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スーパーチャージャーが「別物」に変える モーリス・マイナー(2) 驚くほどのチューニング効果

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スーパーチャージャーが「別物」に変える モーリス・マイナー(2) 驚くほどのチューニング効果

アルタ・ヘッドの効果が表れる活発な走り

モーリス・マイナーのシャシーの可能性を信じ、レース用エンジンもアルタ社から提供された。圧縮比を9.5:1へ高め、大径の吸気バルブを装備し、2基のキャブレターを大型化。お望みなら、高いギア比のデフも装備できた。

【画像】足りないのは馬力だけ モーリス・マイナー 後継のミニ 同時期のオースチンとフォードも 全120枚

理想的な状態なら、52ps以上の最高出力を発揮。最高速度は151km/hに達したという。このレース用エンジンを組むためのキットは、93.1ポンド。ただし、パワーアップに伴い必要だった、クランクシャフトのバランス取りなどは含まれていなかった。

オーバーヘッドバルブ化するアルタ・ヘッドの効果は、しっかり走りに表れた。レーシングドライバーのアラン・フォスター氏が所有するマイナーを、1954年に試乗したオートスポーツ誌のジョン・ボルスター氏は、「爽快」だと表現している。

「回転数を維持すれば、小さなクルマは非常に活発。一般道では、オリジナルの最高速度を大幅に上回るスピードへ、簡単に達します。エンジン音の大きさは殆ど変わりませんが、鋭く加速させると、より力強い排気音が放たれます」

「動力性能の向上は、疑いようがありません。優れたロードホールディング性を、ついに発揮することが可能になりました」

「3名の乗車で、郊外の一般道を平均96km/hで移動できています。わたしが見た限り、すれ違ったドライバーの何人かは、信じられない、という表情を浮かべていましたね」。とボルスターは綴っている。

オリジナル・エンジンより燃費も良好

そのクルマは、シングル・キャブレターだった。ツインSUキャブにしても、メリットはないと同誌には綴られている。デリントン社は、5ps前後増強できると主張していたが。

この試乗に合わせて実施された、メーターの誤差を補正した計測では、平均での最高速度は123.1km/h。これは、当時の1.0Lエンジンを積むサルーンとしては、驚異的な速さといえた。0-80km/h加速は13.4秒、0-96km/h加速は20.4秒が記録されている。

燃費は、104km/h巡航での平均で10.6km/Lだったようだ。ボルスターの記事では、キャブレターのニードルを調整することで、15.0km/L以上まで伸びるとも記されている。これは、サイドバルブのオリジナル・エンジンより、優れた数字といえた。

レイ・ニューウェル氏がオーナーの、ワインレッドに塗られた1949年式マイナーには、アルタ社製のヘッドが載っている。特別な加工なしに、標準のマニフォールドを利用しながらシングルSUキャブレター化した、典型的なアルタ仕様といえる。

チューニングの効果は、驚くほど。エンジンはエネルギッシュに回転し、どのギアを選んでいても躍動的に走る。反応は鋭く、もたつくことなく必要なパワーが発揮される。

ノーマルのマイナーより控えめにアクセルペダルを傾けても、80km/h前後での巡航が可能。90km/hを超えても、軽々とスピードを乗せていく。タイミングを見計らい、フルスロットルを与えていた体験とは雲泥の差だ。

チューニングでフィーリングは完全に変わる

坂道へ差し掛かっても、シフトダウンの必要はなし。むしろ、加速していく余裕すらある。後期のAシリーズ・エンジンを搭載したマイナー 1000と同様に、洗練性を保ったまま、流れの速い郊外の道を運転できる。

プッシュロッドの金属的なノイズが、キャビンへ伝わる。サイドバルブとは異なる響きで、耳に心地良い。アルミ製のアルタ・ヘッドを積んだマイナーは、約20台が現存すると考えられている。

「このチューニングで、クルマのフィーリングは完全に変わりました。とても扱いやすくなりますよね」。とニューウェルは説明する。

「以前に乗っていたマイナーには、デリントンのシルバートップ・キットが組まれていましたが、比較にならないほど違います。アルタ・ヘッドの装備は、918ccのマイナーから本来のパフォーマンスを引き出す、最も簡単な方法といえるでしょう」

「最高速度以上に、中間加速の向上が大きいです。3速でのたくましさは、とても印象的なものですよ」

このヘッドの登場により、一層の動力性能を追求することも可能になった。キース・ラック氏が所有する、プラチナ・グレーの1949年式マイナーには、スーパーチャージャーが載っている。

エンジンはバランス取りされ、軽量化。4分岐の排気マニフォールドが組まれ、SUキャブレターの隣にショロック社製のスーパーチャージャーが追加されている。ブースト圧が4psiの時の最高出力は、66psに達するそうだ。

本調子でなくても簡単に100km/hへ到達

あいにく、ラックのクルマは不調だった。混合気の調整が悪く、プラグも汚れていた。それでも、勇ましいサウンドを放ちながら、ストレートでは簡単に100km/h超え。自然吸気より、たくましいことを簡単に体感できる。

「スーパーチャージャーは、まったく別物に変えます」。ラックが微笑む。

「アルタ・ヘッドのメリットとして、運転のしやすさが得られたうえに、ブロワーがトップエンドの力強さを加えます。この組み合わせで、一層豊かなトルクを引き出せ、現代の交通環境にも対応できます。坂道でも、問題なく速度を維持できますよ」

本調子ではなかったとしても、アルタ・ヘッド+スーパーチャージャーというタッグの魅力は大きい。雨天で浮かない気分を吹き飛ばすほど。

同時に、自然吸気版の優秀ぶりにも感心させられる。適度に活発で、ドライバーに優しい。70年以上前に、高く支持されたチューニング・メニューだったという事実を、理解できる。

一方で筆者は、オーバーヘッドバルブのシリンダーヘッドを載せた、ウーズレー・エンジンの活発さも知っている。得られる動力性能や全体的な特徴は、アルタ・ヘッドを積んだマイナーのエンジンと、非常に良く似ている。

1948年に、モーリス・モーターズが望ましいエンジンを準備できていたら。理想的なマイナーを、当初から量産できていた可能性は高い。優れたアルタ・ヘッドは、そんなことを想像させるスグレモノだった。

協力:モーリス・マイナー・オーナーズクラブ、グラハム・ホルト氏

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