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【ヒットの法則466】3代目は「あのランチア デルタ」からすっかり様変わり。優雅で妖艶なサルーンとなっていた

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【ヒットの法則466】3代目は「あのランチア デルタ」からすっかり様変わり。優雅で妖艶なサルーンとなっていた

2008年のジュネーブオートサロンでデビューした3代目ランチア デルタは、当時のランチアのコンセプトに則りエレガントなデザインに生まれ変わった。Cセグメントのコンパクトカーというより、上質な仕立ての5ドアサルーンという雰囲気があった。ここでは発表まもなくイタリアで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

リアシートは余裕たっぷり、まるでビジネスクラスだ
試乗会のベースとなるホテルの前に日本人プレスを乗せた小型バスが着き、スーツケースを順番に降ろしていた。するとそのすぐ後に1台の見慣れないクルマが停まった。何気なく眼を向ける。「なんて伸びやかな美しいスタイルなのだろう」と、思わず見入ってしまう。「このクルマは何?」と、数秒ではあったが真剣に考えた。そして、これこそが今回のターゲットであるランチア デルタとわかったが、事前に持っていたイメージとは、かけ離れていた。

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2006年パリサロンでの「デルタHPEコンセプト」と、2008年ジュネーブショーでの生産型を写真で見て知っているつもりだった。「ゴルフのようなCセグメントのハッチバック」と単純な理解をしていた。さらにデルタというと、どうしてもWRCで大活躍した初代のHFインテグラーレを思い出してしまい、それがまた新しいデルタに対して勝手なイメージを抱く原因になっていたようだ。

そう、目の前に現れた3代目デルタは、Cセグメントのこぢんまりした感じではなく、またモータースポーツのイメージとはほど遠い実に優雅で妖艶なものだったのだ。

後のプレゼンテーションなどで、これまでのイメージにとらわれていると理解できない「3代目デルタの本質」が明らかになってくるのだが、とにかくこの「美しい」という第一印象は強烈だった。

さて、その本質を順番に見ていこう。まず大きさについてだが、ランチアはこのクルマを「CDセグメント」であると言っている。全長が4520mm、ホイールベースは2700mmだが、他車と比べるとDセグメントの下に位置するというのが正確なところだ。ゴルフ(全長:4204mm、ホイールベース:2578mm)より、ひとまわり大きい。

プラットフォームはフィアット ブラーボと共用するが、ホイールベースはデルタの方が100mm長い。トレッドはブラーボとデルタは基本的に同じなので、自ずと走りの方向性がわかるというものだ。デルタはワインディングロードを攻めるというタイプではなく、ロングホイールベースのメリットを活かして、高速道路をゆったり流すのが得意なのだ。そもそも抱いていたイメージ、「Cセグメントのスポーティなクルマ」とは、まったく違うことがわかる。

スタイリングをじっくり見ていこう。ハッチバックともワゴンとも言い難いこのスタイルは「3カーズ in 1」だそうで、スポーツカー、エステート、サルーンが一体になったものであるとランチアは説明する。

ボディサイドを見るとリアドアの幅が広く大きいことがわかるが、これでオリジナリティにあふれた伸びやかさを実現している。そして、Cピラーからリアエンドにかけての造形は最大の見せ場で、このあたりのデザイン力には敬服するばかりだ。

また、こうしたボディスタイルにはツートンカラーがよく似合う。いや、ツートンのカラーリングによって、造形の良さが、より鮮明になっていると言ったほうがいいかも知れない。

先鋭的なエクステリアに対し、インテリアはどうなのか。ここには大いなる「意外性」があった。後席の居住性が非常によいのだ。リアドアが大きいのはデザイン上の都合だけではなかった。

実際に後席への乗降性は抜群に良く、また乗り込んで見ると、そのスペースの広さには驚かされる。リアシートは前後に10cmほどスライド調整が可能で、リクライニングもできる。いちばん後ろまで下げれば、前に足を投げ出してもフロントシートに触れることがないほど広い。さらにリクライニングさせれば、旅客機のビジネスクラス並みに寛ぐことができる。

