超人気ジャンルなのになぜ売れない?
原稿執筆時の直近データによると、国内の新車販売台数年間トップ3の車種は1位がホンダN-BOX、2位にダイハツ・タント、3位はスズキ・スペーシアとなっている。この3車種からわかるように、ボディ全高が高い「ハイトワゴン」と呼ばれる軽自動車が大人気だが、同じカテゴリーに属しながら販売の低迷する車種もある。
それらは何がマイナス要因となっているのだろうか? 「軽ハイトワゴン」という売れ筋カテゴリーでありながら、イマイチ人気の芳しくない車種について考えてみたい。
国内販売台数のトップ3を「軽ハイトワゴン」が独占
先述のとおり2019年度(2019年4月から2020年3月)における国内販売ランキングのトップ3車種は、1位:ホンダN-BOX、2位:ダイハツタント、3位:スズキスペーシアであった。この3車に共通するのは、全高が1700mmを上まわる背の高いスライドドアを備える軽自動車であること。同じカテゴリーのライバル同士が、国内販売のトップ3を独占したわけである。
そして2019年度の販売統計を見ると、新車として売られたクルマの37%が軽自動車だ。軽乗用車の内訳は、N-BOXやタントなど全高1700mm以上の車種が50%、ワゴンRやムーヴのような全高1600~1700mmの車種が35%になる。従って軽乗用車の85%が背の高い車種であった。
人気車種になるかと思われたウェイクの盲点
ただしその一方では、背の高い軽自動車でありながら、売れ行きの伸び悩む車種もある。この典型がダイハツ・ウェイクだ。全高は1800mmを上まわり、タントと比べても80mm背が高い。それなのに売れない。
2019年度におけるウェイクの届け出台数は、2万189台にとどまった。全高が1700mmを超える軽自動車では、N-BOXが24万7707台、タントは17万2679台、スペーシアは15万9799台だ。ウェイクの売れ行きは、同じダイハツタントのわずか12%と少ない。
ウェイクの登場は2014年11月だから、翌年に当たる2015年の届け出台数を見ると5万711台だ。同じ年にタントは15万7756台を届け出したから、ウェイクは発売当初から売れていなかった。ウェイクの販売目標は1か月当たり5000台(1年間なら6万台)だったから、発売の翌年には、早くも目標を下まわったことになる。
ウェイクが発売直後から販売低迷に陥った理由は、当時売られていた先代タントに比べて商品力が劣ったからだ。先代タントは、現行型と同じく左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵していた。そのために前後のドアを両方とも開くと、開口幅が現行型タントと同じ1490mmに広がった。乗降性は軽自動車のナンバーワンといえる。ボディタイプも豊富で、標準ボディとエアロパーツを装着する「カスタム」を選べた。
一方ウェイクは天井が高いために車内に開放感があり、頭上に棚などを装着することも可能だが、タントと違って左右とも前後ドアの間にはピラーがあり(スライドドアにピラーを内蔵していない)、ボディタイプも1種類しかない。
次に燃費を見てみると、現行型タントの車両重量は標準ボディのXセレクションが900kgで、JC08モード燃費は27.2km/Lだ。ウェイク LリミテッドSAIIIは、1000kgと重く、25.4km/Lになる。
価格はタントXセレクションが149万500円、ウェイクに同等の装備を採用したLリミテッドSAIIIは164万4500円だから、タントよりもウェイクが約15万円高い。これらの条件により多くのユーザーが、燃費を含めて出費を抑えられるタントがスライドドアの工夫もあって買い得と判断したのだろう。ウェイクにも広い車内を遊びのツールとして活用する楽しさはあるが、ユーザーの理解を得にくかったようだ。
美点をひたすら磨くことが激戦を制する
このほかダイハツ・キャストも2019年度の届け出台数が3万5010台で、タントの20%にとどまる。キャストは全高が1600~1700mmの軽自動車でムーヴに似ているが、SUV風の「アクティバ」、上質で都会的な「スタイル」、ターボエンジンのみを搭載する「スポーツ」の3種類を選べた。この多彩なバリエーションがキャストの特徴だが、逆に車種の個性が曖昧になり、売れ行きは発売当初から伸び悩んだ。なお、現在は「スタイル」のみ販売されている。
軽自動車は全長、全幅、エンジン排気量が全車共通だから、ユーザーは違いがわかりにくい。そのために開発に際しては一番優れた価値に磨きを掛け、ストレートに訴求することが大切だ。ウェイクやキャストはそこが乏しかった。
逆にN-BOXは、先代型の初代モデルにおいて車内の広さを明確に表現。外観のデザインも存在感が強く、N-BOXを初めて見たユーザーは後席と荷室の広さに驚いた。そこで一躍人気車になり、2代目の現行型も好調に売れている。
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