日本自動車工業会は3月15日、日本自動車会館くるまプラザ(東京都港区)で、西川廣人会長の定例会長会見を開催した。
西川会長は会見の冒頭、2017年度および2018年度の自動車国内需要見通しを発表。「今年度は519万台程度になると見ている。下期は新車効果が落ち着いて微減だが、需要は引き続き堅調。2018年度は510万台を超える需要(517.5万台)が維持される」と予測した。
BMW Motorrad、2018年度大阪・東京モーターサイクルショー出展概要
また、日本を先進技術の市場とする取り組みについて言及。「昨年の東京モーターショーをテクノロジーショーとして展開したが、今年は東京モーターフェス、2019年東京モーターショー、2020年のオリンピック・パラリンピックで、日本の先進性を世界にアピールしたい。自動運転についても、SIPの一環として実証実験が始まっている。自動運転に関わる大綱を取りまとめる意向、積極的に参画していく」意向を示している。
そして、同日開催された理事会において、次期会長にトヨタ自動車の豊田章男社長が内定されたことを発表した。5月17日の理事会で正式に就任する予定。豊田章男社長が自工会会長に就任するのは、2012年5月~2014年5月に続き2度目。
今回が最後の記者会見となった西川会長は、任期中の出来事を振り返り、「池史彦前会長から受け継いだ時は、百年に一度の大変革期にある中、日本の先進性をアピールする方向性が共有されていて、その通りに進めばよいと思っていたが就任直後、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ政権誕生とTPPからの離脱、5月にNAFTA再交渉、アルミと鉄鋼の輸入関税増税など、任期中にいろいろなことがあった。自由貿易への働きかけをしてきたが、政府のご努力の結果EPAの大筋合意、TPPのアメリカを除く大筋合意に至ったことは喜ばしい」と述べた。
また、日本の自動車業界の今後については、「2年間国内需要は堅調だったが、その中で明らかに変革が始まっている。自工会としては技術の先進性のアピールを試みてきたが、東京モーターショーである程度のステップを作れたのではないか。その直前に自らが所属する日産自動車が完成検査の問題を起こし水を差してしまったが、豊田章男が盛り上げてくれた。流れが作れたところで豊田さんにバトンタッチできて嬉しい。百年に一度の変革期にすでに入っているが、その流れに押されるのではなく作れるようにこれからも尽力したい。自動化・電動化は自動車業界を超えて連携が進んでいるが、これからはBtoBからBtoCへの流れに移っていく。そういうノウハウを持っている会社との提携が今後もっと進む。その中で、自動車メーカーが主導権を持つ部分とそうではない部分が明確になっていくだろう」とコメントしている。
そのほか自工会は、「2018年春季交通安全キャンペーン」を4月6日から5月5日まで、政府が実施する「春の全国交通安全運動」と連動して実施することを発表。四輪車については「後席を含めた全ての座席のシートベルト着用促進」、二輪車は「ヘルメットの正しい着用促進」をテーマとする方針を掲げている。
質疑応答における主な一問一答は下記の通り。
Q:春闘は3%アップという政府の目標が示されてやりにくかったのではないか。またアメリカへの対応は。
A:3%をそのまま受けるかは別として、そういう政府のマクロのメッセージがあったことは分かりやすかった。今回は経済の好循環を期待されていることを踏まえながら各社が検討しており、目標と結果が直接結びついたということではないだろう。アメリカの鉄鋼とアルミの件については、まだ途上のため明確なことは言えない。動静を注目していきたい。関税アップはサプライチェーンの中で各社のコストアップにつながる。
Q:アメリカのアルミと鉄の関税アップの影響と、イギリスの動向について。
A:特に鉄はできる限り現地化しようと各社努力している。イギリスについては短期的業績に影響を受けないよう配慮していただきたいということに尽きる。
Q:春闘でトヨタがベア非公表としたが、横並びと労使協調の慣習打破について自工会としてどう思うか。
A:個社の状態によって春闘の結果は変わるので、横並びということではないだろう。
Q:今後の自動運転やコネクテッドカーに向けた有能な人材の獲得と働き方の多様化について。
A:働き方は役割によっていろいろ。自動車業界は従来からの機械工学に加えてソフトウェアの人材が必要になっているが、人材獲得のうえでは我々がより柔軟性を持つことが望ましい。
Q:春闘の3%という目標は意識したのでは?
A:もちろん政府がそういう期待をしていると認識しているが、個社では全く別の次元で交渉している。
Q:消費税10%に伴う駆け込み需要と反動減への対策と平準化について。
A:2018年度の需要見通しにはそれを入れていない。2019年10月に消費増税の見通しだが、2019年度税制で車体課税見直しを要望しているが、消費増税と時間のずれがある。だがまずは、2019年度の大綱に我々の考えを入れてもらうことに集中して取り組みたい。
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