■ミニバン×SUVを本気で突き詰めると…。
近年、「ミニバン×SUV」というトレンドが徐々に広がりを見せています。昨今のSUV人気を捉えつつ、中身は多人数乗車を誇るミニバンという、それぞれの良さを組み合わせたモデルです。
そんななか、トヨタが北米で展開するミニバン「シエナ」にも幻のSUV仕様が存在しました。
日本では、以前から「ミニバン×SUV」という組み合わせは、三菱「デリカD:5」が存在したほか、2019年にはホンダ「フリード」にSUV風グレードの「クロスター」が追加されていました。
また、海外では三菱「エクスパンダークロス」やトヨタ「シエンタクロスオーバー」など、日本では販売されていないモデルもいくつか存在します。
そうしたなかで、前述のシエナはトヨタが北米市場を中心に展開しているミニバンです。
日本市場において、トヨタのミニバンといえば、シエンタや「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」「アルファード/ヴェルファイア」のほか、送迎ニーズ向けに販売される「グランエース」をラインナップ。
一方でこのシエナは、全長約5095mm×全幅約1983mm×全高約1795mm(2020年モデル)とその大きさに圧倒されます。
このシエナを本格SUV仕様に仕上げた特別なモデルが2015年にお披露目されていました。
アメリカのカリフォルニア州で開催されたアフターマーケットの祭典「SEMAショー2015」で「トヨタ アルティメット ユーティリティビークル」(以下、UUV)という名のシエナが公開されたのです。
このモデルは、シエナの巨大なボディに、ピックアップトラックのトヨタ「タコマ」のフレームを組み合わせたコンセプトカーで、トヨタが展開する「5大陸走破プロジェクト」の北米制覇の際に9台のトヨタ車の司令塔としての役割を果たすために制作されました。
UUVは、シエナのボディを使用していますが、その理由は、車内の電子機器を搭載するためにもっとも広い室内空間を確保できるからだといいます。
UUVの車内には、モバイル衛星テレビ受信機、Wi-Fi、複数のUSBポート、17インチモニター、60インチのソニー製LEDテレビ、2500WのJBLオーディオシステム、高精細録画機能付き暗視カメラシステムなど、過酷な大陸走破プロジェクトを支える機能が搭載されています。
しかし、広い室内空間を持つシエナですが過酷なオフロード走行を想定して設計されているわけではないため、シエナの補強したボディ構造にタコマの四輪駆動フレームを組み合わせました。
また、優れた最低地上高を進入・離脱角度を実現するために、車高を4インチアップさせた4リンクロングトラベルサスペンションを採用。
モンスターエナジー社製の22インチオフロードホイールとニットー製タイヤが、オンロードでもオフロードでもパワーを発揮します。
また、シエナの純正フロントドアとリアスライドドアは、大径化したタイヤの操作性の妨げになっていましたが、フロントとリアスライドドアを再設計することで、UUVのオフロード性能を損なうことなく乗降性を向上させました。
※ ※ ※
2015年に登場された幻ともいえるUUVは、あくまでも5大陸走破プロジェクト用に制作されたものです。
しかし、ミニバンの居住性(積載性)や多人数乗車、そしてSUVやピックアップトラックの悪路走破性能を組み合わせたトレンドは、2020年現在に各メーカーから市販化されるほどのニーズがあるということが分かります。
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あとはデザインが優れていたらなお良い