ラゲッジスペースはリアシートのスライド量によって、380~465Lとなっている。参考までにDセグメントワゴンのBMW 3シリーズツーリングのラゲッジスペースは460Lだ。デルタはさすがに全長が4520mmもあるので、たっぷりとしたスペースを確保することができた。4人乗車の長距離旅行は、ラゲッジスペースの面からも、またリアシートの居住性の面からも、デルタにとって大いなる得意科目と言えそうだ。

デルタは2009年後半に日本上陸、続いてイプシロンの5ドアも
試乗したのは165psを発揮する2Lターボディーゼル搭載車で、6速MT仕様だった。走り出してまず感じるのは、ステアリングの操作感が軽いということ。ボディ全体も軽い印象を受ける。下から十分なトルクがあるディーゼル車をMTで運転すると、中低速域ではとかく「クルマが軽い」という印象を受けがちなのだが、このデルタには軽さに「しなやかさ」が加わっている。軽いだけだと色々なことに敏感に反応するようなイメージで落ち着かず、運転していて疲れるものだが、こうしたしなやかさがあればそんなことにはならない。

試乗コースが高速道路とコーナーがあまりないカントリーロードだったので、ひたすら「快適、快適」といった感じだった。優雅なスタイリングとパッケージ、ディメンジョンから想像したとおりの走り味だったと言えるだろう。

しかし、ワインディングロードで走ることができなかったのは非常に残念。いくらロングホイールベースの快適志向とは言え、そうした状況では「しなやかさ」に「粘り」がプラスされるのではないかと思うからだ。そのあたりを確認できなかったのは無念だ。

ところでドライバーズシートに座った印象だが、リアシートとは対照的にタイトでコクピット感覚が十分だ。数cmレベルだがキャビンが後方から前方へかけて絞り込むような造形となっており、またセンターコンソールの幅が広めであるためだろう。こうした後席と前席のスペースの造り分けは見事である。

さて、ランチアは欧州での好調な実績を背景にして2009年から本格的に世界展開を開始することになる。日本をはじめオーストラリア、ロシア、南アフリカ、メキシコなどにネットワークを構築していくのだ。

そしてデルタは来年後半、日本へ上陸することになる。その仕様はまだ欧州にも登場していないタイプになる。200psを発揮する1.8Lターボ(ガソリン)を搭載し、6速ATが組み合わされるものだ。その価格はマーケティング担当者によると、「ゴルフとアウディA3の間に入れたい」とのことだ。すると日本では300~350万円ということになるだろうか。そうであれば、かなり注目度が高いのではないかと思う。

そして、ランチアブランドは、デルタを皮切りに日本での展開を本格化することになる。その第二弾は来年9月に欧州で登場するニューイプシロンの5ドアだそうだ。イメージリーダーに続いて量販モデルの投入で、ランチアブランドを根付かせようという戦略だ。その成り行きは大いに注目される。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2008年9月号より)



ランチア デルタ 2.0 Multijet 165 CV 主要諸元
●全長×全幅×全高:4520×1797×1499mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1355kg(EU)
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:1956cc
●最高出力:165ps/4000rpm
●最大トルク:360Nm/1750rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT
●最高速:214km/h
●0→100km/h加速:8.5秒
※欧州仕様

[ アルバム : ランチア デルタ 2.0 Multijet 165 CV はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • ランチァ・デルタ即ちHFインテグラーレという、極端に偏ったイメージを必要以上に植え付けたメディアの罪は重い。
  • もともとランチアは高級車で、70年代80年代でもスポーティというより優雅な雰囲気を持つ上質なクルマを作っていたし、
    デルタだって最初はそうだった。
    だから新型もこれで正しい進化過程ではある。
    037のベースはモンテカルロだし、ラリー車に傾向した車両ばかり日本では人気が出ちゃっただけで。
    ストラトスでランチアってメーカーを知った人が多いからかもね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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