Mercedes-Benz GLA / GLB / GLC / GLE / EQC / G-Class
メルセデス・ベンツ GLA/GLB/GLC/GLE/EQC/Gクラス
ジャガー Fペイス×レンジローバースポーツ、同門でつくり分ける理由とは?【Playback GENROQ 2016】
大黒柱となったSUVファミリー
そもそもメルセデス・ベンツのSUVはGクラスしかなかったのはご存じの通り。1990年代後半になるとアメリカに端を発したSUVブームが到来、これに乗っかるべく工場までアメリカ国内に作ってまったく新しいSUV、Mクラス(1997年)を発表した。
ところがこの出来がたいそう悪く(主に品質面)、「Gだけにしとけばよかったのに」など、ずいぶんと揶揄されてしまった。それから約20年が経ち、メルセデスのSUVは小さいものから大きいものまでバラエティに富んだラインナップとなり、販売面でも会社をしっかり支える存在となっている。
GLAとGLBが刷新されたので、とりあえずしばらくはこのままの布陣で行くであろういまのタイミングで、あらためて(ほぼ)すべてのメルセデスSUVに乗ってみた。新たな何かが見えてくるかもしれないし、何も見えないかもしれないけれど。
メルセデスSUVのエントリーモデル、GLA
新型GLAはこれが初見。先代からガラリとイメージチェンジを図ったのはボディスペックからも明らかだ。特に全高が115mm、最低地上高が52mmも高くなっている。先代は極端に言えばSUVというよりは“ちょっと大きなタイヤを履いたAクラスのワゴン”みたいな微妙な商品だったので、モデルチェンジを機にSUV然としたスタイリングとパッケージに変更したのだろう。まるで“ミニGLC”のようでもある。
現在は直4ディーゼルターボを積んだ「GLA 200 d 4MATIC」のみのモノグレードだが、年内にAMG仕様が追加予定で、GLA 180については検討中とのこと。このディーゼルはパワーデリバリーがよく静粛性も高くて使い勝手がいい。ハンドリングにクセはなく、誰が乗っても大きな不満はないであろう万人向けの乗り味になっている。
メルセデスのSUVのエントリーモデルとして500万円を超えるプライスタグは個人的にちょっと高いように思うけれど、レーダーセーフティパッケージが標準装備なのでやむを得ないかも。ただし、これをフル活用するには約19万円のナビゲーションパッケージの装着が必要というトラップがあった。
3列シート7人乗りの小型SUV、GLB
日本で乗るのは初めて。海外試乗会での印象と大きく変わらず、操縦性と乗り心地がすこぶるよい。GLAよりホイールベースを100mmも延長し、3列シートの7人乗りであることがこのクルマ最大の特徴でもある。
全長はGLCより30mm短いだけで、全高はGLCより50mmも高く、全幅はGLAと同じ1835mmだから取り回しも悪くない。日本では直4ディーゼルで前輪駆動の「200 d」と直4ターボガソリンの「250 4MATIC Sports」の2タイプのみで、試乗車は後者だった。
このガソリンエンジン、動力性能は問題ないもののちょっとウルサイ。GLAのディーゼルのほうがずっと静かだった。また、250だと車両本体価格が約700万円と聞いて心臓が口から出そうになった。オフロードなど走るつもりはなく、SUVの格好をした7人乗りを探しているならFFの「200 d」で十分だろう。これらなら価格も512万円で心臓にも財布にも優しい。
燃料電池PHVもラインナップするGLC
GLCにはいまやクーペもあって、AMGの43や63まであって、現在は計10種類の商品展開となっている。発表年次は2015年だから約5年が経過したものの、熟成されていい感じにこなれている。クーペのほうが10kg重く荷室容量もわずかに小さいものの、乗り味はほとんど変わらない。でも価格は30万円高くなる。
そして今回試乗したのは11種類目となるF-CELLである。F-CELLを車名にするが、実際には燃料電池プラグインハイブリッドである。若干ややこしいので説明すると、後輪を駆動させるモーターへの電力は、燃料電池とリチウムイオンバッテリーの両方から供給されるので“ハイブリッド”というわけだ。航続距離は燃料電池で約377km、リチウムイオンバッテリーで約41km。水素ステーションが見つからなくても、充電さえできればどうにか動き続けられる。
「燃料電池らしい走り」なんてものはこの世になくて、乗り味はいわゆる電気自動車のそれである。EQCと同様に、あえてEVっぽさを出さず、電気+モーターでありながらメルセデスらしい安定安全志向に終始する。価格1050万円だが、現時点では4年リースのみの取り扱いとなっている。
“アシ”が自慢の中型SUV、GLE
GLEもGLCと同様にクーペもAMGもラインナップしている。そしてこちらもGLEでもGLEクーペでも乗り味に大差はなく、格好や機能性など、ライフスタイルに合わせて選べばいい。
