この記事をまとめると
■軽自動車の歴史を変えた1台であり、日本を代表する軽自動車がスズキ・ワゴンRだ
軽自動車の「ちょうどいい」対決! 「ワゴンRスマイル」と「ムーヴキャンバス」を全方位で徹底比較した
■軽自動車規格内で以下に居住性を高めるかに挑みトールワゴンというジャンルを開拓した
■現行型ワゴンRは6代目となり、カスタム、スマイルといった派生モデルもラインアップ
軽自動車の流れを変えた偉大なるワゴンR
日本独自の小型車規格である軽自動車。新車販売における約4割が軽自動車であることからも、いかに人々の生活を支えているかがわかるだろう。そんな軽自動車の歴史で外すことのできない1台がスズキ・ワゴンRだ。紹介しよう!
■スズキ ワゴンRとは?
ワゴンRはスズキのトールタイプ軽自動車であり、現行モデルで6代目となる、日本を代表する1台といっていいだろう。そしてワゴンRの登場が軽自動車の流れを変えたといっても過言ではない。
現在街を見れば、大人気のホンダN-BOXを初めとして、乗用では背の高いトールタイプの軽自動車が大半を占めていることがわかるだろう。こうした背の高さをウリにした軽自動車は、スズキのキャリイなどのワンボックス軽があったものの、1993年に登場したワゴンRが、乗用軽自動車のイメージを一転させたのだ。
軽自動車には規格がある。現在のボディサイズは全長が3.4m以下、全幅が1.48m以下、高さが2m以下となっている。ワゴンRが登場した1993年は、全長に3.3m以下という内容であった。このなかで軽自動車の居住性や積載性を高めるには、全高を高めるしかなく、ワゴンRはそれに挑戦したモデルなのだ。
いわゆる2BOXタイプながら、キャビン側はスクエアなボディ形状を採用。それを活かして居住性を高めるために椅子に座るような着座姿勢となるシートを設けるなどしている。
ワゴンRはその名のとおり、ワゴンタイプのボディに革新を意味する「REVOLUTION」、くつろぎの意味をもつ「RELAXATION」の頭文字であるRを付けた車名だとされている。しかし名経営者として知られる鈴木修さん(現相談役)が、「セダンもあるけどワゴンもある、でいいじゃないか」と発言したからだという説もまことしやかに流れているのだ。そのぐらい車名を含めてインパクトのあるクルマだということだ。
このクルマの登場後、同様のトールワゴンとして、1995年にダイハツ・ムーヴ、ホンダが名前を復活させて1997年にライフを誕生させたことからも、いかに影響を与えたかがわかるだろう。
初代(1993年~1998年)
1993年に登場した初代は、少し変わったパッケージだった。というのはリヤハッチを含めて4ドアだったのだ。運転席側はフロントドアのみ、助手席側のみ前後にドアを備えていた。
また、エンジンはNAのみをラインアップという内容である。その後1995年にターボエンジンモデルを追加、1996年には運転席側にもリヤドアを備えた5ドアモデルを登場させた。さらに1997年、ベンチシート&コラム車を加えるなど、ラインアップを充実させる。また、普通乗用車版のワゴンRワイドが1997年に登場している。
2代目(1998年~2003年)
1998年に軽自動車規格が変更されたことを受け、スズキはアルト、ジムニーと共にワゴンRをフルモデルチェンジした。規格にともなってボディサイズを拡大すると共に、軽量衝撃吸収ボディを採用している。基本的にはキープコンセプトながら、やや丸味を帯びたスタイルが2代目の特徴。使い勝手を追求し、運転席にシートリフターを採用、採用回転半径は4.6mから4.2mへと縮小された。初代にもあった4ドア車も継続となり、5ドアと両方が選択可能に。
また、フロントにディスクブレーキを採用するなどスポーティに仕立てたワゴンR RRも設定されている。発売直後の1998年11月には累計販売台数100万台を達成した。
3代目(2003年~2008年)
2003年に登場した3代目のワゴンRは、プラットフォームを一新。新開発のサスペンションなどによって、走りの質感とダイナミクスを高めた。使い勝手の面でも最小回転半径を4.1mへと縮小するなど、よりユーザーフレンドリーになっている。
外観は2代目では丸味を帯びたが、3代目では再び初代のようなスクエアなデザインを採用。2003年末にはワゴンRの累計販売台数が200万台を達成している。これは10年4カ月での数字だ。2007年には派生車であるワゴンRスティングレーを発売し、ワゴンRブランドの拡大をみせている。
4代目(2008年~2012年)
「快適 スタイリッシュ ワゴンR」という開発コンセプトで誕生した4代目は、ホイールベースを2360mmから2400mmへと延長し、室内長や前後乗員間のディスタンスを拡大するなど、より快適な室内空間を実現した。このころは、自動車業界全体で燃費が重要視された時代であり、ワゴンRは、2WDのNA+CVT車が23.0km/L(10・15モード)、2WDのターボ+CVT車が21.5km/L10・15モード)という数字を達成した。
