若き自動車エンジニアの愛車は希少な国産ミッドシップオープンカー
かつてトヨタテクノクラフトが2代目トヨタ「MR2」をベースに92台だけ製作したオープンスポーツカー、「MRスパイダー」をご存知でしょうか? 31歳の糸川將人さんは幸運にもこのレア車を手に入れて9年目。本職の自動車エンジニアである彼が惚れこんでいる理由を聞いてみました。
20代いすゞ「ピアッツァ」オーナーらの呼びかけで「U35」オーナーの愛車105台が集合!「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」とは
生まれる前の母の愛車は初代MR2
35歳以下のクルマ好きの愛車約100台が横浜赤レンガ倉庫に集まった「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」。もちろんそのほとんどがおじさんホイホイ的な懐かしさを覚える昭和平成世代のクルマなのだが、なかでも常におじさんたちに取り囲まれていたのが、わずか92台しか製造されなかったトヨタテクノクラフト「MRスパイダー」。その質問に丁寧に答えていたのが、この希少なクルマのオーナーである糸川將人さん31歳だ。
希少な1998年式MRスパイダーのオーナーとなって9年目だが、じつはトヨタMRの愛好家となる要素を幼少期から持っていたそうだ。
「幼い頃に母から、僕が生まれる前はAW11のMR2に乗っていたという話を聞かされていました。ミッドシップのレイアウトとリトラクタブルヘッドライトで2シーターという、国産車では少ないスペシャリティカーに魅了され、頭の中に刷り込りこまれていたんでしょうね」
本人は2代目MR2に乗った後、奇跡のような偶然でMRスパイダーをゲット
そして大学生の頃は、このMRスパイダーのベースとなった2代目SW20型トヨタ「MR2」に乗っていた糸川さんであったが、就職活動で一旦は手放すことになる。
「社会人になった時の愛車探しで、やっぱりSWがいいなと中古車情報を見ていた時に、いつも見ているサイトがたまたま見られなくて、普段は見ない中古車サイトを見たら、そこにMRスパイダーを在庫している中古車販売店を見つけました。普段見てるサイトが見られたら、このクルマとは出会わなかったと思っています」
当時、神奈川県に住んでいた糸川さんであったが、翌日には販売店のある愛知県に向かい、即決で購入を決めたという。その商談中にも問い合わせが数本あったそうだ。友人にも「お前はクルマに選ばれたんだ。クルマがお前の元に来たがったんだよ」と言われたそうで、まさに運命の出会いだったのだ。
「トヨタテクノクラフトの製作だけあり、専用のリアフードとカウリングはオリジナルのSW20のデザインに溶け込むと同時にオープンカーらしさも強調していて、自分のクルマでも眺めるたびに惚れ惚れします」
「カーライフ」だけでなく「マイライフ」そのものを変えてくれた
2L直4 DOHCの3S-GE型エンジンを搭載したSW20型MR2の最終型ベースは8台のみの生産であり、なおかつ「ベージュマイカメタリック」というボディカラーは、総生産台数92台の中でも1台のみの塗装色だという糸川さんの1998年式MRスパイダー。
「最終型の3S-GEエンジンはサージタンク容量もそれまでより拡大されていて、アクセルを開けた時に吸気音をダイレクトに感じるのはたまらない快感です」
取材の質問にもハキハキと的確に答えてくれた糸川さんであるが、もともとは、内気で人見知りな性格だったという。
「人との会話には苦手意識がありましたが、このクルマが来てくれたことで、他人と話す機会も増えたからか、自分も大きく変われた気がします。“カーライフ”だけでなく“マイライフ”そのものを変えてくれた、このクルマとの出会いそのものが、自分の世界を広げてくれました」
MRスパイダーを愛車としながら本職では次世代のカーライフを紡ぎ出していく
自動車に関わる仕事につきたいという幼少期からの夢が叶い、レーシングエンジンの設計に関わる仕事から、現在はより幅広く、クルマの企画から製造までに関係する業務に就いているという糸川さん。
「自分たちの世代がカーカルチャーの若手と言われていましたが、今回のイベントも10代、20代が作り上げていたというのが嬉しいですね。クルマはただ動けばいいやというのではなく、乗って楽しいんだよと、趣味、そして仕事を通じて、より多くの人に感じてもらいたいですね」
9年前の納車時には約4万kmだったという走行距離は現在14万kmを突破。MRスパイダーで存分に走りを楽しんでいる様子がうかがわれる。糸川さんが携わったクルマたちもきっとカーライフのパートナーとして、たくさんの人に愛されるのだろう。
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