近頃、ますます巨大化の一歩を辿っているマツダのSUV。今回はそのトップバッターを飾った「CX-60」を我々編集部員が評価する。登場からはや一年経つが、今だ見えないその実力。そこで改めてその隠された実力を探るべく、その本性に迫っていこうと思う。
※本稿は2024年3月のものです
文/ベストカー編集部、写真/中里慎一郎
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
マツダ渾身のラージSUV始動! トップバッター「CX-60」って実際どうなのよ? 今だ見えない実力はいかに
■まずはココから……マツダ CX-60ってどういうクルマ?
マツダ CX-60。マツダのラージ商品群第一弾となるプレミアムSUVだ
マツダ CX-60は「直6エンジン+FRプラットフォーム」という、マツダの壮大な挑戦であるラージ商品群の一番手となるプレミアムSUV。
パワーユニットはベーシックな2.5L直4ガソリン、中心的存在となる3.3L直6ディーゼルターボ、3.3L直6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド、2.5L直4ガソリンPHEVの4つで、グレードも純エンジン車を中心に豊富に設定する。
■編集長飯嶋はこう見た!
試験場でプロトタイプの試乗を体験している編集長飯嶋は好印象を抱いていたが、「確かに一般道ではは快適とは言いづらいかも」と評価一変
CX-60には過去、美祢(山口県)の試験場でプロトタイプに乗ってまして、その時の印象がとてもよかったので、一部から出ていた「乗り心地が……」との評価に首を傾げていたわけですが、今回一般道で試乗してわかりました。なるほど、確かにこれは快適とは言いづらいかも。
特に後席は路面からコツコツ伝わってくるし、段差ではけっこう跳ねる。しかも座面長があまり長くないので、たとえ路面状況が良好であっても長距離はどうかな? という感じです。
でもまあ、運転している限りは悪い印象じゃないんですよ。なんかフロアからゴトゴトした感じを受けるのは謎なんですが、ピッチングがあまり発生しない乗り味は嫌いじゃないです。
ディーゼル車の「グモモモモ……」っていうアメリカンV8みたいな排気音は素直に楽しいし、気分も盛り上がる。今後に期待したくなるクルマですねぇ。
●飯嶋の評価
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★★☆
・乗り心地:★★★☆☆(2.5)
・お買い得感:★★★☆☆
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■飯干はこう見た!
試乗したXD Lパッケージが搭載するのは、ピュアな3.3L直6ディーゼルターボだ
直6ディーゼルターボはガソリンエンジンのような音とフィールが特徴だけど、ディーゼルならではの図太い低速トルクはない。かなりめずらしいディーゼルエンジンだと思う。
足回りは突き上げが大きいとよく言われるがそのとおりで、首都高で加速した時、道路の繋ぎ目を乗り越えた瞬間に後輪が接地を失う場面もあった。首都高の繋ぎ目は段差が大きいことで知られているが、プレミアムSUVでそれはどうなのだろう。もう少ししなやかな足が望ましい。
「直6エンジン&FRのプレミアムSUV」という説明書きは立派なのだが、期待値には届いていないというのが正直な印象。
エンジン縦置きラージプラットフォームはまだ生まれたばかりで、成長するのはこれから。マツダなら、必ずいいクルマに育ててくれるだろう。
●飯干の評価
・パワー感:★★★☆☆
・ハンドリング:★★★★☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得感:★★★☆☆
■梅木はこう見た!
FRベースであることを感じさせる、ロングノーズ・ショートデッキのサイドビュー。「デビュー直後に比べてマイルドになったような気がするけど、やっぱりリアサスが突っ張るんだよね」(梅木)
うーん、なんかデビュー直後に乗った時と比べてちょいと乗り心地がマイルドになったような気がするんだけど、でも、やっぱりリアサスが突っ張る基本特性は変わっていないんだよね。
CX-60の足って、相対的にフロントがソフトでハンドル切るとシュッと反応するんだけど、リアが妙に粘って反応が遅れるんだよね。リアアクスルを支点にしてフロントが弧を描くような印象。この特性は最初から一貫していて不変。
あと、高速道路なんかを走っていると路面のうねりを拾って車体がシェイクされるような動きをする。ピッチングが大きく、これにロール方向の動きが絡んで揺さぶられるような動きになるのだ。初期仕様よりもちょいと抑えられたような気もするが、それでもやっぱり気になる。前後の足のバランスなんだろうな。
●梅木の評価
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★☆☆
・乗り心地:★☆☆☆☆
・お買い得感:★★☆☆☆
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■古川はこう見た!