グレードによってキーレスプッシュスタートを採用したり、マルチディスプレイを装備するなど、軽自動車でありながら登録車に匹敵するような充実度をみせている。3代目途中で誕生したスティングレーも同時にフルモデルチェンジが行われている。
5代目(2012年~2017年)
5代目の開発コンセプトは「軽ワゴン低燃費No.1 新世代エコカー」というもの。スズキグリーン テクノロジーと総称される、エネチャージや新アイドリングストップシステム、エコクールなどの技術や、軽量化などが盛り込まれた。
その結果、NA・2WD車:28.8km/L、NA・4WD車:27.8km/L、ターボ・2WD車:26.8km/L、ターボ・4WD車:25.0km/L(すべてJC08モード)という燃費を達成した。ホイールベースは2425mmまで延長され、室内の広さはさらに拡大。
スティングレーも同タイミングでフルモデルチェンジを実施した。
6代目(2017年~)
現行モデルである6代目は、高剛性と軽量化を両立した新プラットフォームの「HEARTECT(ハーテクト)」を採用している。
また、時代の流れに呼応して、単眼カメラと赤外線により、衝突の危険を察知してブレーキを作動させる「デュアルセンサーブレーキサポート」や、自動でハイ・ローを切り替えるハイビームアシスト機能を装備したことも特徴である。さらにグレードによってオプションとなるが、軽自動車として初めて、ヘッドアップディスプレイを搭載するなど、スズキの軽自動車の代表であることを伺わせる内容だ。
パワートレインには、NAエンジンのほか、NA+ISG(モーター機能付発電機)+リチウムイオンバッテリーのマイルドハイブリッドを用意した。
スティングレーも同時にフルモデルチェンジを行い、コチラはターボのマイルドハイブリッドも選択可能だ。
現行モデルはNAエンジンのみでハイブリッドが選択可
■現行版の詳細スペックをおさらい
基本スペック
6代目のワゴンRのボディサイズは以下のとおりだ。
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1650mm ホイールベース:2460mm タイヤサイズ:155/65R14
以下グレード別のスペックを紹介しよう
●FA(2WD) 車両重量:730kg(5速MT)/750kg(CVT) エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm WLTCモード燃費:24.8km/L(5速MT)/24.4km/L(CVT) サスペンション形式:ストラット(前)/トーションビーム(後) 車両本体価格:109万8900円(5速MT)/116万3800円(CVT)
●FA(4WD) 車両重量:780kg(5速MT)/800kg(CVT) エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm WLTCモード燃費:23.0km/L(5速MT)/23.2km/L(CVT) サスペンション形式:ストラット(前)/I.L.T(後) 車両本体価格:122万2100円(5速MT)/128万9200円(CVT)
●HYBRID FX(2WD) 車両重量:770kg エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm モーター最高出力:1.9kW[2.6PS]/1500rpm モーター最大トルク:40N・m[4.1kg-m]/100rpm WLTCモード燃費:25.2km/L サスペンション形式:ストラット(前)/トーションビーム(後) 車両本体価格:128万400円
●HYBRID FX(4WD) 車両重量:820kg エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm モーター最高出力:1.9kW[2.6PS]/1500rpm モーター最大トルク:40N・m[4.1kg-m]/100rpm WLTCモード燃費:24.2km/L サスペンション形式:ストラット(前)/I.L.T(後) 車両本体価格:140万3600円
●HYBRID FZ(2WD) 車両重量:790kg エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm モーター最高出力:1.9kW[2.6PS]/1500rpm モーター最大トルク:40N・m[4.1kg-m]/100rpm WLTCモード燃費:25.2km/L サスペンション形式:ストラット(前)/トーションビーム(後) 車両本体価格:142万1200円
