他に例がないほどの充足感を生む3台
英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権の現場では、日程の6割ほどが終わった時点で、一旦静まる時間がある。周囲へ響くタイヤのスキール音やエンジン音は消え、審査員は自身の配点へ集中し始める。
【画像】2023年の「トップ3」 ポルシェ911 GT3 RS アリエル・アトム 4R ランボ・ウラカン・ステラート 全109枚
アングルシー・サーキットのミーティングルームには、キーボードのカタカタという音が充満する。審査員の独り言や、ため息も聞こえる。
ノミネートした11台は、すべて2023年を代表するドライバーズカーだ。採点は簡単ではない。熟考を重ね、自身の答えを出していく。
簡単に点数が決まるモデルもある。ステアリングホイールを握った瞬間から、長所と短所をすぐに理解できるような場合は。しかし、頭を悩ませるモデルの方が多い。性格や特徴を洗い出し、順位付けするには充分な時間が必要になる。
最終的に示される審査員の配点に、大きな開きが出ることは珍しい。AUTOCARとしてのコンセンサスが導かれる。特に2023年のトップ3は、共通した見解を得られた。
11台のノミネート車両で合計200点を超えたのは、ポルシェ911 GT3 RSとアリエル・アトム 4R、ランボルギーニ・ウラカン・ステラートの3台だけ。ポルシェ911 ダカールは、2ポイントの僅差で4位に決まった。
ドライバーへ喜びをもたらすプロセスはそれぞれ異なるが、他に例がないほどの充足感を得られるという点では共通していた。公道であろうと、ずぶ濡れのサーキットであろうと、この3台は審査員5名の気持ちを完全に奪った。
公道をわが物顔で駆け回る911 GT RS
珍しいことに2023年は、優勝に輝くであろうモデルが審査の序盤で見えていた。最終的な得点には圧倒的な差があり、結果へ疑いの余地はなかった。最高のドライバーズカーだと説得させる方法が1つではないことを、見事に証明してみせた。
5名の審査員の4名が、優勝した1台へ最高得点を与えていた。残りの1人も、3位に順位付けしていた。2位から6位タイまでは8ポイント差で固まっていたが、優勝したモデルは、2位へ16ポイント差を付けていた。
定期的なAUTOCARの読者なら、もしかすると優勝車を予想できるかもしれない。
もったいぶるのはこのくらいにして、本題へ移ろう。まずは2022年のBBDCを制したポルシェ911 GT3の進化版、911 GT RSから触れていこう。
通常なら、前年と同一のモデルがノミネートするのだが、今回はよりモータースポーツへ接近した最新版を招聘した。11台の中で最も注目度の高い1台といえ、空力特性へフォーカスした容姿は、走行性能に疑いの余地がないことを誇示するかのよう。
カレラカップへ出場する、本物のレーシングカーにも見えるほど。走りを追求しすぎるあまりシリアスになりすぎ、一般道での振る舞いに犠牲が及んでいるのでは、と心配したくなる。
ところが実際は、ウェールズ州の起伏の多い公道をわが物顔で駆け回ってみせた。審査員の1人、リチャード・レーンは特に強い感銘を受けたらしい。
一度グリップすれば吸い込まれるように旋回
「心配したほど、公道への妥協はないですね。驚くほど繊細で軽く、機敏に操れます。ターンインは夢心地。トラクションは間違いなし。こんな天気とセミスリックみたいなミシュランの組み合わせでも、ドライバーへ自信を与えます。夢中になれました」
筆者も同意する。背骨へ衝撃が走り視界が霞むのでは、と身構えるような凹凸でも、ダンパーを緩めれば滑らかに通過。ステアリングはクイックでありながら、神経質さとは皆無でもある。反応の正確性と、手のひらへのフィードバックは間違いない。
トラクション・コントロールの制御と介入も素晴らしい。リアエンジン・レイアウトならではの特性を活かし、テールを振り回しながらノーズの狙いを定め、鋭い脱出へ繋げていける。
もちろん、911 GT RSの本領が発揮されるのはサーキット。ここで真の強みが表出する。今年はヘビーウェットで、すべてを開放することは叶わなかったが、それでもドライバーを強く惹き込む走りを披露した。
2日目のアングルシー・サーキットでは、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2は危険だと判断。より溝の多い、グッドイヤーへ履き替えての審査となった。
フロントの軽い重量配分が影響し、コーナーの侵入ではライバルより苦戦していた。だが、一度グリップすれば吸い込まれるように旋回する。気持ちまで吸い込んでいく勢いで。すっかり虜になり、筆者は予定より相当多く周回してしまった。
他のモデルでは得られない鮮烈な刺激
制限速度に縛りがないサーキットでは、輝かしいフラット6を存分に堪能できる。壮観なサウンドを奏でながら、ドライバーの後ろでエネルギーを放出する。タイトコーナーでは、目に見えず働くダウンフォースがジワジワと伝わってくる。
911 GT RSから発せられるすべての感覚が、思い切り振り回す自信へ繋がる。テールスライドにも、気兼ねなく持ち込める。ただし、細かいシャシー設定の世界へ足を踏み出すと、どっぷり浸かって抜け出せなくなるかもしれない。
「ポルシェ・マニアは、設定を微調整できることを好むでしょう。自分の頭では、すべてのボタンが生む効果を理解できませんが」。と、バプラートが皮肉っぽく口にする。
アトム 4Rには、そんな複雑さはない。ターボブーストとトラクション・コントロールは調整できる。スパナを扱えれば、ダンパーの減衰力も選べる。だがそれ以外、基本的にはどのクルマでも共通した体験を得られる。
過去のBBDC選手権を2度制しているアトム 4の進化版、「R」には、巨大なリアウイングが追加されている。ホンダ製直列4気筒ターボから、さらなるパワーが引き出されている。しかし、他のモデルでは得られない鮮烈な刺激は変わりない。
「落ち着きが素晴らしい。操縦性の調整域の広さや、コミュニケーション能力は秀抜」。アトム 4Rから降りるマット・プライヤーが、微笑みながら熱く語る。
この続きは、BBDC 2023(7)にて。
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