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三菱 エクリプススパイダーは大胆なスタイルで“アメリカンスポーツ”の真髄を味わえる快適クルーザー【愛すべき日本の珍車と珍技術】

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三菱 エクリプススパイダーは大胆なスタイルで“アメリカンスポーツ”の真髄を味わえる快適クルーザー【愛すべき日本の珍車と珍技術】

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、高い完成度でアメリカンスポーツカー文化を体験できたオープンモデル、エクリプススパイダーを取り上げる。

【画像ギャラリー】 シャープなボディラインで表現した力強さと機能美を誇るエクリプススパイダーの写真をもっと見る!(9枚)

文/フォッケウルフ、写真/三菱

北米発のオープンスポーツモデルとして日本へ上陸

 今回クローズアップする「エクリプススパイダー」は、2代目エクリプスの派生モデルとして1996年に登場したオープンモデルだ。

 エクリプスは北米専用のスポーツクーペで、初代当時クライスラーとの合弁企業DSM(ダイヤモンドスターモーターズ)にて生産された。アメリカ市場における“カジュアルに楽しめるオープンカー”需要に応える形で生まれたのが、このスパイダーである。

 日本では1996年に初めてスパイダーが導入され、翌1997年にも再輸入された。2年間で合計約750台が販売され、同時期に輸入されたクーペとあわせて「北米三菱スポーツの象徴」として知られる存在となった。

 その「アメリカンサイズの存在感」と「直線的で力強いスタイリング」は、当時の国産オープンスポーツとは一線を画していた。

 初代と2代目は好調な販売を記録したが、3代目登場時には市場環境の変化によって日本への導入は見送られた。ミニバンやSUVブームのなかでスポーツカー市場が縮小傾向にあったことが背景にある。

 しかし、2003年に行われた東京モーターショーに「エクリプススパイダー」が参考出品されたことで再び注目を集め、ついに日本導入が実現した。これはスポーツモデルに対する根強いニーズの存在と、グローバル戦略車導入におけるひとつの成功例を示した出来事でもあった。

 エクリプススパイダーの輸入にあたっては、灯火類や排ガス規制といった日本の安全・環境基準に適合させつつも、左ハンドル仕様を含め“北米モデルらしさ”を極力保持。そのキャラクターを余すことなく体感できるよう配慮されている。

 デザインは、流麗で柔らかなラインを特徴とした従来型から一転してシャープでエッジの効いた造形を採用している。フロントマスクはワイド&ローを強調し、ヘッドランプからフロントバンパーにかけての立体的な造形が力強い印象を演出する。こうした作り込みが、「機能美=力強さ」というアメリカ的デザイン潮流を実感させる要素と言っていい。

可変吸気機構付きV6エンジンが余裕のある走りを実現

 ボディサイズはユーノス・ロードスターなどの国産オープンスポーツに比べて明らかに大柄であり、その大きさが存在感を演出している。1760mmという広い車幅と2560mmのロングホイールベースがもたらすゆとりは、欧州的なコンパクトなオープンモデルとは異なる、アメリカンスポーツ独自の価値観を体現している。

 オープンモデルのキモとなるソフトトップは、ボディ全体のラインとの一体感を重視してデザインされており、クローズ時にもクーペ然としたシルエットを崩すことがない。収納時もリアのボリューム感を損なわないよう工夫されており、「スタイルと実用性の両立」を実現している。

 エッジの効いた造形で力強さを表現しつつ、オープンモデルならではの開放感を融合したこのデザインは、アメリカンスポーツらしい迫力と存在感を強調する方向性でまとめられた、当時の北米市場の嗜好を色濃く反映したものだった。

 走行性能についてもアメリカンスポーツらしい「余裕あるパワーと安定感」や「快適なロングツーリング性能」に主眼が置かれている。

 搭載されるパワーユニットは、可変吸気機構を備えた6G72型 V6SOHC 3Lエンジンだ。最高出力196ps、最大トルク267Nmで、数値的には過激さを追求したものではないが、実用回転域での力強いトルク特性が際立つ。日常的なシーンで多用する低・中速からしっかりと厚みのあるトルクを発揮するので、ドライバビリティのよさが実感できる。

 さらにレスポンスよくスムースに吹け上がる特性によって、爽快感ある加速フィーリングが味わえる。こうした特性もアメリカンスポーツ的な余裕ある走りの象徴と言えるだろう。

 オープンボディ特有の課題である「剛性不足」に対応するため、ボディパネルの大型一体成型化を採用。これにより先代モデルと比較して曲げ剛性は約65%、ねじり剛性を約9%、それぞれ高めている。

 剛性強化の効果はハンドリング性能の向上のみにとどまらず、走行中のボディ振動を抑制し、オープンモデルにありがちなゆがみ感やきしみ音を低減する効果を持つ。さらに製造精度を高めることで、風切り音や水漏れへの対策も施され、快適性の面でも確実な進化が図られている。

 また、サスペンション各部は日本市場向けに入念なチューニングが施され、不快なロードノイズの低減も図られている。ボディの強化、サスペンション特性の最適化によって、エクリプススパイダーはオープンカーならではの開放感とクーペ並みの安定性、快適性を両立したモデルに仕上げられている。

スイッチひとつでどこでもイージーに始まるオープンエア体験

 エクリプススパイダーは、煩雑な操作を必要としない電動ソフトトップを採用している。サンバイザーを下げ、ラッチハンドルを解除後、フロアコンソールに設置されたスイッチの「OPEN」を押すだけで、左右のドアウインドウとクオーターウインドウが自動的に下降。その後、モーター駆動によってソフトトップが格納される。最後にサンバイザーを戻せば、爽快なオープンエアドライビングが始まる。

 再びクーペとして走りたい場合は、同じくフロアコンソールの「CLOSE」スイッチを押す。ウインドウが自動的に下降した後、ソフトトップがモーター駆動で閉じ、最後にサンバイザー裏のラッチハンドルを固定すれば完了だ。煩雑さは一切なく、短時間で快適なクローズド空間が復元される。

 こうした一連の操作は、走り出す前の短い時間で完結し、ユーザーにオープンカーを「気軽に」楽しめるという体験を提供してくれる。さらに、トップクローズ時にはクーペとしての遮音性・気密性が確保されており、長距離走行や高速巡航でも快適なキャビン空間を維持できるのが特徴的だ。

 数ステップの簡単操作でクーペからオープンへと変貌できる電動ソフトトップ。快適性を重視したインテリア。剛性強化されたボディや安心感のある走りを実現する足まわりの特性。

 さらに、低中速域から力強いトルクを生み出し、スムースで余裕ある加速フィールを提供するパワーユニット。こうしたすべての要素が高い次元で調和され、日常からロングツーリングまで幅広いシーンでドライバーにドライビングプレジャーを提供する。

 そのキャラクターは、日本市場において「アメリカンスポーツカー文化」を体験できる数少ない選択肢であり、同時に北米と日本の嗜好の違いを示すひとつの象徴的な事例と言っていいだろう。

文:ベストカーWeb ベストカーWeb
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