マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)のクルーチーフであるエステバン・ガルシアは、2019年シーズンのMotoGPでヤマハ陣営で唯一勝利を挙げたビニャーレスが、ヤマハにとってのベンチマークだと語った。
2019年シーズンのMotoGPにおける大きなトピックが、ルーキーであるファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)の大活躍だ。クアルタラロは第4戦スペインGPで最年少ポールポジション獲得記録を更新し、その後も安定して上位を走行。表彰台を7度獲得し、ファクトリーチームのライダーの間に割って入るランキング5位でシーズンを終えた。
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しかしクアルタラロは、19戦12勝を挙げてチャンピオンに輝いたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)に何度も阻まれ、優勝できずにシーズンを終えた。ヤマハ陣営で唯一勝利を挙げたのが、ビニャーレスだ。オランダGPとマレーシアGPで勝利し、ランキング3位となっている。
ガルシアに、クアルタラロはヤマハのライダーにとってのベンチマークになっていたのかと訊くと、彼は次のように答えた。
「今やクアルタラロが(ヤマハの)他のライダーを叩き起こし、速く走るように猛プッシュしていると誰もが言っている。私もそれについて何度も訊かれた」
「だが正直なところ、彼は”モーニングコール”ではなかった。私たち(ビニャーレスとのコンビ)がベンチマークだったんだ。私たちが最もレースに勝っているんだからね。私たちは自分たちの問題と、それをどうやって改善するかに集中していた」
「(バレンティーノ)ロッシや(フランコ)モルビデリ、クアルタラロのようなライダーが周りにいる場合、常に自分自身と比較をし、彼らの方が良いところを見つけようとするのは事実なんだ」
2018年まで、ビニャーレスのクルーチーフはホルヘ・ロレンソを担当していたラモン・フォルカダが務めていたが、ライディングスタイルに対する意見の違いなどからふたりは対立。Moto3時代にビニャーレスと共に働いていた経験があるガルシアが新たなクルーチーフとなった。
ヤマハのチームマネージャーであるリン・ジャービスは、ビニャーレスの”復活”にはクアルタラロの台頭によるモチベーションの増加よりも、クルーの体制変更が大きな役割を果たしたと考えている。
「昨年の冬、彼のクルーを変更した。マーベリックは落ち着いた雰囲気で、全員が自分のために働いてくれていると感じる必要があるライダーだ。それが、彼の結果が改善された主な理由だと思う」と、ジャービスは話した。
「以前はラモン・フォルカダという素晴らしいクルーチーフがいた。そしてウィルコ(ズィーレンベルグ)も彼のライダー・パフォーマンス・アナリストだった。どちらも偉大な人物であり、非常に有能だが、強固な団結力はなかった。そうした変化が、刺激となったんだろう」
「シーズン序盤、マーベリックがいくつかのことに苦労していた時期に、クアルタラロが彼の前を走っていた。それがフラストレーションとなり、マーベリックの原動力となったのも事実だと思う」
「時々、マーベリックは『それは許せない。自分がヤマハ最速のライダーである必要がある』と、走りで主張していた。だから、それ(クアルタラロの存在)も彼を奮起させていた。だが、主な要因ではないんだ」
一方でガルシアは、シーズン開幕からビニャーレスの根本的なペースが良いことは分かっていたため、クアルタラロの活躍がビニャーレスのモチベーションに影響することはなかったと主張した。
「開幕戦ではポールポジションを獲得したが、クアルタラロはまだそこにいなかった。第2戦のアルゼンチンでは優勝争いができるペースがあったが、レースで問題が発生し、最終ラップに(モルビデリとクラッシュし)押し出されてしまった」
「(第3戦)オースティンでは、ライドスルー(ジャンプスタートのペナルティ)がなければ、優勝を争うことができただろう。優勝したライダー(スズキのアレックス・リンス)よりも速かったんだ。それからマーベリックが好きではないヘレス(第4戦スペインGP)に向かったが、それでも表彰台を獲得できたんだ」
「それ以降はスタートでの出遅れという問題を修正し始めた。(第5戦)ル・マンでは難しいコンディションの予選Q2で苦労し、レースではリカバリー中に押し出されてしまった。第6戦のバルセロナでも多重クラッシュに巻き込まれてしまったが、アッセンで勝つことができた」
「私たちはかなり不運だったし、うまくスタートできていなかったから、それまでポテンシャルが発揮できていなかったんだ」
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