●HYBRID FZ(4WD) 車両重量:840kg エンジンタイプ:直3DOHC 総排気量:657cc 最高出力:36kW[49PS]/6500rpm 最大トルク:58N・m[5.9kg-m]/5000rpm モーター最高出力:1.9kW[2.6PS]/1500rpm モーター最大トルク:40N・m[4.1kg-m]/100rpm WLTCモード燃費:24.2km/L サスペンション形式:ストラット(前)/I.L.T(後) 車両本体価格:154万4400円
特徴(1) 安全機能が充実
ワゴンRの特徴は安全装備の充実である。そもそものボディに軽量衝撃吸収ボディーのTECTを採用しており、また歩行者傷害軽減ボディ−、頭部衝撃軽減構造インテリア、前席のSRSエアバッグが標準装備されている。
加えてスズキ・セーフティサポートと呼ばれる以下の装備が、5速MT車を除く全グレードで選択できる。
・デュアルセンサーブレーキサポート ・誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能 ・ふらつき警報機能 ・先行車発進お知らせ機能 ・ハイビームアシスト ・後退時ブレーキサポート ・リヤパーキングセンサー
特徴(2) ハイブリッドで高い燃費性能
6代目ワゴンRで初の設定となったハイブリッドシステムは、モーター機能付きの発電機であるISGを使い、エンジンの燃費効率が厳しい発進時に、モーターによるクリープ走行を可能としている。また、ストロングハイブリッドのようなアシスト感こそないものの、時速100km以下の速度域でモーターがアシストすることで、燃費を向上している。加えて、赤信号等で減速した際、時速13lm以下であればエンジンを停止してクリープ走行を行うこともできるのだ。結果的に前述のスペックのような省燃費を達成した。
特徴(3) 快適装備の充実
ワゴンRには日常の使い勝手を快適にするさまざまな装備を採用している。いくつか紹介しよう。
アンブレラホルダー:左右リヤドアの内側に、付いた雨水を車外に排水可能なアンブレラホルダーを設けた。
ヘッドアップディスプレイ:軽自動車初採用となる同装備には、前方衝突警報/自動ブレーキ作動状況、車線逸脱警報、車速、シフトポジション、凍結警告、クルーズコントロール設定、交差点案内などが表示できる。
レーンチェンジウインカー:ウインカーレバーを軽く押さえるとターンランプが3回点滅するシステムをスズキの軽自動車で初採用した。
■モデルチェンジはいつ?
国産車の多くは5年から6年のモデルサイクルでフルモデルチェンジを行うのが一般的だ。一部10年前後となる長寿車も存在するが、実用車に近く販売台数が多い車種にはライバル車が多いために、5~6年程度でフルモデルチェンジを実施しないと競争力を保てないという事情がある。
ワゴンRの歴史をみると、1~5代目はそのサイクルで変更されている。そうなると、2021年の秋現在、7代目となる新型ワゴンRのアナウンスはないため、フルモデルチェンジは2022年に実施されるのではないかと言いたいところだが、気になるのは5代目までと事情が異なる点だ。
先に振り返った歴代ワゴンRを見てもわかるとおり、近年のスズキの軽自動車を支えてきたモデルであり、販売台数が非常に多かったため、フルモデルチェンジのサイクルを短く保てたという側面がある。ところがいまは、軽自動車の人気ジャンルに変化が生じている。2021年年度上半期の販売台数ランキングを見てみよう。
1位 ホンダN-BOX:90453 2位 スズキ・スペーシア:58144 3位 ダイハツ・タント:47933 4位 ダイハツ・ムーヴ:45916 5位 スズキ・ハスラー:39978 6位 日産ルークス:34993 7位 ダイハツ・ミラ:29980 8位 ダイハツ・タフト:28553 9位 スズキ・アルト:28382 10位 スズキ・ワゴンR:26933 11位 ホンダN-WGN:22414 12位 日産デイズ:21299 13 位 三菱eK:15738 14位 スズキ・ジムニー:14554 15位 ホンダN-ONE:10390
となっている。これは通称名のため、たとえばスティングレーはワゴンRに含まれるし、三菱のeKもシリーズでの数字だ。こうしてみると、スライドドアのいわゆるスーパーハイト系が人気であり、またスズキ・ハスラーやダイハツ・タフトなどのSUVも売れていることがわかる。こういった流れから、あくまで推測だが、もう少しワゴンRのフルモデルチェンジが伸びてもおかしくはないだろう。
また、カーボンニュートラルが叫ばれる昨今、軽自動車とはいえ、マイルドハイブリッド以上の電動化が求められている現状である。次のモデルチェンジはドラスティックな変更を考慮して、現行モデルを売れるところまで売るという考えになってもおかしくないだろう。
■派生モデル スマイル・スティングレーとは?
