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最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 後編

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最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 後編

後席の膝前に余裕がない標準ホイールベース

初代Sクラスとなる、メルセデス・ベンツのW116型。今回ご登場願った3台のうち、ピーター・グルナート氏が所有するのは1975年式の280SE。明るいグリーンのボディは美しく、走行距離は短い。MBテックスと呼ばれる合皮の内装も、状態が素晴らしい。

【画像】最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116と現行のW223 クーペも 全116枚

シルバーの350SEは1979年式で、ヒュー・フランシス氏がオーナー。長年のメルセデス・ベンツ愛好家だそうで、こちらも見事な状態を保っている。

ロングボディが凛々しい450SEL 6.9を所有するのは、アンソニー・ディアリング氏。ダークブルーのレザー内装が高級感を漂わせる。

車内を観察すると、特別なウッドパネルや車高調整の小さなノブ、時計と一体になった小さなレブカウンターといった違いを発見できる。運転席からの良好な視界や骨太なステアリングホイール、硬めのシート、重厚なドアの開閉音などは3台で共通する。

乗り比べてみると、標準ホイールベース版のリアシート側は、膝前の空間に殆ど余裕がないことへ驚く。カーブで身体を保持してくれるのは、摩擦の大きい350SEのベロア生地。ボディロールは小さくないものの、独特の質感が伴い快適だ。

筆者としては、280SEの実用主義的なMBテックスの風合いや、横方向に木目が揃うウッドパネルが好きだ。ツインカム直列6気筒エンジン、M110型ユニットの質素な眺めにも親しみを持てる。

何度体験しても惹き込まれる興奮の加速力

機械式インジェクションでドライサンプ化されたM100型6.9L V8ユニットには、特別感がにじみ出る。エンジンルームを開くと、大きいカムカバーとバッテリー、ハイドロニューマチック用のポンプが余地を埋めている。

路上を進み始めると、3.5L V8エンジンを積んだ350SEが際立って滑らかで静か。低めのギア比で回転数が高めになるため、アウトバーンの巡航速度でも不足ない加速力を引き出せる。

燃費は、新車時のテストによると350SEが4.6km/L。450SEL 6.9では2.4km/Lを残している。

そのかわり、最大トルクが350SEの2倍ある450SEL 6.9は、何度体験しても惹き込まれるような興奮の加速力を味わえる。高速道路の合流車線では、弾ける勢いでダッシュする。他車を置き去りにする追い越し車線での豪快さに、改めて感心する。

160km/hからでも、右足へ力を込めればV8エンジンが轟音を放ち、フロントノーズを軽く持ち上げ突進が始まる。望んだ場所へ、最短時間で運んでくれる。

半世紀前のクルマでも、280SEと350SEを、カーブで限界に追い込むことは難しい。今でも充分に通用する安定性は、感触が豊かでロックトゥロック3回転のステアリングラックと、ステアリング機構の設計、強いキャスター角が引き出している。

450SEL 6.9もカーブを高速で抜けられるが、右足の力加減には注意が必要。路面が湿っていると、突然テールスライドする瞬間に見舞われる。

最も速く感じられるのは280SE

乗り心地は、高速域で実力が発揮される。スチールコイルの場合、低速域では少しゴツゴツ感が目立つ。対照的に450SEL 6.9のハイドロニューマチックは、速度域を問わず上質。若干フワ付いた印象もあるが、最上級であることを物語る。

3台の初代Sクラスで最も速く感じられるのは、意欲的に回頭していく280SEだろう。350SEも想像以上に活発に走るが、乗り比べてみると驚かされる。直列6気筒でフロントが軽いぶん機敏だ。

280SEのエンジンはハスキーなノイズを放ち、中回転域で積極的にパワーを生み出す。滑らかなツインカム・ヘッドが、200km/hまで躊躇することなく加速させる。150km/h前後での巡航走行など朝飯前だろう。

湧き出るトルクには明確な山があり、回転数の上昇とともにパワー感が高まる。V8エンジンに組み合わされる3速ATとは異なり、直6エンジンには4速ATが載り、ギア比やシフトアップ・ポイントの違いなどでも活発さが生まれている。

剛性感の高いシフトレバーと洗練された変速感も、1970年代の新基準だった。W116型の後継モデルとして登場した、進化版の2代目Sクラス、W126型も同様だった。基礎となる哲学や技術的要素は、1980年代まで継投されている。

Sクラスは最初から最高だった

世界市場を見据えて開発された初代メルセデス・ベンツSクラスは、現代まで続く、ラグジュアリー・サルーンのデフォルトという揺るがない評価を確立した。1972年にも美しいサルーンや速いサルーンは存在したが、これほど高完成度の例は唯一といえた。

最も安全で、秀でた信頼性と製造品質を併せ持つ新基準だった。同年代のモデルと同様にボディは錆びやすいことも事実だが、季節を問わず長距離を走る乗られ方が日常といえ、避けがたい犠牲でもあった。

孤高の450SEL 6.9は、現在でも伝説の1車種に数えられる。しかし、他のW116型にも、それぞれの魅力が存在することを改めて確認することができたと思う。Sクラスは最初から最高だった。

メルセデス・ベンツW116型(1972~1980年/英国仕様)のスペック

英国価格:6995ポンド(350SE/新車時)/4万5000ポンド(約724万円)以下(現在)
販売台数:47万3035台(W116型合計)
全長:4960-5118mm
全幅:1867mm
全高:1410mm
最高速度:189-233km/h
0-97km/h加速:7.2-11.5秒
燃費:4.6-8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1610-1842kg
パワートレイン:直列6気筒2746cc自然吸気DOHC/V型8気筒3499-6834cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:160ps/5500rpm-290ps/4250rpm
最大トルク:22.9kg-m/4000rpm-55.8kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速・4速オートマティック

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