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マニア心を刺激する魅力 アルファ・ロメオ2000 スプリント ブリストル406 不遇のクーペ 前編

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マニア心を刺激する魅力 アルファ・ロメオ2000 スプリント ブリストル406 不遇のクーペ 前編

自動車製造への意欲が薄れたブリストル

クルマの動力性能や見た目の華やかさだけに注目するなら、アルファ・ロメオ2000 スプリントやブリストル406には、強い魅力を感じないかもしれない。低くないクラシックカーとしての価値を、実感しにくいはず。

【画像】否定しがたい魅力 アルファ2000 ブリストル406 同時期のモデル 末期のファイターも 全132枚

実際のところ、現役時代だった1960年代初頭でも、半額以下の価格で優れた性能と容姿を兼ね備えた4シータークーペを選ぶことはできた。特に英国のジャガーは、それを叶えていた。

6気筒エンジンを搭載したフォードや英国オペル、ヴォグゾールのサルーンでさえ、160km/h以上の最高速度を既に実現していた。自動車の性能が底上げされ、ブリストルやアルファ・ロメオといった、上級ブランドの価値は低下傾向にあったことは確かだ。

とはいえ、この2台には評価すべき素性がある。当時と今とでは、受け止められ方も大きく違っている。

1958年に発売されたブリストル406は、第二次大戦前にBMWが有していた直列6気筒エンジン技術を応用したクーペ。タイプ110と呼ばれるユニットは、トリプル・ソレックスキャブレターによる鋭いレスポンスを備え、2216ccから106psを発揮した。

しかし、特徴的なスタイリングの2ドアクーペ・ボディを製造したのは、ロンドンに拠点を置くコーチビルダー、ジョーンズ・ブラザーズ社。ブリストル・カーズの工場ではなく、自動車製造に対する意欲が薄れつつある姿勢を現していた。

ジウジアーロが描いた滑らかなスタイリング

406が細々と作られる裏で、モノコックの前身といえるユニボディ構造を想定した次期モデルは、開発が中止。英国政府が介入し組合協定が組まれるなど、ブリストル・カーズの未来には暗雲が立ち込めていた。

さらに親会社のブリストル・エアロプレーン社は、超音速旅客機のコンコルド用エンジンを共同開発する目的で、ブリストル・シドレー社を設立。航空宇宙部門へ主力事業は再びシフトしようとしていた。

高級サルーン、アームストロング・シドレー・サファイアのエンジンを流用した406の派生モデルも、計画は棚上げにされた。それでも、406はV8エンジンを載せた407へ1961年にモデルチェンジされ、2ドアクーペの提供が絶たれることはなかった。

他方、シルバーのアルファ・ロメオは、一般的には6気筒エンジンの2600 スプリントとして知られているモデルだろう。まだ若かった、デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ氏がベルトーネ在籍時代に描き出した、滑らかなスタイリングが目を引く。

だが、このボディで先に発表されたのは、1960年の2000 スプリント。1958年にアルファ・ロメオ1900の後継モデルとして登場したティーポ102、2000 ベルリーナとスパイダーの派生版だった。

グランドツアラーとしてデザインされ、裕福なオーナーが運転を楽しむドライバーズクーペだった。406と同じく。

英国へは、1962年の2600 スプリントから正式に導入されている。2000 スプリントは、輸入関税も踏まえると、価格帯から殆ど関心を示されなかっただろう。

世界で最も美しい量産車として名を刻む

1958年に発売されたブリストル406の英国価格は、4244ポンド。恐らく当時は、世界で最も高価な2.0Lエンジンの量産車だったと考えられる。それでいて最高速度は時速100マイル、161km/hと、際立つものではなかった。

ボディはアルミニウム製だが、セパレートシャシー構造。航空機製造で培った品質をベースに手作業で作られ、4名が長時間過ごせる車内を有していたが、満足のいく支持は得られなかった。

ボンネットを開かずに、V8エンジンを積んだ407と見分けられる特徴はルーフ部分。406には備わる、タクシーのようなウインカーが省かれている。それ以外は同じといっていい。

アルファ・ロメオも、2000 スプリントと2600 スプリントを区別するポイントは、後者のボンネットにエアインテークがあることのみ。ここを隠したら、マニアでも判断することは難しいだろう。

しかし、製造数は大きく異なる。2000 スプリントは約2年間に705台しか作られていないが、2600 スプリントは1967年までに7000台近くがラインオフしている。

2023年にこの2台を並べてみると、発表が2年しか違わないという事実に驚かされる。細身のピラーが支える滑らかなルーフと、スタイリッシュな4灯ヘッドライトを備えるフロントマスクは、1960年代初頭としては印象的にモダンだったはず。

世界で最も美しい量産車として、2000と2600 スプリントは歴史に名を刻んでいる。クーペというデザインの、新時代が表現されていた。

独特のクラシカルな威厳を漂わせる406

その2年前に誕生した406は、ブリストル・カーズのスタイリングの特徴を最も美しくカタチにしている。大柄なボディは、2000 スプリントより400mmも長い。車重も僅かに重く、雰囲気としては2ドアサルーンと表現しても良いだろう。

リアシート側の空間は広く、上下方向にもゆとりがある。肉厚なタイヤが巻かれたホイールも、16インチと大きい。

独特のクラシカルな威厳を漂わせる406は、優秀なダンロップ社製のディスクブレーキを前後に備え、現代的なラック&ピニオン式ステアリングラックが組まれる。2000 スプリント以上の技術を得ていた。

リア・サスペンションはトーションバー式ながら、ワッツリンクを採用。洗練性を高めつつ、ロールセンターの位置を下げていた。

フロントサスペンションは、戦前のBMWのスタイルに則った、横置きリーフスプリング。その後、重たいV8エンジンを積んだ407では、コイルスプリングへアップデートされている。

2000 スプリントは前後ともコイルスプリングが支え、フロントにはダブルウイッシュボーン式を採用している。リアは、ラジアスアームが支持するリジッドアクスル。ただし不思議なことに、アンチロールバーは備わらない。

フロントヒンジのボンネットを開くと、ダブル・オーバーヘッド・カムの直列4気筒エンジンが姿を表す。ショートストロークでアルミ・ブロックの、ジュリエッタ用ユニットより見た目は少々古い。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

1件
  • モータージャーナリスト・川上完(たもつ)さん<2014年没>の愛車でしたね。
    現在は「ブリストル研究所」にて大切に保管されているかと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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