(1)ワゴンRスマイルとは?
モデルの歴史
ワゴンRスマイルは、2021年9月に登場したばかりの、ワゴンRの名を冠した派生車である。
通常モデルとの違い
最大の特徴はワゴンRがヒンジのスイングドアであるのに対し、リヤドアにスライドドアを採用したところだ。このため、ワゴンRの標準モデルに対して、全高が45mm高められている。
スズキにはすでにスペーシアというスーパーハイト系の軽自動車がラインアップされているが、こちらは1785mmとかなり背高となるため、スライドドアの利便性と、スタイリッシュさをバランスしたモデルという狙いがある。
エクステリアのデザインは、スクエアなボディと丸目のヘッドライトで、シャープなワゴンRに対して愛着の湧く親しみやすい雰囲気。ボディカラーにはモノトーンカラー4色のほか、2トーンカラー8色を用意して、好みに合わせてオシャレなカーライフが楽しめる。さらに純正アクセサリーの組み合わせで、ブリティッシュスタイル、エレガントスタイル、モダンスタイル、カリフォルニアスタイルという、4つのスタリングが提案されている点も、オシャレさをウリにしたモデルであることを伺わせる。
先ほどボディの全高がワゴンRより高まったと述べたが、それを活かして室内高はワゴンRよりも65mm拡大し、開放的な空間を実現した。
グレードは純エンジンモデルのG、ハイブリッドのHYBRID S、HYBRID Xの3つで、それぞれにFFと4WDがラインアップされる。
(2)ワゴンRスティングレーとは?
モデルの歴史
ワゴンRスティングレーが誕生したのは2007年。2003年に登場した3代目ワゴンRの新シリーズという位置づけで、モデル途中で加わった。どちらかというと親しみの持てるデザインであったワゴンRに対して、いまでいうオラオラ系の雰囲気を纏ったエクステリアと、黒を基調としたクールなインテリアという世界感をもったクルマである。
その後2008年に4代目へとモデルチェンジするが、スティングレーも同時にフルモデルチェンジを実施し、以降は現行の6代目に至るまでベースのワゴンRと同時に新型が登場し続けている。
通常モデルとの違い
上記のとおり、ベースモデルのワゴンRに対して、4代目、5代目、そして現行の6代目とも攻撃的でイカついデザインを採用しており、とくに若年層や男性オーナーが好むような雰囲気が特徴だ。
さらに5代目からはスティングレーが、走り系グレードとしての役割も担うようになり、5代目は通常モデルのワゴンRがNAエンジン、ワゴンRスティングレーにはNAとターボをラインアップするようになった。
現行6代目ではハイブリッドと名の付くグレードが登場したが、2021年秋現在、ワゴンRはNAエンジン車とNAエンジン+モーターのハイブリッド車、ワゴンRスティングレーは、NAエンジン+モーターのハイブリッド車と、ターボエンジン+ハイブリッド車が設定されている。
このスティングレーのターボのみ、クルーズコントロール、パドルシフト、15インチタイヤ(その他のワゴンR、ワゴンRスティングレーは14インチ)などが装備されているのだ。
■記事まとめ
スズキの大ヒット作であるワゴンR。ライバル車を多数登場させ、軽自動車市場に大きな影響を与えたモデルである。ただ、上に記した販売ランキングのとおり最近では、スズキでいうところのスペーシアのように、スーパーハイト系の軽自動車が圧倒的な人気を誇り、とくにホンダN-BOXは凄まじいばかりの売れ行きを見せている。そうしたなか、2021年の10月単月の販売ランキングでは、突如ワゴンRが首位に躍り出た。これはシリーズでの数字となるため、スティングレーはもとより、新登場のスマイルがけん引した形である。ワゴンRは時代に即した形でモデルチェンジや派生車を登場させ、今後もその名を轟かせていくだろう。
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使い勝手はよかった
マフラーに穴が空いたり
エンジンからオイルが滲んだり
の、記憶