J)
■車両本体価格(税込)=6,150,000円
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