インテリアの質感は、プレミアムSUVとしてふさわしいレベルだ。ナビ画面も大きく見やすい
CX-60には1カ月前にも乗って、この時は8速ATの1速と2速あたりでややギクシャクするのが気になったけれど、今回改めてベストカーのある音羽周辺で乗って感じたのは以前から指摘されていた乗り心地の硬さ。
道路工事も多く、そのような荒れた路面では大きな突き上げや横に揺さぶられる動きなどが感じられた。足が全体的に突っ張っているような感じがする。
そんなネガな部分もあるけれど、CX-60のよさはやはり内燃機関らしさが前面に出ているところだと思う。
試乗した3.3L直6ディーゼルターボ車は、ディーゼルならではの音や振動はわりと大きめだけれど、51.0kgmの巨大なトルクによる加速感を含め、その豪快さは魅力的。そしてこの大トルクを後輪で押し出す感覚のFRによる走りもやはりいいですね。
●古川の評価
・パワー感:★★★★★
・ハンドリング:★★★☆☆
・乗り心地:★★☆☆☆
・お買い得感:★★★☆☆
■林はこう見た!
シートは調整幅が広く、大柄小柄問わずポジションを合わせやすい
CX-60に触れて感じるいい所は、ボディの剛性感、各部品のコストのかけ具合、内装の使いやすさ&質感といったところですね。3.3Lディーゼルターボも現在の市場では、唯一無二の魅力があると思います。
が、持っている物はいいのに活かし切れていない……というのが試乗しての率直な感想です。ざっくり気になった点を挙げると、
1……1速、2速がローギアードすぎてギクシャクする。
2……キャスター角不足なのか直進安定性が低く、高速道路でふらつく。
3……初期の効きが弱く踏力が必要なブレーキ。
4……リアダンパーの動きが渋いのか路面のうねりで揺さぶられ、段差で跳ねるので、長時間はしんどい。
最上級SUVという位置づけからすると、熟成が必要かと。でもマツダは育てるのが得意なメーカーなので期待しております。
●林の評価
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★☆☆
・乗り心地:★★☆☆☆
・お買い得感:★★☆☆☆
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■赤澤はこう見た!
シフトレバー奥に「MI-DRIVE」のスイッチがあり、「ノーマル」「スポーツ」を選択可能
初めてCX-60に試乗した時、「マニアックなクルマだな」と思ったワケですが、再び試乗してわかったのは、「出る釘が綺麗に打たれちゃっている」ということ。
例えば、搭載される3.3L直6ディーゼルターボは231ps/51.0kgmを絞り出す強心臓ですが、重い車重や緩慢すぎるレスポンスのせいか、いいエンジンだとは感じにくかった。お前の底力こんなもん? とツッコミたくなるような、いたって普通のエンジンのように感じられた。
CX-60って、先述のエンジンに限らずこんな一面がアチコチに目立つ。各コンポーネント単体の作りはいいのに他が足を引っ張るようによさを打ち消している。だから全体で見た時、平凡に感じる。最初乗った時「マニアック」だと思ったのはそういうことだったりします。うーん……。
■結論:全体的に評価は厳しめも、今後の熟成に期待
ちょっと厳しい評価になってしまったCX-60。しかしこれも、よりよくなって欲しいという、編集部員の愛ゆえとご理解いただきたい。2024年4月で国内販売を終了するマツダ6のあとを継ぎ、マツダの最上級車として長く愛されるためには、必要な性能とも言える。
編集部員が気になった乗り心地の部分に関しては、現在マツダ社内で大幅な改善に向けて動いている……という情報も聞こえてきている。
タイミング的には、CX-80が登場するくらいとベストカーでは予想するが、その進化に期待したいところだ。
●マツダ CX-60 XD Lパッケージ(2WD) 主要諸元
・全長:4740mm
・全幅:1890mm
・全高:1685mm
・ホイールベース:2870mm
・車両重量:1840kg
・最小回転半径:5.4m
・最低地上高:180mm
・エンジン:直6DOHC直噴ディーゼルターボ
・総排気量:3283cc
・最高出力:231ps/4000-4200rpm
・最大トルク:51.0kgm/1500-3000rpm
・トランスミッション:8速AT
・サスペンション:F)ダブルウィッシュボーン R)マルチリンク
・タイヤサイズ:235/50R20
・WLTCモード燃費:19.6km/L
・価格:422万4000円
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実力が見えた結果が今の売れ行きでしょ。