序盤から終盤まで、まさに大波乱の一戦となった2024年F1第23戦カタールGP。アクシデントや上位勢にペナルティが下る展開のなか、周冠宇(キック・ザウバー)が8位フィニッシュを果たした。チームにとって、そして周冠宇にとっても23戦目にして果たした今季初入賞であり、彼にとってはアルファロメオ時代の2022年第9戦カナダGPでの8位入賞に続く、自己最高位フィニッシュとなった。
2026年は自動車メーカーアウディのワークスチームへと変貌を遂げるキック・ザウバーだが、2024年はマシン開発に完全に遅れを取り、予選、決勝レースともにほぼ最下位が定位置となっていた。F1で通算10勝のベテラン、バルテリ・ボッタスでも2024年の予選Q3進出は第5戦中国GPのみ。そして決勝での最上位は13位だった。
【ポイントランキング】2024年F1第23戦カタールGP終了時点
周冠宇に至ってはさらに苦しく、予選ベストは今大会カタールGPの12番手。対ボッタスでは3勝20敗と大きく負け越している。決勝レースもここまでは二度の13位が精一杯で、入賞とは縁遠い時期が続いた。それでもシーズン終盤になってからは、ボッタスが第21戦サンパウロGPで予選11番手、周冠宇も前戦ラスベガスGPで13番手と、キック・ザウバーのマシンは一発の速さという部分で改善の兆しを見せていた。
その一番の要因は、ここ数戦積極的に投入してきたアップデートだ。10月の第19戦アメリカGPでは整流効果の改善を狙った前後サスペンションを改良。11月の第21戦サンパウロGPではフロントサスのメカニカルグリップ改善に取り組み、そして前戦ラスベガスGPでフロア周りを一新させた。このフロアアップデートは特に周冠宇にとって効果的だったようで、それまで4戦連続予選20番手だった彼は、ラスベガスGPでは一気に13番手まで予選順位を上げていた。
その好調さはカタールGPでも続き、予選では12番グリッドを獲得。ボッタスも13番手に並んだ。そして決勝レースでは、スタートで15番手まで落ちたものの、角田裕毅(RB)をオーバーテイクするなど中盤には11番手までポジションを上げた。そして35周目のセーフティカー(SC)導入で10番手に。最後は2番手を走行していたランド・ノリス(マクラーレン)が10秒のストップ・アンド・ゴーという厳しいペナルティを受けるなどもあって8位まで上がり、中国・上海出身の25歳はそのままチェッカー。チームにシーズン初のポイントを持ち帰ると同時に、ファン投票によるドライバー・オブ・ザ・デイにも選出された。
SCのタイミング、上位勢の後退など、周冠宇が運に恵まれた側面も確かにあった。しかし同じマシンのボッタスは11位完走に終わっており、何よりファイナルラップの57周目に出した1分23秒889の自己ベストタイムは、総合10番手だ。中団勢では決勝を5位で終えたピエール・ガスリー(アルピーヌ)に次ぐ速さで、9位のケビン・マグヌッセン(ハース)を0.3秒凌ぐものだ。カタールGPのキック・ザウバーはハースやRB、ウイリアムズよりも速いマシンだったと言える。
ではその速さは、あくまで今回のカタールGP限定なのだろうか。その疑問に答えるかのように、周冠宇はフロアのアップデートに関して「かなりの手応えを感じる」というコメントを残している。戦闘力を一気に増したキック・ザウバーを駆る周冠宇は、2024年シーズンの最終戦アブダビGPでも確かな存在感を発揮してくれそうだ。
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