■2代目へと進化したスバル「BRZ」の雪上でのポテンシャルは?
「FR(後輪駆動)のスポーツカーで雪道を走るなんて危なくないの?」そう思う人もいるでしょう。そういう筆者(くるまのニュース編集部KK)もその一人。
雪道は4WD車じゃないと走れない? FFとFRで雪道が得意なのはどっち?
現在所有するFRスポーツカーのスバル「BRZ」(初代前期型・2015年式)は冬でもスタッドレスタイヤを装着せず、雪が降ったときは一切乗らないという稼働体制を取っています。
一方、趣味でスノーボードをするのですが、雪山へ行くときは家族が所有する「レガシィツーリングワゴン(5代目)」を使用するので、BRZで雪道を走ろうなんて考えたこともありませんでした。
ところが、2021年7月に2代目となる新型BRZが登場。その新型BRZで雪道を走る映像をスバルが公開し、「ホントに走れるのか…?」と疑問に思ったのと同時に、「もし雪道がOKなのであれば、BRZでスノーボードに行けるのでは?」という期待も抱いたのです。
この疑問を新型BRZの開発陣にぶつけてみたところ、「新型BRZは雪道でも四駆のように安定して走れます」と太鼓判を押されました。
ということで今回、スタッドレスタイヤを履いた新型BRZを借りてスノーボードに行ってみようということになったのです。
じつは、新型BRZの注文を入れているのですが、納車は2022年春ごろの予定。次の雪のシーズンに備え、ひと足先に新型BRZで雪上走行を体感してみました。
新型BRZは内外装ともにもちろん最新デザインが採用されていますが、基本的には初代BRZからキープコンセプト。
外観はひと目でBRZだとわかるスタイルを踏襲しており、内装もスイッチ類の意匠や配置などがあまり変わっていないことは、初代BRZオーナーからみても違和感がなく、馴染みやすいと感じました。
新型BRZで進化した点として挙げられるのは、前方視界が良くなったことです。初代BRZはインパネ中央にエアコン吹き出し口が盛り上がるように設置されていますが、新型では中央がフラットになり、視界がスッキリしています。
さらに、シートがより体になじむような形状に改良され、疲れにくい姿勢で運転できるようになったのもうれしいポイントです。
また、寒い季節に重宝するシートヒーターが上級グレードの「S」に標準装備されるとともに、ヒーテッドドアミラーは全車標準装備。ドアミラーの凍結を解消してくれるなど、冬でも快適に走行できるアイテムが備わっています。
※ ※ ※
ひとつ残念なのは、ステアリングヒーターがオプションでも設定されていないことです。
「フォレスター」などに設定されるステアリングヒーターは、スイッチを入れるとすぐステアリングが温かくなって便利なのですが、新型BRZでもステアリングヒーターがされることを期待したものの、これは実現しませんでした。
■新型BRZ(AT)×アイスガード7で雪上を走った印象は?
雪上を走行するということで、スタッドレスタイヤはヨコハマタイヤの最新作「ice GUARD7(アイスガード)」を装着し、新型BRZで志賀高原(長野県)へと向かいました。
2021年に発売された最新のアイスガード7は、シリーズ最高の氷上性能を誇るスタッドレスタイヤ。
これまでの「アイスガード6」に対して氷上性能と雪上性能が進化しており、氷上制動性能が14%、雪上制動性能は3%アップしているといいます。
初めは恐る恐るアクセルを踏んでいたのですが、アイスガード7は雪上でのグリップが良く効き、滑ったりすることなく普通に走れることに驚きました。
また、四駆を得意とするスバルだけに、FRの新型BRZでも安定して走れるというのは本当で、圧雪路、凍結路、シャーベットなどさまざまな路面状況で試したところ、急な加減速や急ハンドルなどおこなわなければ、難なく走破することができました。
今回借りた新型BRZは6速AT車で「スノーモード」が設定されており、横滑り防止装置(VDC)もONにしておけばより安心感が増します。
もちろん、凍結路ではより注意深く走る必要がありますが、これはFRに限らず、FFでも四駆でも急が付く操作はNGです。
それ以上に、「FRは雪道が苦手」という固定概念が、新型BRZによって崩される結果となったことはうれしい誤算でした。
また、雪がほとんど降らない都市部ではオンロード性能も大切です。
オンロードでのアイスガード7の印象は、スタッドレスタイヤであることを忘れてしまうほど、良い意味で「普通」。むしろスポーツカーである新型BRZの挙動に負けていない、スポーティな走りも体感することができました。
ただし高速道路のハイスピードでの走行は少々苦手な印象を受けました。雪上でも舗装路でも、無理をしない運転が必要だといえそうです。
新型BRZでスノーボードに行くにあたり、気になるのは荷室の積載性でしょう。
クーペスタイルのBRZは2シーターモデルと思われがちですが、後席に2人が乗車可能な4人乗りです。
実際後席は狭く、大人が乗るのはかなり困難で緊急用だといえますが、その後席を前に倒すとトランクとつながり、フルフラットの大きなラゲッジスペースが出現します。
今回はカメラ機材とケースに入れたスノーボードを載せてみましたが、載せ方を工夫すれば思いのほか多くの荷物を載せることができました。
初代BRZもそうですが、トランクスルー機構を活用すればタイヤが4本積めるし、ロードバイクも前輪を外せば積載可能。さらには、このスペースを活用して車中泊する人もいるなど、BRZは見た目からは想像できないほど実用的なクルマだといえそうです。
※ ※ ※
新型BRZの雪上走行におけるマイナスポイントをあげるとすれば、大きく張り出したサイドシルスポイラーが雪や泥で汚れるので、クルマから降りるときに足元が触れて汚れてしまうということです。
また、フロントフェンダーに新たに設けられたエアアウトレットの内部に汚れが入り込み、洗車が少し大変だったのですが、それらをクリアすれば、新型BRZでも難なくスノーボードに行けることがわかりました。
しかもAT車は「アイサイト」が標準装備されており、高速道路でも前走車に追従して走行するACCやプリクラッシュブレーキが備わるなど、安心安全という点も期待できます。
とはいえ、筆者が購入した新型BRZは6速MT。アイサイトは装備されていないのでその恩恵は受けられませんが、スポーティな走りも雪道での走りもどちらもこなせる新型BRZのポテンシャルの高さを実感することができ、ますます納車が楽しみになりました。
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