AWDといえばスバル。雪道といえばスバル。昨今は各メーカーからさまざまなタイプの“ヨンク”が売り出されておりますが、スバルとはいささか姿勢が違う。何しろ同社のAWD比率はグローバルで見れば、軽く9割を超えているのです。これほどヨンクに特化したメーカーも珍しい。
同社が初代レオーネのエステートバンにAWDを採用したのが1972年。思い起こせばこの年はマツダがシャンテを、ホンダは初代シビックを、そしてトヨタが初代レビン/トレノを売り出したエポックメイキングともいえる年なのです。
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連合赤軍によるあさま山荘事件も、日本赤軍のテルアビブ空港乱射事件もこの年ですね。激動の幕開け元年、とでも申しましょうか。そんなスバルのAWD3兄弟に雪道でイッキ乗りしてまいりました。
※本稿は2021年2月のものです
文/フェルディナント・ヤマグチ 写真:ベストカー編集部 撮影/平野 学
初出:『ベストカー』 2021年3月26日号
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■まずはステーションワゴンのレヴォーグから!
最初に乗ったのは昨年フルモデルチェンジして2代目となったレヴォーグSTI Sport。日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車両ですからね。悪いワケがない。
レヴォーグSTI Sport(409万2000円)…昨年10月登場の2代目レヴォーグ。今回の相棒となったのはその最高グレードとなるSTI Sport EX。スバル初のZFザックス製の電子制御式サスペンションを装備し、スイッチひとつで切り替え可能な「ドライブモードセレクト」を装着
先代で1.6Lと2Lの2種類から選べたターボエンジンは1.8L水平対向4気筒ターボに一本化され、選択肢は狭まってしまいましたが、このエンジンがもの凄くいい。
なんたってあーた(故大橋巨泉調)、先代の1.6Lより補機類込みで5kgも軽量化されているのです。
スバル自慢の無段変速機、スポーツリニアトロニックと相俟って、出足から快適な加速であります。
凍結したコーナーにかなりの速度で進入しても決して破綻することがなく、すべては“クルマにオマカセ”の感覚で雪道を攻めることができます。
凍結しかけたコーナーでも安心して快適に雪道を攻めることができるレヴォーグSTI Sport。ボディの剛性感もバッチリ!
途中ダンプの凶悪チェーンに穿り返されて、ガタガタに荒れた路面があったのですが、シートに嫌な振動が伝わることもなく、実にスムーズにいなしてくれました。
聞けば独ZF社製の電子制御ダンパーが採用されているとのこと。
ちなみにZFってZahnradfabrikの略なんですよね。直訳すると“歯車工場”。名は体を表すと申しますか、ドイツ人の質実剛健さが伝わってまいります。
しかし、いくら足回りがよくても、それを受け止めるボディが悪ければクルマはガタピシ泣きを入れてきます。スバルグローバルプラットフォーム+フルインナーフレーム構造による高剛性化が効いていることは言うまでもありません。
雪道は鏡面のようにツルツルというイメージがありますが、実は結構荒れていることが多いのです。ガタピシ泣くクルマを長時間運転すると疲れます。雪道飛ばしてスキー場に着いた時はヘロヘロ……なんてことになったら目も当てられません。
スノースポーツを嗜まれる方には、レヴォーグのように“疲れないクルマ”を強く強く推奨するものであります。そうそう。新しく搭載されたアイサイトX(エックス)もいいですね。
高速道路上ではもうほとんど自動運転と言っていい仕上がりです。コーナー前で自動的に減速してくれるのもありがたい。これがないとホントに怖い思いをしますからね。
■しなやかで乗り心地のいいSUV、フォレスター
お次はフォレスターSPORT。こちらは2018年登場の5代目フォレスターに、先にベタ褒めしたレヴォーグと同じCB18型ターボエンジンを搭載したモデルになります。
フォレスターSPORT(328万9000円)…2018年6月に登場した現行型5代目フォレスター。デビュー時は2.5L水平対向NAと2Lマイルドハイブリッドのみだったが、昨年10月にレヴォーグと同じ新開発の直噴1.8Lターボを積んだ「SPORT」が2.5L NAに代わって登場している