試乗車はクーペの「400 d 4MATIC Sports」で、日本仕様のノーマルの足まわりはエアサスだが、オプションのE-ACTIVE BODY CONTROLが付いていた。これもエアサスをベースとしているので車高調整は無論、ばね上を出来る限りフラットに保とうとするから乗り心地は上々である。ドライブモードを“CURVE”にすると旋回中に外側の車高をわずかに上げてボディを水平にする機構もある。
実はこのE-ABC、新型Sクラスにも投入されていて、あちらでは“フルアクティブ・サスペンション”と称している。メルセデスは以前、“ABC”と呼ばれるサスペンションで痛い目に遭った経験があり、今回はGLEで初採用した後に様子を窺い、満を持してフラッグシップにも装備したのかもしれない。
SUV界のSクラス、GLS
GLSは「SUVのSクラス」という立ち位置でマイバッハ版まで用意している。「Sクラスのように極上に快適」とはちょっと言い過ぎかも知れないけれど、他のメルセデスSUVよりは快適性に振った味付けになっている。
日本仕様は「400 d 4MATIC」と「580 4MATIC Sports」の2タイプで価格はそれぞれ1263万円と1669万円。お値段はSクラス並みだが、前述のGLE クーペは1186万円なので、“400 d”同士で比べたらその差は77万円しかない。これをもってGLSが安いのかGLEクーペが高いと言うべきなのかはよく分からない。ただし、残念ながらGLSのサスペンションは単なるエアサスで、E-ABCは装着されない。本当は付けたいんだろうなと思う。「SUVのSクラス」なんだから。
無敵になった“ゲレンデヴァーゲン”
現行のメルセデスSUVの車名の頭に付く“G”はもちろん“Gクラス”に敬意を払っての命名である。2018年に初めてのフルモデルチェンジを果たした現行Gクラスは、ラダーフレームを踏襲しながらも普段使いの快適性が劇的に向上した。格好もほとんど同じに見えるが、旧型から流用したパーツはわずか数個に過ぎない。
旧型でオーナーが我慢を強いられていた部分のほとんどが改善されており、案の定注文が殺到。コロナ禍による工場の一時操業停止などもあり、2020年春頃にはウェイティングリストが3年以上となって新規のオーダーを中止していたとか。比類無きオフロードの走破性に加えてオンロードでの快適性まで得たのだから、これで本当に怖いものなしになった。
W124の味を思わせるEV、EQC
EQCはGLCのプラットフォームをベースに(両車のホイールベースは同値)、モーターを前後に置く4輪駆動(GLC F-CELLは後輪駆動)のBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)である。BEVを作るにあたり、自動車メーカーはその乗り味を電気自動車感満載にするか、内燃機から乗り換えても違和感なくするかで悩む。
で、メルセデスは後者を選んだ。ちなみにBEVでSUVがよく選ばれるのは、航続距離300km以上を可能にする大きなバッテリーの置き場所を確保しやすいことと、床下に敷き詰めた重いバッテリーのおかげで、SUVの弱点のひとつである重心の高さが相殺されるからだ。
GLCに似たボディサイズで約2.5トンの重量は相当なものだけれど、乗り心地はよくなるし、ちょっともっさりした動きはわずかながらW124時代を彷彿とさせる。最新のBEVの乗り味が「あの頃のメルセデスはよかった」と言われる「あの頃」に似ているというのがメルセデスの狙い通りだとしたらなかなかやるもんである。
もうこれ以上はいらない
サイズはAからSまであって一部にはクーペボディも用意、パワートレインはガソリンとディーゼルに加えて燃料電池やBEVまで、駆動形式は街乗り用のFFもあれば道なき道まで開拓できそうな本格四駆までと、メルセデスはSUVのほぼ全方位を抑えている。
個人的には、メルセデスのSUVはもうこれで十分だと思う。どこぞのメーカーみたいにいたずらにモデル数を増やさず、今後は各モデルの改良と熟成に精進して欲しい。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)
【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ GLA 200 d 4マティック
ボディサイズ:全長4415 全幅1835 全高1620mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1710kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1949cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
最高出力:110kW(150ps)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm/1400-3200rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後4リンク
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:前後235/55R18
