無機質な車内に華やぎを与える
クラシックカーのダッシュボードに一輪挿しが装着され、花が飾られているのを見たことはあるだろうか? この「フラワーベース」というアイテム、じつは自動車が誕生した1800年代後半にはすでに登場しているというのだ。知れば知るほど奥深く、素敵なストーリーがあるフラワーベース。今回はそんなアイテムの歴史を紐解く。
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優雅なおしゃれアイテムだった
クルマのダッシュボードに花を飾るという文化は、欧米のクラシックカーを中心に発展した。1850年代にはフラワーベースと呼ばれる一輪挿しがカーアクセサリーとしてポピュラーだった。フォルクスワーゲン「ビートル」には、すでに1950年代にメーカー純正のアクセサリーとしてフラワーベースが用意されており、車内に花を飾るというカルチャーはかなり定着していたことがうかがえる。
じつはアメリカでもほぼ同時期となる1950年代に高級陶磁器メーカーのフラワーベースがディーラーオプションとして用意されており、愛車に花を添えるという文化は決して珍しいものではなかったようだ。
歴史を辿ってみてわかった驚きの誕生理由とは
そんな自動車用のフラワーベースだが、歴史を遡ってみると、想像とは全く異なるちょっと変わった歴史が見えてきたのだ。じつはフラワーベースに類するアイテムは、自動車が誕生した1800年代の後半にはすでに登場している。ところがこの時代の花瓶は、花を一輪だけ活けるのではなく、香りの強い花を数輪詰め込んで使用していたことが判っている。
これは当時の自動車がまだオイルの燃える匂いやバッテリー液の匂いが強かったことが影響している。現代のように車内の換気などの設備が整っていないため、車内はエンジンの匂いや乗員の匂いが充満していたのだ。フラワーベースの花は、これに対する芳香剤のような役割を果たしていたと考えられる。文献によると、1895年にヘンリー・フォードは自動車用の花瓶を「Auto Vase」と命名し、販売したという記録が残っている。
こうして必然から生まれたフラワーベースは、戦後になると、その優雅な雰囲気からおしゃれなカーアクセサリーとして発展することとなるのだ。クリスタルガラスや有名陶磁器メーカー製など高級な花瓶も登場し、無機質な車内に華やぎを与えることとなる。ところが実際の花を活けるためには花瓶の中に水を入れる必要があり、手間のかかる贅沢であることから、徐々に自動車が日常の移動手段となっていくのに並行して衰退していくこととなる。
リバイバルで今でも残る一輪挿しのカルチャー
そんな中、フォルクスワーゲンは1960年代まで純正オプションとしてフラワーベースがリリースされていたこともあり、多くのビンテージ・フォルクスワーゲンのファンがこのフラワーベースに花を飾る文化を継承してきた。そんな背景もあって、1998年に登場した「ニュービートル」には透明プラスティック製ながらフラワーベースが標準で装備されることとなったのだ。
また2000年前後に日本のダイハツで発売された軽自動車にも、「フラワーポット」なる商品がオプションパーツとしてリリースされているという噂も。こんなご時世だからこそ、あなたも愛車のダッシュボードに花を飾ってみてはいかが? ちょっとだけ優雅な気持ちになること間違いなし!
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みんなのコメント
女性仕様車のはしりとも言えるバージョンが登場しましたが、
このクルマのセンターピラー(車内左側)にも、その「一輪挿し」が
装備されておりました。
同車は座間のヘリテージコレクションにも収蔵されておりますし、
クラシックカーのイベントでも、個人所有のこの貴重な車両が来場
したりしております。
(某TV番組にも登場したピンク/白ツートーンのクルマですね)