CB18の「CB」は広報の発表で「Consentration Boxer」の略とされていますが、社内的にはConsentration&Compact Boxerで通っているんですよね。
でも、それを略すと「CCB」になってしまい、ロマンチックが止まらない状態になってしまうので、CBにしたという経緯があるのです。
(もちろんウソです)
フォレスターはアウトバックが受注を終了した現在、スバルの国内最大モデル。やはり長距離移動は大きいクルマにかぎります。ラクさが違いますもの。
そして国内スバル最大のモデルは、スバルで最も乗り心地のいいクルマであります。ゆったりとしなやか。ガツガツしていない。
どうもスバルに乗ると自分自身が戦闘モードに入ってしまい、抜かれたら抜き返すという困った運転になりがちなのですが、ことこのクルマに関してはそれがない。
ゆったりたっぷりのんびり。思わず、かの「ホテル三日月」のCMソングを口ずさみたくなります。
とはいえフォレスターもスバルの看板を背負ったSUV。大きいからといって鈍重になることは決してありません。
ゆったりとしていてしなやかな乗り味を持つフォレスター。もちろんアクセルを踏み込めばアグレッシブな走りを披露することも可能だ
ひとたびアクセルを踏み込めばガラッと表情を変え、アグレッシブな走りも可能になります。雪道でも安心して飛ばせるのです。最低地上高が高いので、多少雪が深くても安心です。
レヴォーグ同様に荒れた路面の“いなし”もいい。いいですよ、マジで。これで328万9000円なのですからね。お買い得です。
フォレスターにかぎらず、スバルのクルマは全般的に価格設定が低めです。つまりはどれを買ってもお買い得。これにはディーラー経営者の皆様が……と、今回は試乗編なので販売に関してはまた別の機会にお話ししましょうね。いろいろエグい話があるんですよ(笑)。
■視界のよさと雪道の出足抜群なインプレッサスポーツ
さて最後に乗ったのはインプレッサスポーツe-BOXER。2016年登場の5代目インプレッサにマイルドハイブリッドを搭載したモデルになります。
インプレッサスポーツAdvance(278万3000円)…スバル初のSGP採用車として2016年10月に登場した5代目インプレッサスポーツだが、昨年9月の一部改良でXVに続いて新たに2Lのマイルドハイブリッドを積んだe-BOXERモデルが追加設定されている。雪道との相性も良好だ
スバルはe-BOXERを決して「ハイブリッド」とは表現せず(カタログやウェブサイトのどこを見てもハイブリッドとはひと言も書いていません)、「モーターアシスト」と言い張っていますが、145ps/19.2kgmのエンジンに13.6ps/6.6kgmのモーターを組み合わせた、紛うことなきマイルドハイブリッドです。
モーターでアシストする馬力はエンジンの10分の1にもなりませんが、トルクはエンジンの3分の1を超える強大なものです。だから出足が非常にいい。
雪道で不用意にアクセルを煽ると怖い思いを……することはありません。電制が利きまくりで何も起きません。
インプレッサで特筆すべき点は、なんといってもその視界のよさでしょう。ともかく視界が広い。吹雪の日には何よりも視界が大切なんですよね。視界の広さはイコールで安心感に繋がります。
ともすれば地味な存在になりがちなインプレッサスポーツだが、その実力は確かなもの。4WDとマイルドハイブリッドの組み合わせは雪道でも安全・安心な走りを約束する
■まとめ
ということでAWD界の覇者スバル3兄弟のイッキ乗り。どのクルマにも共通して言えるのは「安心」ということです。安心して走れる、安心して曲がれる、安心して止まれる。
これは雪道ドライブで非常に重要な要素です。今年は雪が多く、3月でも思わぬ大雪がドカッと降る可能性があります。雪道を行くならスバルです。
クルマを買う予定のある方は、スバル車を候補に入れてみてもいいかもしれませんね。
やはりスバル AWDの実力は侮りがたし!
レヴォーグSTI Sport、フォレスターSPORT、インプレッサスポーツAdvanceの主要諸元
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