車両本体価格:502万円
メルセデス・ベンツ GLB 250 4MATIC スポーツ
ボディサイズ:全長4650 全幅1845 全高1700mm
ホイールベース:2830mm
車両重量:1760kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
ボア×ストローク:83.0×92.0mm
最高出力:165kW(224ps)/5500rpm
最大トルク:350Nm/1800-4000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:前後235/45R20
車両本体価格(税込):696万円
メルセデス・ベンツ GLC F-CELL
ボディサイズ:全長4680 全幅1890 全高1655mm
ホイールベース:2875mm
モーター最高出力:160kW(200ps)/5400rpm
最大トルク:350Nm/4080rpm
トランスミッション:1速固定式
駆動方式:RWD
タイヤサイズ:前235/50R20 後255/45R20
車両本体価格(税込):1050万円
メルセデス・ベンツ GLE 400 d 4マティック クーペ スポーツ
ボディサイズ:全長4955 全幅2020 全高1715mm
ホイールベース:2935mm
車両重量:2450kg
エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2924cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
最高出力:243kW(330ps)/3600-4200rpm
最大トルク:700Nm/1200-3200rpm
トランスミッション:9速AT
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
駆動方式:AWD
タイヤサイズ:前275/45R21 後315/40R21
車両本体価格(税込):1186万円
メルセデス・ベンツ GLS 400 d 4マティック
ボディサイズ:全長5220 全幅2030 全高1825mm
ホイールベース:3135mm
車両重量:2590kg
エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2924cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
最高出力:243kW(330ps)/3600-4200rpm
最大トルク:700Nm/1200-3200rpm
トランスミッション:9速AT
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:前275/45R21 後315/40R21
車両価格(税込):1263万円
メルセデス・ベンツ G 350 d
ボディサイズ:全長4660 全幅1985 全高1975mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2500kg
エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2924cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
最高出力:210kW(286ps)/3400-4600rpm
最大トルク:600Nm/1200-3200rpm
トランスミッション:9速AT
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後リジッドアクスル
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:前後 275/50R20
車両本体価格(税込):1192万円
メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC
ボディサイズ:全長4770 全幅1925 全高1625mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:2500kg
電気モーター:非同期モーター×2
最高出力:300kW(408ps)
最大トルク:765Nm
駆動方式:4WD
バッテリー:リチウムイオン
バッテリー容量:80kWh
車両本体価格(税込):1080万円
【問い合わせ】
メルセデスコール
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みんなのコメント
初代レクサスRX(初代ハリアー)の大ヒット見て、ベンツが慌てて投入したSUV。
性能も作り、信頼性もあまりにお粗末で、製造地になぞられた「アラバマ・ベンツ」と呼ばれて、バカにされていたものです。
でも、フロントには大きなベンツマークが付いていたので、有難がって喜んで乗ってる日本人も結構いたという、、、笑
この人、ほんとにわかって書いてるの?