ランボルギーニのイメージを構築した歴史的な一台
ここ最近、ランボルギーニ・ミウラが人気だ。スーパーカーブーム全盛時にも一世を風靡したので、半世紀近く経って、人気が再燃しているといったほうが正しいのかもしれない。
本物は焼失した1台のみ! 謎と伝説にまみれた「ランボルギーニ・イオタ」とは
スーパーカーブーム全盛時のことを思い出してみると、最高出力や最高速といったスペックに一喜一憂していた低年齢の子どもたちの間におけるアイドルは、明らかにランボルギーニ・カウンタックやフェラーリBBシリーズだった。その一方で、もっと年齢層が高い“お兄さんたち”にとっての憧れの存在はミウラだったように記憶している。
ダラーラ・ベルトーネ・ボブという豪華な陣容
そんなミウラがアウトモビリ・ランボルギーニ S.p.A初のミッドシップモデルとしてデビューしたのは1966年のことだ。この年のジュネーブ・ショーで披露されたミウラ P400は、当時のチーフ・エンジニアであったジャン・パオロ・ダラーラが設計したシャーシに、カロッツェリア・ベルトーネ在籍時代のマルチェロ・ガンディーニがデザインしたボディを組み合わせたものだった。
メカニック兼テストドライバーとして活躍していたボブ・ウォレスも製作プロジェクトに参画していたというから、まさにドリームチームが造ったことになる。無論、携わったメンバーのみならず、そのスペックもまた夢のあるものだったことにより、ミウラは小学校高学年よりも上の層からも注目されることとなった。
筆者が考える夢のあるスペックとはミッドシップのことだが、このレイアウトはレース界では常識になりつつあったが、市販スポーツカーのほうではルネ・ボネ・ジェットぐらいしか採用しておらず、ロードカーの世界では馴染みのないものだった。
少量の限定生産ならばOKという条件付きでジュネーブ・ショーに展示したが……
そのような状況のなかで、1965年に開催されたトリノ・ショーのランボルギーニ・ブースに参考出品されたTP400という名のローリングシャーシは、V型12気筒ユニットを横置きミッドシップの位置に搭載。おそらく、これを会場で見た者すべてが「ランボルギーニもいよいよレースに進出するのか?」と思ったはずだ。だが、翌年のジュネーブ・ショーにふたたび登場したローリングシャーシは、既述したようにガンディーニがデザインしたエキゾチックなボディを纏い、ミウラ P400として展示されたのだ。
ミッドシップをはじめとするレーシングカー譲りの優れたメカニズム、大排気量かつ大パワーのマルチシリンダーエンジン、エキゾチックなボディ。そして、豪華なインテリアを持つクルマこそがスーパーカーだと定義するならば、ミウラはこのジャンルを開拓したパイオニアだといえる。今日まで続くランボルギーニのイメージを構築した歴史的な一台であるともいえるのであった。
ちなみに、ランボルギーニの創業者であるフェルッチオ・ランボルギーニは、ミッドシップ車ではなく上質なGTが好きな人だったといわれている。当初、ミウラの製作プロジェクトに難色を示していたらしいが、少量の限定生産ならばOKという条件付きでジュネーブ・ショーの披露を許可したようだ。しかし、会場でミウラ P400を見たカスタマーから購入を希望するオーダーが殺到。結局、フェルッチオが折れて、量産に踏み切ることになったといわれている。
こうしてデビューしたミウラ P400は、センターモノコックと前後のサブフレームを組み合わせた強固な構造の高剛性シャーシに、排気量3929ccのパワフルなV型12気筒エンジンを横置きミッドシップを採用。高度なメカニズムとガンディーニによる美しいスタイリングがバランスよく融合していたこともあり、瞬く間に、見る者、乗る者を魅了した。ランボルギーニの名をあらためて世間に知らしめるきっかけとなった。
モデルチェンジごとに進化したミウラ
最高出力350psを誇ったミウラP400のパワーアップ版として、1968年にP400Sが登場。車名の最後に付いた「S」はイタリア語のスピント=超越したの頭文字で、V型12気筒エンジンの圧縮比を高めるなどして、最高出力が20psアップしていた。
ミウラの最終進化型として1971年にリリースされたP400SVに搭載されたパワーユニットは、最高出力385psを発生。「V」はイタリア語のヴェローチェ=速いの頭文字だ。P400/P400Sとの認識点は、ポップアップ式ヘッドライトの“まつ毛”が無くなったこと、テールランプのデザインが変更されたこと、リヤフェンダーが拡げられたことなどで、ひと目で識別できる。生産台数は、P400が275台、P400Sが338台、P400SVが150台といわれている。
リビングレジェンドも認める「ミウラこそベスト・オブ・スーパーカー」
実際にミウラを所有するオーナーのIさんは、開発に関わってきた陣容やメカニズムを含む、美しいスタイリングに魅了されたひとりだ。「子どものころに抱いていたスーパーカーに対するイメージを追いかけようと思い、フェラーリF355を売約し、ミウラというファイティングブルを買いました」と話す。
また、1974年にシーサイドモーター(かつて横浜市に存在したランボルギーニやマセラティの日本総代理店)に入社。日本におけるランボルギーニの歴史を語る際に忘れることができない鞍 和彦さん(現在はヴィンテージスポーツカーの総合ディーラーとして知られるキャステルオートの代表)は「ミウラこそベスト・オブ・スーパーカー」だと断言してくれた。
スーパーカーの始祖であるランボルギーニ・ミウラは、これからも世界的な資産価値を高めながら、人々から愛されていく。
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みんなのコメント
海外オークションでもフェラーリとは桁が違ったりしてました。
やはり投機筋が入ると違いますね